今回のお話は、誰かの過去のお話です
見慣れた人ばかりが出て来ます
そして、後半はまた少し物語の真相が明らかになります
「提督」
「どうした⁇」
榛名と共に書類仕事をしていたワンコは、終わった途端に頭上にハンマーを置かれた
「そういえば提督の過去を聞いた事ね〜ダズル。言え‼︎」
「え〜…」
榛名の脅しはケッコンしてからも健在だ
逆らえばハンマーで殴る、これ鉄則
「聞いても楽しくないよ⁇」
「早く言うんダズル‼︎」
「仕方ないなぁ…ハンマー降ろしてくれたらね⁇」
榛名はハンマーを降ろし、机にもたれさせる様に置き、ワンコと対面出来る様に椅子を置き、そこに座った
「さっ、提督のしょ〜もない恋バナを聞かせるんダズル」
「そうだね…じゃあ、一番思い出の多い高校の話をしよっかな」
ワンコは話し始めた…
何年前…
深海棲艦の進行や、反抗作戦とかがとやかく言われるもう少し前だ
私”犬養健一”は高校に通っていた
因みに言うと、みんなが私の事を”ワンコ”と言うのはこの名前の為である
”単冠湾”の”ワン”ではない
それは置いといて…
私は今まで生きて来て、高校生の時が一番思い入れが深い
それは…
「オッスワンコ‼︎」
「健吾。おはよう」
朝一から肩を組んで来て、私の見ている本を少しだけ一緒に読む
彼の名は柏木健吾
後に、あのラバウルの凶鳥と呼ばれている一人だ
「ちーーーっす‼︎ちっすちっすちーーーっす‼︎」
「ご機嫌ようですわぁぁぁぁぁ‼︎」
「来た来た…」
朝からやたらとテンションの高い二人組
最初に挨拶した奴はいつもうるさい
最初に挨拶した、ちっすちっす言いまくってる女子がまり
ご機嫌ようですわぁぁぁぁぁ‼︎と言っていたのがりさ
…どっちもうるさい
「お菓子食〜べよ‼︎」
「健吾さんもワンコも食べます⁇」
まりとりさがそれぞれ苺大福を私達に差し出す
「あ…ありがと…」
昼ご飯の後に食べようと鞄の中に入れようとした時、まりが言った
「食べてるとこ見せて‼︎」
「うっ…」
正直、朝から苺大福はキツい‼︎
だが好意を無碍にする訳にはいかない‼︎
そう思い、包み紙を開け、苺大福を口に入れた
「美味しい⁉︎」
「うん。美味しい。ありがと」
「もう一個あげる‼︎」
「もがっ‼︎」
そう言って、まりは手に持っていた食べかけの苺大福を私の口に詰め込んだ
「にしし〜‼︎ワンコイジるの面白いわ‼︎」
「お…おはよ…」
「お‼︎”はる”‼︎ちーっす‼︎」
「ち、ちーっす…苺大福食べてるの⁇」
「うんっ‼︎はるにもあげる‼︎はい‼︎」
「ありがと」
はると呼ばれた女子は、少し控えめな性格だ
前髪で顔が隠れているので、表情も読み難い
「さっ、授業ですわよ‼︎」
授業が始まり、俺はまりの前で授業を受ける
「にしし…」
後ろでまりが何やらニヤついている
「いでっ‼︎」
「〜♪」
何かが当たり後ろを振り向くが、まりは鼻と上唇の間にシャーペンを乗せ、そっぽ向いて口笛を吹いている
勘違いと思い、また前を向いて授業を受ける
「いてっ‼︎」
「にっししし…」
「…まり」
前を向いたまま、まりに話し掛ける
「まりは何にもしてないで〜す‼︎」
「次やったら、もう宿題教えないからな」
「くっ…姑息すぎやしませんか⁇」
「シャーペンの芯をチマチマ当てて来るよりはマシだろ」
「分かったよ…」
その授業の時間、シャーペンの芯が飛んで来る事は無かった
しかし、次の授業…
「うりゃ」
「いでっ‼︎」
相変わらずまりから何か飛んで来る
次は消しゴムのカケラだ
「まり、シャーペンの芯”は”飛ばしてません」
シャーペンの芯じゃなきゃ良い
それがまりの考え
まりは考えが単調だ、すぐ分かる
ここは今しばらく付き合う事にしよう…
しばらくまりから消しゴムのカケラが飛び、俺の席の周りには結構な消しゴムが散らばって来た
まりは観念したのか、消しゴムを投げるのをやめ、何かゴソゴソし始めた
これっぽっちも授業を受ける気は無い
ゴソゴソするのが終わったかと思えば、ピンポイントで机の中心に何か飛んで来た
ノートを一枚千切り、中に何か包んで投げた様だ
中を開けると、小さなチョコレートが二つ出て来た
包んであった紙に何か書いてある
”これで機嫌直して”
まりは可愛い所がある
だからこそ、彼女の事を好きな男子も多い
…私もその一人だったりする
授業が終わり、昼休み
りさがあっと言う間に私の席を占領
俺は健吾と一緒に中庭で昼食を取る
「まりがシャーペンの芯飛ばしてきてさぁ」
「りさなんか後ろから耳に息吹きかけてくるぞ」
毎日こうして愚痴を言い合うが、互いの口から、彼女達の悪口は出る事は無い
そして、いつも結論はこうだ
「可愛いから良いか‼︎」
「だな‼︎」
「おっ‼︎いたいた‼︎ワンコ‼︎」
「健吾さん‼︎」
「「ゴミ捨てといて‼︎」」
まりとりさが顔を見せたと思えば、二階からゴミを入れたビニール袋と、空き缶が飛ぶ
「おっ、うわっ‼︎」
「ちょっ‼︎」
「ナイスキャッチ‼︎」
「お二人にこれを差し上げますわ‼︎」
板ガムが二枚、宙をヒラヒラ舞う
ヒジョ〜に取りにくい
二人共右往左往し、私は何とかキャッチ
健吾はギリギリで落としてしまい、りさに吠える
「りさ‼︎もうちょい真面目に投げろ‼︎」
「すみませんわ…りさ、今手持ちにそれしかなくて…」
「苺大福はどうした苺大福は‼︎」
「まりの食べ掛けならあるよ‼︎欲しいか‼︎」
「いらん‼︎」
健吾が二人に吠えた後、自販機の横に付けられたゴミ箱にゴミと缶を捨て、教室に戻る
「次は体育だ‼︎さっ、男子‼︎出た出た‼︎」
入った瞬間、まりに回れ右され背中を押される
「ちょっ‼︎着替え取らせてよ‼︎」
「りさ‼︎はる‼︎」
「お着替えでしてよ」
「はい、ワンコ」
健吾はりさ
私ははるから体操服を受け取り、別室で着替えを済ます
体育の授業はドッチボール
男子VS女子
「ぐあっ‼︎」
「うがっ‼︎」
あっと言う間に男子の人数が減る
「はっはっは〜‼︎女子を甘く見たな‼︎」
「わ、ワンコ‼︎こうなりゃまりを狙え‼︎まりさえ突破したらぶはっ‼︎」
健吾の顔面にボールがクリーンヒット
「余所見しない‼︎」
まりは運動神経が良い
勉強はそんなに出来ないのにな…
だが、それが裏目に出る事になるとは、私は知る由もなかった…
学校が終わり、帰り道
「明日は社会見学か」
「遊園地だってさ」
「なぁワンコ」
健吾に肩を組まれ、耳打ちされる
「…明日、俺、りさに告白しようと思う」
健吾がりさの事を好きなのは薄々気付いていた
「…マジか」
「でさ、お前はどうなんだよ」
「どうって…」
「まりの事だよ、ま〜り」
「う…」
「俺一人告白すんのは不安だ」
「…まりに告れってか⁇」
「そうだ」
「タイミングがあればな」
「よし‼︎それでこそワンコだ‼︎じゃあな‼︎」
健吾と別れ、一人悶々と考える
「わ、ワンコ」
「はる」
曲がり角ではるが待っていた
はるとは家が近く、こうして一緒に帰る事がある
「明日、遊園地だってね。ワンコは一緒に回る人決まった⁇」
「多分健吾やらまり達と回るだろうな。はるも来いよ⁇」
「うんっ。行く。じゃあね」
はるとも別れ、私は家に帰る
…その晩、私は眠る事が出来なかった
「提督モテモテダズル」
「運が良かったと言うか、何と言うか…」
「その、はるとか言う女は提督が好きなんダズルか⁇」
「さぁね…未だに答えを聞いてない」
「…まぁいいダズル。次ダズル」