「…た方は成…うした」
「こっ…子…ど…かしら」
「んて……るな。だ…ぶだ」
目が覚めると、女性と男性の声がした
「ここは…」
「あらっ、目を覚ました⁇」
先程の女性の顔がドアップで映る
「何を…したんですか…」
「君に不死身の体を与えたのよ」
「えっ…」
寝かされていた台から立ち上がり、体を見る
…が、特に変わった所は無い
それどころか、ここに来た時より体が軽い位だ
「君達二人は”深海化”に成功した被験者だ」
またあの白衣の男が現れた
「すまない。君達の恋人を救うにはこうするしかなかったんだ。許してくれ」
「意味が良く…」
「君達五人は売られたんだよ、学校の先生にな」
「なん…だと…」
健吾も目を覚ました
「りさを…売っただと…‼︎ふざけルナ‼︎」
健吾の目に青い光が灯る
それを見て、男性も女性も制止に入る
「落ち付きなさい‼︎」
「鎮静剤だ‼︎」
「ハナセ‼︎ブッコロシテヤル‼︎」
健吾は制止を振り切り、部屋から出て行ってしまった
男性はすぐさま無線機を取り、外に待機している人員に伝える
「各員に告ぐ‼︎”DM=Mark.Knight”が脱走した‼︎Knightは学校を目指している模様、各員、総動員でKnightを停めろ‼︎以上‼︎」
無線の先からは多方面から「了解」と聞こえて来た
「君は健一君だったね」
「は、はい」
「彼は怒りを力に変える。君はそれを止められる」
「行け、と⁇」
「君にしか止められない」
「…分かりました。健吾を止められるなら行きます」
「頼んだ‼︎」
男性に言われ、私も部屋を出た
「ふふっ…良いの”マーくん”。二人に任せて」
「構わんさ。こんな馬鹿げた計画、誰かが止めねばならん。まっ…大丈夫だろ」
男性は椅子に座り、咥えたタバコに火を点けた
「何か策があるのね⁇」
「あぁ。異国に飛んでいた、同僚の元部下を召集した。彼等なら大丈夫だ」
学校に着くと、健吾が元凶である先生を探し回っていた
生徒達は怯え、先生の面々は生徒を護る為、怒り狂った健吾に立ち向かおうとする
「アイツハドコダ‼︎ダセ‼︎」
屈強な男の先生がいとも簡単に弾き飛ばされ、健吾は再び目的の先生を探し始め、職員室でとうとう見付けてしまった
「柏木なの…か⁇」
「テメェカ‼︎リサタチヲウッタノハ‼︎」
健吾は一瞬で先生に近付き、首を掴んで宙に上げた
「ち…違うんだ、柏木‼︎先生は、ただ、適合者の…」
「健吾‼︎」
「…ワンコカ⁇」
ようやく健吾に追い付いた
「帰ろう。怒ったって仕方ないよ」
「フザケルナ‼︎コイツノセイデ…リサハ‼︎」
互いに睨みを効かせ合う
健吾とこうしてケンカをするのは初めてだ
正直、友人には手を上げたくない
でも、私がやらなければ…
「はいはいはいはい、終了終了‼︎」
「ダレダ‼︎」
男性が二人、一人は手を叩かながら職員室に入って来た
「君が健一君だね⁇」
私より二回り程年上の男性が、私の肩に手を置いた
「あ…はい」
「君を迎えに来た。色々知ってしまっては、居場所も無いだろう⁇」
「えぇ…」
「ここは彼に任せよう。君は見ない方がいい。さっ、行こう」
男性に背中を押され、職員室から出た
「スティングレイ‼︎」
男性は健吾の側にいた若い男性の名を呼び、小さく頷いた
スティングレイと呼ばれた男性も小さく頷き、私達はそこで完全に健吾が視界から消えた
「お前、本当にコイツを殺すのか⁇」
「コロシテヤルサ‼︎イマスグニナ‼︎」
「やめとけって。一生胸に残るぞ⁇」
「ホカニナニモナインダ‼︎」
「あるさ」
レイはタバコを咥えながら健吾の腕を掴み、目を見詰めた
「お前はまだ若い。心の奥底で、まだ良心が残ってる。だったら…」
レイは目にも見えない速さで先生の顎の下にピストルを置き、何の躊躇いも無く引き金を引いた
「誰かに頼ればいい」
「あ…」
倒れていく先生に、ついでの様に健吾の体がレイにもたれかかる
「心配すんな…俺達はお前の味方さ…」
レイは健吾を担ぎ、学校から出た
私達は居場所が無くなった
私達は彼等に着いて行く事にした
彼等は国家に属さず、世界各国を傭兵として渡り歩いていた
バランスの取れたサンダーバード隊…
夜戦が得意なSS隊…
私はサンダーバード隊の整備士
健吾はSS隊の分遣隊である、ヘルハウンド隊の見習いパイロットになった
最後に見た健吾は目が死んでいたが、あのほんわかした隊長の元なら、なんだって一からやり直せそうだ…
私達は結局、りさもまりも、挙句の果てにははるの行方も分からぬまま今に至っている…
「提督はまたまりに逢いたいダズルか⁇」
「そうだね…また五人であってみたいな…」
「はるには逢いたいダズルか⁇」
「当たり前だろ。大事な友達だ」
「友達、ダズルか…ほ〜ん」
「な…なんだよ…」
「何もねぇダズル。さっ、榛名はちょっとラバウルに行くダズル」
「あぁ、そっか。何か言ってたね。気を付けて行くんだよ⁇」
「おいクソニム‼︎お前も来るんダズル‼︎」
榛名はたまたま歩いて来たニムの首根っこを掴み、そのままズルズル引きずって行った
「ニムは嫌ニム‼︎ふざけんなクソダズル‼︎」
「それ以上暴れたら一発かますダズル‼︎」
「…仕方ねぇニム」
「よし。最初からそうするんダズル。あ、そうだ提督」
「なんだ⁇」
「代わりにコイツをやるダズル」
「いでっ‼︎」
榛名は振袖から何かを高速で投げて来た
顔面に綺麗に当たりはしたが、ちゃんと手元で受け止めた
「そいつで我慢するんダズル。いいな」
「もう少し丁寧…に…」
投げられた物を見て、私は行きが詰まりそうになる
ピンク色の紐
シマウマのキーホルダー
忘れもしない…
「は、榛名‼︎」
だが、榛名は既に居ない
私は階段を駆け下り、榛名達が艤装を装着しているであろう場所へ急いだ
「待って‼︎榛名‼︎」
「何ダズル⁇」
「ごめん…いや、ごめんですまないけど…」
「別にいいダズル。提督…いや、ワンコはちゃんとまりとはるの約束を守ったんダズル」
「”はる”、私は…」
私が何か言おうとした時、榛名は私の口を塞ぐかの様に言った
「言ったハズダズル。榛名は幸せだって。好きな人の傍に居れて、好きな人の為に動いて。だから、二度と謝るんじゃないダズル。榛名はこれで…これが良いんダズル」
「そんな死亡フラグみたいな…」
「まっ、反省する余地があるなら、二度と榛名を離さん事ダズル。離したらブッ殺すダズル。いいな‼︎」
「わ、分かった分かった‼︎」
「んじゃ、行って来るダズル‼︎待ってろ健吾‼︎」
「おい‼︎担ぐんじゃ無いニム‼︎ウワァァァァァ‼︎提督助けるニ〜〜〜〜〜ム…」
榛名はニムを担いだまま、高速でラバウルへと向かって行った