艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

424 / 1101
133話 辿り着いた先(3)

はっちゃんの小さな手が背中に当たる

 

時々たいほうが背中を洗ってくれるのとはまた違う気持ち良さがある

 

「気持ち良いですか⁇」

 

「あぁ…気持ち良いな…」

 

誰かに背中を洗って貰うと眠たくなる

 

子供が背中を叩くと寝る気持ちがチョット分かる気がする

 

そうこうしている内に、はっちゃんは俺の背中をシャワーで流した

 

「はいっ、キレイキレイになりました」

 

「んっ。ありがとう」

 

はっちゃんと一緒に、きそとしおいがはしゃぐ湯船に入る

 

「はぁ〜っ…気持ち良いです…」

 

「ふぅ〜っ…」

 

俺とはっちゃんは湯船に浸かり、ため息を吐く

 

「レイ〜なんか〜茹でしおいになって来た〜」

 

「僕も〜。茹できそだ〜」

 

「のぼせてんじゃねぇか‼︎」

 

二人を抱え、脱衣所まで持って来た

 

「俺のポケットから財布出して牛乳飲んでいいぞ。ちゃんと直しとけよ⁇」

 

「うぃ〜」

 

「あんがと〜」

 

本当に茹できそと茹でしおいになっていた

 

湯船に戻ると、はっちゃんが絵本型のタブレットを弄っていた

 

「本読んでるのか⁇」

 

「いえ。いよちゃんとひとみちゃんが、マーカス様の帰りを待っている様です」

 

はっちゃんに本を見せて貰う

 

《えいしゃんまだか〜》

 

《えいしゃんおそいぞ〜》

 

画面いっぱいにひとみといよの顔が映る

 

「スパイト様の携帯端末からのテレビ電話です」

 

「俺の声も聞こえるのか⁇」

 

「えぇ。二人にもマーカス様の顔が見えています」

 

《えいしゃんおふろか〜⁇》

 

《はっちゃんもいる‼︎》

 

「いよもひとみもお風呂入ったか⁇」

 

《はいった‼︎》

 

《ひとみもはいった‼︎》

 

交互に顔がドアップで映る

 

いよに至っては、顔を近付けすぎて垂れ目になっている

 

《かすみちゃんがぷりんくれた‼︎》

 

《おいしかった‼︎》

 

「もうネンネするのか⁇」

 

《えいしゃんかえってきてから‼︎》

 

《ひとみもえいしゃんまつ‼︎》

 

「もうすぐ帰るからな⁇」

 

《はよかえってこいお〜》

 

《またね〜》

 

最後の最後まで二人は顔のドアップは止めなかった

 

通信が終わり、はっちゃんは浴槽の縁に絵本を置いた

 

そして、俺の膝の上に対面状態で座る

 

「嫌…ですか⁇」

 

「いつでも構わんさ」

 

はっちゃんの柔らかい身体を抱き締める

 

「マーカス様。一つお願いがあります」

 

「世界征服以外だぞ⁇」

 

「はっちゃんは横須賀様の様な事は言いません」

 

「んでっ⁇お願いってなんだ⁇」

 

「今日ははっちゃんと一緒に寝て頂けませんか⁇」

 

「いいよ。今日の御礼だ」

 

そう言うとはっちゃんはニコッと微笑んだ

 

先程の血塗られたブラッディなはっちゃんと比べると見違える様に可愛い

 

「さぁっ。はっちゃん全快しました」

 

俺の膝から立ち上がり、見た目の割には大きい胸が目の前に来る

 

「もう大丈夫か⁇」

 

「えぇ。ひとみちゃんといよちゃんも待ってるので、そろそろお暇しましょう」

 

はっちゃんは先に脱衣所に向かった

 

俺もすぐに浴槽から出て、脱衣所で着替え始めた

 

「美味し〜い‼︎」

 

「フルーツ牛乳もある‼︎」

 

きそもしおいも全快している様だ

 

「お〜い、レイさん」

 

着替えていると長波が入って来た

 

「しばらくぶりだな。もう大丈夫か⁇」

 

「あぁ‼︎レイさん達のお陰だぜ‼︎外にお迎えが来てるぞ」

 

「お迎え⁇」

 

着替えて外に出ると、滑走路にブリストルが停まっていた

 

「迎えに来たぜ‼︎」

 

「朝霜‼︎」

 

一人をブリストルの後方銃座に乗せれば、フィリップを定員オーバーせずに帰れる

 

「しおいこっち乗りたい‼︎」

 

「あぁ、いいぜ‼︎」

 

しおいがブリストルの後方銃座に乗る

 

「先に帰ってっからな〜」

 

「ありがとうな‼︎」

 

「お安いご用って事よ‼︎お父さんも早く帰って来いよ。飯と赤ん坊が待ってるぞ‼︎」

 

飛び立つブリストルを見ながら、朝霜は俺の娘だと実感した

 

明日は朝霜と遊んでやろう

 

「俺達も帰ろうか」

 

「メッチャ疲れたね」

 

「はっちゃんも疲れました」

 

ゾロゾロとフィリップに乗っていた時、鹿島が基地から走って来た

 

「レイ‼︎ご飯は⁉︎」

 

《旦那さんに食べさせてあげて。じゃあね〜》

 

鹿島の顔を見る事無く、俺達は大湊を去った

 

「行ってしまったか…」

 

「えぇ…」

 

急いで出て来た棚町は空を見上げた後、鹿島の肩をそっと抱く

 

「帰ろう。お腹空いたろ⁇」

 

「うんっ」

 

 

 

 

 

俺達が基地に着く少し前…

 

”一応心配”になってはいた横須賀が基地に来ていた

 

「増えてる…」

 

横須賀の目線の先には、窓際で座って俺の帰りを待っているひとみといよがいる

 

いよは時折空を指差すと、ひとみも顔を上げ、何か言っている

 

「可愛い…」

 

二人の仕草は本当に子供らしい仕草で母性本能をくすぐる

 

横須賀はコーヒーを飲む手を止め、二人に近寄ってみた

 

「誰を待ってるの⁇」

 

「えいしゃん」

 

「えいしゃん⁇」

 

「ひとみたちのおとうさん」

 

ひとみといよは俺の事をお父さんと認識している様だ

 

「えいしゃんかえってきた‼︎」

 

「きた‼︎」

 

「何にも見えないけど…」

 

「あっち‼︎」

 

「あーしゃんのひこうき‼︎」

 

二人が指差す方を見るが、星があるだけで何も見えない

 

「フィリップが見えるのか⁇」

 

不思議に思った隊長も窓際に来た

 

「えいしゃんのひこうき」

 

「あーしゃんのひこうき」

 

夜目に慣れている隊長の目でさえ、フィリップとブリストルは見えない

 

全員が見守る中、答えは数分後に出た

 

ようやくフィリップのジェット音と、ブリストルのプロペラ音が聴こえて来た

 

ここで隊長が両機に気付く

 

先程二人が指差していた方角からやって来た両機は、着陸脚を出しているのが見えた

 

「凄いな‼︎よく見えたな‼︎」

 

「いよすごい⁇」

 

「ひとみすごい⁇」

 

「凄い凄い‼︎私でさえ見えなかった‼︎」

 

「どうやって分かったの⁇」

 

「いよ、えいしゃんのことすきだからわかるの‼︎」

 

「ひとみもいっしょ‼︎」

 

隊長はガンビアの艦長の言葉を思い出す

 

”数キロ先の敵影を的確に探知する”

 

二人は自分自身の力を分かっていないが、特化された能力が目覚め始めているのかもしれない…

 

 

 

「ただいま〜っと」

 

「えいしゃんおかえり‼︎」

 

「おなかすいた⁉︎」

 

いつも真っ先に迎えてくれるたいほうに代わり、今日はひとみといよが出迎えてくれた

 

「いい子ちゃんにしてたか⁇」

 

「してた‼︎たいほうちゃんとあそんだ‼︎」

 

「たいほうは⁇」

 

「ねんねした‼︎」

 

「そっか…ひとみもいよもネンネしないとな」

 

「や〜だ〜、えいしゃんとあそぶ〜」

 

「あそぶ〜」

 

二人は俺の腕の中でぐずり始める

 

「よ〜し、早く寝た子には、明日オモチャを買ってやろう‼︎」

 

「ねるっ‼︎」

 

「ねる‼︎」

 

二人はすぐに腕から降り、子供部屋に向かう

 

「えいしゃんおやすみ‼︎」

 

「おやすみ‼︎」

 

「おやすみ」

 

二人が去り、隊長と話をしようとしたが、ソファで固まって眠ってしまった朝霜ときそとしおいが見えた

 

はっちゃんは食堂の椅子に座ってホットミルクを飲んでいる

 

俺はきそをおぶり、朝霜としおいを両脇に抱え、子供部屋に入った

 

まずはしおい

 

「レイ…⁇」

 

「今日はありがとうな⁇」

 

「うんっ…おやすみ…」

 

余程疲れていたのか、しおいはまたすぐに寝息を立て始めた

 

次は朝霜

 

「…お父さんか⁇」

 

「明日、みんなでタウイタウイモール行こうか」

 

「本当か⁇」

 

「あぁ。好きなモン買ってやる」

 

「へへっ…高っケェソフト買ってもら…」

 

こんな小さな体でブリストルを動かしているのだ

 

相当疲れているに違いない

 

最後にきそ

 

「ん…レイ。今日はゴメンね⁇」

 

「気にするな。失敗じゃないから謝る必要も無い」

 

「レイは優しいね…」

 

「お前も明日、好きなモン買ってやるからな」

 

「うんっ…高いの選ぶよ」

 

現金な奴が多い

 

朝霜は完全に横須賀から現金さを受け継いでいる

 

きそは恐らく冗談だ

 

全員寝ているのを見て、最後にたいほうの頭を撫で、子供部屋を出て、食堂に戻って来た

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。