艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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138話 貴方にもう一度惚れた日(3)

幸せな家族のまま、一週間が流れた

 

レイと子供達二人はすっかり打ち解け、お昼寝も一緒にする位になった

 

レイの元には、沢山の友人が足を運んでくれた

 

足繁く通ってくれたのは、やはり隊長だ

 

レイも何と無くだが、隊長を友人だとの認識も生まれた様だ

 

刻一刻と、レイの記憶が戻る時が近付く…

 

私は複雑な気分になっていた

 

正直このまま、レイを私の手元に置いて、家族団欒の生活を続けたい…

 

だけどそれは、抱いてはイケない感情だった…

 

 

 

 

 

一週間前と同じく、学校の前で二人の帰りを待つ

 

「ただいま帰ったぞ‼︎」

 

「おかえり‼︎」

 

「すてぃんぐれいただいま‼︎」

 

「おぉっ‼︎たいほうちゃんもおかえり‼︎」

 

たいほうちゃんは当然かの如くレイに抱き着く

 

「すてぃんぐれい、あたまのっていい⁇」

 

「おっ。乗ってみるか⁇」

 

「うんっ‼︎」

 

記憶を失う前、毎日の様にしていた、たいほうちゃんの肩車

 

この光景を見ない日は無かった

 

たいほうちゃんは相変わらず器用にレイに登り、定位置に着く

 

「たいほうのとくとうせき‼︎」

 

「ふっ…」

 

「あのね、すてぃんぐれい…」

 

「どうした⁇」

 

「たいほうがちっちゃいときにね、すてぃんぐれいはたいほうをたすけてくれたの」

 

「そっか…」

 

「だからね…こんどはたいほうがたすけてあげる‼︎きおくそーしつなんて、たいほうがぱんちしてあげる‼︎」

 

「あ…」

 

レイの目からポロポロと涙が落ちる

 

「…たいほう」

 

「ん⁇たいほうおもい⁇」

 

「…いやっ、違うさ。今日はビスケット持って無いのか⁇」

 

「あるよ‼︎すてぃんぐれいにもあげる‼︎はい‼︎」

 

たいほうちゃんは器用にビスケットをレイの口に放り込む

 

「しょっぺぇな…」

 

「おいしくない⁇」

 

「美味しいさ‼︎たいほう、がーがーさんは元気か⁇」

 

「がーがーさんげんき‼︎あのね、このまえてるつき、がーがーさんたべようとしたんだよ⁇」

 

「は…ははは…そっか。照月は食いしん坊だか…ら…」

 

「思い出した⁇」

 

「横須賀。ありがとう…全部思い出した‼︎」

 

「そう…」

 

ホントは嬉しいのに、やっぱり心の何処かで素直にそれを受け止められないでいた

 

レイはたいほうちゃんを降ろし、迎えが来ている所まで見送った

 

「すてぃんぐれい、おうちかえってくる⁇」

 

「あぁ‼︎もう少ししたら帰るからな‼︎」

 

「みんなまってるよ‼︎」

 

たいほうは基地へと帰って行った…

 

「横須賀、磯風、朝霜…本当にありがとう‼︎」

 

「やったな‼︎」

 

「やはりオトンは凄いな‼︎」

 

祝福をくれる二人と違い、私は未だ複雑な気分でいた

 

「良かったわね…」

 

「何だよ〜。もうちょい喜んでくれよ〜」

 

「うるさいわね‼︎喜んでるわよ‼︎」

 

「じゃあなんで泣いてる」

 

「泣いてなんかない‼︎帰るわよ‼︎」

 

私は素直になれず、子供達を連れ、執務室に帰って来た

 

その日の晩、私は執務室でごった煮になった頭を冷やしていた

 

ホンット、ズルい女だ

 

だけどここ一週間…とても幸せだったな…

 

「横須賀」

 

「ん…」

 

「先に寝るからな⁇後で来いよ⁇」

 

「うん…ちょっと一本だけ電話したら行くわ」

 

レイを自室に向かわせ、私は電話を取った

 

「横須賀です。”例のモノ”は完成した⁇」

 

《明日の朝には完成しますよ‼︎》

 

「少しだけ急いで。フィリップの代わりになるのはその機体だけなの。それと明日、きそちゃんを召集して」

 

電話を切り、私は約束通りレイの待つ自室に来た

 

「横須賀」

 

「なぁに⁇」

 

「好きだぞ」

 

「知ってるわよそんな事。あっ…」

 

髪留めを外していると、レイは私をベッドに引き摺り込んで来た

 

「レイ…」

 

「黙って抱かれてろ」

 

「…うんっ」

 

あぁ、やっぱり私はチョット強引なレイの方が好きだ

 

大人しくて子供っぽいレイも大好きだった

 

だけど、こっちのレイはもっと好き

 

「…あら⁇」

 

抱かれると思ったのに、本当に抱き締められただけだ

 

「抱くって言ったろ⁇」

 

「え…えぇ…」

 

「お前の匂い、好きなんだよな…」

 

レイは私の頭に鼻をつけ、深く息をする

 

「ありがとう、ジェミニ…」

 

「いいの。幸せだったわ…家族団欒が出来たもの…」

 

「いつか毎日出来る様になるさ…」

 

「んっ…」

 

私は上を向き、レイと唇を合わせた…

 

待ちに待った、長い長いキス

 

レイ…

 

貴方が私しかいないと言うなら

 

私は貴方しかいないの…

 

だからもう…

 

私の傍から離れないで頂戴…

 

私は記憶の戻ったレイと共に、永い一夜を過ごした…

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