今回のお話は、warspiteのお話です
普段子供達に好かれる姫の意外な一面が見れるかも
母さんが車椅子から降り、カーペットの上にいる
いつもはソファーの隅っこに居るのに珍しい
そんな母さんの前には、ひとみ、いよ、たいほうの三人が、この間買ったイルカのぬいぐるみを抱っこして昼寝をしている
母さんは真顔でそのイルカのぬいぐるみに、そ〜っと手を伸ばし、まるでジェンガを抜くかの様にそ〜っとそ〜っと抜く
母さんの真顔は見ていて何だか面白い
最初にいよの抱いていたイルカを取り、そっと頭を上げ、そこにイルカを差し込む
イルカのぬいぐるみは枕になった
母さんは次にひとみのイルカにも手を伸ばす
「んに…」
「ひぅっ」
ひとみが起きかけ、母さんは肩を上げる
それでもイルカのぬいぐるみを抜くのを止めない
ひとみの頭の後ろにもイルカが差し込まれ、最後はたいほう
たいほうは何かに掴まる時、しっかりガッチリ持つ癖があるので、中々イルカが抜けない
母さんはイルカを小刻みに左右に振りながら、徐々に抜いていく
その間も勿論真顔
口を真一文字に締め、たいほうだけを見ている
たいほうのイルカも抜け、また枕にする
「ふふっ」
母さんは満足気だ
オヤツの時間になり、子供達もゾロゾロ集まって来た
母さんと三人の子供達の前には小さな机が置かれる
「母さん。今日は子供達頼むよ」
「オーケーマーカス」
いつもは俺か隊長が座っている席に、今日は母さんが座る
「ひとみの分、いよの分、たいほうの分…母さんはこれな」
「ふふっ」
目の前に置かれたチョコレート味のスコーンを見て、母さんは笑う
ひとみといよは、霞が作ってくれた砕いたプリンの離乳食
たいほうは姫と同じスコーン
それぞれが食べ始め、俺も自分の席に着いてスコーンを口にする
「ぷはぁ〜っ‼︎」
「くぅ〜っ‼︎」
ひとみといよが何処かで聞いた様なセリフを吐いている横で、ふとたいほうと母さんを同時に見る
俺は笑みがこぼれた
たいほうの食べ方と母さんの食べ方が丸っきり同じだ
スコーンを手に持ち、口を開けてカブりつき、ポロポロ粉を落とす
二口、三口目には口周りは既に粉だらけになる
二人共口が小さいからこぼすのかもしれない
「おいひ〜‼︎」
正面に顔を戻すと、二人が苦戦していたスコーンをてんこ盛り用意され、それを一口で食べる照月がいる
勿論粉一つこぼさない
食べている照月は本当に幸せそうだ…
視線を再び二人に戻すと、スコーンを食べながら、テレビに夢中になっている
そしてまた、スコーンの粉が落ちる
ひとみといよもテレビは見ているが、食べる時はちゃんと離乳食を見ているので、多少口周りに付いている位だが、たいほうと母さんは大惨事になっていた
口周りは粉、粉、粉
粉は頬にも付いている
どうやって食べればあんな事になるのか…
拭かなければ…
ティッシュの箱を持ち、二人の前に来た
まずはたいほう
「いっぱいついてた⁇」
「そんだけ美味しかったって事さ」
たいほうの口元を拭いていると、後ろから服の裾をクイクイ引っ張られた
振り返ると、母さんが無言で此方を見て、小さく首を傾げていた
拭いてくれという合図だ
「こっち向いて」
「んっ…」
母さんの口元も綺麗に拭く
こうして見ていると、母さんはホントに子供っぽい
いつも気品溢れるオーラを出している反動なのだろうか⁇
いや、元々甘えんぼなんだろう
父さんに聞いたが、母さんは昔からふとした瞬間子供っぽいらしい
基本的に真顔になっている時に子供っぽくなるらしい
母さんが執務室でデスクワークをしている
隊長は1日に数時間は子供達との時間を必ず取る
その間、母さんはデスクワークをする
赤い縁の眼鏡を掛け、中々の早さで仕事を終わらせていく
そしてまた真顔になる
白紙に何か書いている
はたから見れば真面目に書類に向かっている様に見えるが、書類仕事は終わっている
「ふふっ」
紙に描いていたのはラクガキのようだ
可愛げのあるウサギやクマを描いている
随分と楽しそうにしている
「何してるの⁇」
「ん⁇ふふっ」
きそが来たので、一緒に母さんを眺める
「姫ってさ、時々スッゴク子供っぽくなるよね」
「それが可愛いんだよ。男はそれにコロッとやられる」
書類仕事を終え、母さんは食堂のソファーに座ってテレビを見始めた
たまには隣に座ってみよう
「よっこいせ」
母さんは俺が座った時、一瞬だけ俺の顔を見た
真顔だ
子供達が教育番組を見ており、俺も子供達と話をする為にそれを見る
しばらくすると、肩に母さんの頭が乗った
照月の様に口を開けて、ヨダレを垂らして寝ている
「ひめしゃんねた⁇」
「ひめしゃんおつかえ⁇」
テレビを見終えたひとみといよが来た
二人は誰かが寝ている時は静かにするという事を覚えたみたいだ
「そうだな…いっぱいお仕事したからな」
二人と話していると、母さんが膝の上に落ちて来た
「くぅ…」
「ったく…」
母さんの眼鏡を外し、いよに渡す
「机の上に置いて来てくれるか⁇」
「わかた」
いよは机の上に眼鏡を置いて、すぐに戻って来た
「これつかう⁇」
「握らせてみな」
ひとみといよは母さんの手にイルカのぬいぐるみの口先をツンツンさせた後、母さんに抱かせてみた
「くふっ…」
イルカのぬいぐるみを二つも抱いた母さんは幸せそう微笑んだ
「いるかしゃんふあふあしゅるの」
「ひめしゃんもふあふあしゅき⁇」
「そうかもなぁ」
俺が母さんの頭を撫でると、二人も真似して母さんの頭を撫でる
「ねんねんこおい〜」
「ぶっこおい〜」
たいほうの歌っていた、歌詞がチョイ怖い子守唄を二人は口ずさむ
夕ご飯を食べ終え、風呂も入り、今日は寝るだけだ
俺は子供達を寝かせ、食堂に戻って来た
「マーカスも飲む⁇」
「頂こうかな」
母さんからホットミルクを貰い、椅子に座って飲む
食堂には大人達が数人しかいない
見るテレビも無く、隊長がDVDをつけている
流しているDVDは、前に隊長にソックリな博士兼主人公が出ていた映画の最新作だ
「私が博士に似てるなら、今回はレイと横須賀に似てるな⁇」
テレビの中では、口うるさい女性の上司が主人公の男に当たっている
主人公は反論して、その女性を黙らせている
女性はそれだけ口うるさくしている癖に、いざデカい恐竜が来るとすぐに主人公の背後に隠れている
まるで横須賀だ
「ホント横須賀だな…」
「ふっ…」
隊長はニヤつきながら画面に食い入る様に見ている
しばらくDVDを見ていると、また服の裾をクイクイされた
「マーカス…」
母さんはオネムの様だ
「眠たいか⁇」
「うん…」
母さんは既に目を擦っている
俺は車椅子を押し、母さんの部屋の前まで来た
「トイレは大丈夫か⁇」
「大丈夫…」
部屋に入り、ベッドの傍に車椅子を止め、ブレーキをかける
「んっ」
母さんは手を広げ、こっちを見ている
抱っこしろとの合図だ
「今日は随分甘えんぼだなっ…よっ‼︎」
母さんの脇に手を入れると、すぐに俺を抱き締める
眠気が相当来ているのか、母さんの体温はいつも以上に温かい
いい匂いもする
「ふふっ」
俺に抱き上げられた母さんは何故か嬉しそうにしている
母さんをベッドに寝かせ、布団を被せる
「マーカス」
「どうしたっ⁇」
ベッドの傍に屈むと、母さんは真顔で俺の頬を撫でて来た
「私もぬいぐるみ欲しいです」
「ぬいぐるみ欲しかったのか⁇」
「ダメ⁇」
「今度買って来てやるよ」
母さんにちゃんと布団を掛け、部屋を出ようとした
が、ガッチリ腕を掴まれて引き止められた
「おやすみのキスは⁇」
「…」
「kiss」
母さんは真顔で迫る
「ったく…」
子供達にそうしている様に、髪の毛をかき上げ、額にキスをする
「ふふっ」
「おやすみ」
「おやすみマーカス」
俺は部屋から出た
部屋から出てすぐ、軽くため息を吐く
ホントに子供っぽいんだな…
まさかぬいぐるみが欲しかったとは…
表立っては、ちょっと気の強い良妻賢母
仕事も出来るし、料理だって出来る
それに、子供の面倒見も良い
だが、裏を返すとトンデモない甘えんぼさん
実は母さん、眠っていた子供達のぬいぐるみを引き抜いていた時、実は奪おうとしていたのだ
ホントは欲しくて欲しくて堪らない
何とか理性でセーブし、枕にする事でその思いを隠した
なのでソファーでうたた寝していた時、ひとみといよがぬいぐるみを抱かせると幸せそうな顔をしていたのだ
こんな子供っぽさを見せられたら、男は落とされてもおかしくない
…少し、呉さんの気持ちが分かった気がした
「レイは気付いてないね。レイの自動的に異性を落としていく癖、姫から遺伝してるの…僕もいつかつくかなぁ…」