艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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153話 試作型深海棲艦(2)

我々には”Vea”と呼ばれる深海の被験体がいる

 

Veaの由来は、叫ぶ声を文字にしたモノである

 

 

 

Veaは身体再生能力に長けており、尚且つ私達に友好的だ

 

私達が気付かない内に自身の左腕を切り落とし、Mk.0の左腕に癒着させた

 

Mk.0に拒絶反応は無く、結果も良好だ

 

Mk.0は発見当初、身体中傷だらけだったが、あの装置に入っていれば命は保証される

 

一体Mk.0に何があったのだろうか

 

 

 

 

Mk.0はその驚異的な回復力でみるみる内に回復した

 

数日後には歩ける様になり、軽くではあるが、私達の研究を手助けしてくれる様になった

 

彼は自分をMk.0と呼ばれるのを嫌がっている様子だ

 

何か別の呼称を考えなければ…

 

 

 

 

助手でもある妻がMk.0を呼ぶ際”レイ君”と呼ぶ様になった

 

Mk.0は嫌がってはいるが、型番の様な呼ばれ方よりかは気に入っている様子だ

 

後で妻に話を聞くと、驚くべき答えが返って来た

 

万が一Mk.0が暴走してしまった際、この呼称で呼ばれると治る様に細工をしたと言う

 

本当だろうか…

 

妻の方が暴走気味の気がする…

 

 

 

 

Mk.0を外に出してみた

 

ずっと娘が付き添っている

 

そう言えばMk.0は娘の思い人らしい

 

娘といる時、Mk.0は一度も暴走する事が無い

 

この状態が安定して続けば、Mk.0を社会に返す事も念頭に入れている

 

本日をもち、Mk.0を被験体としての利用を終了する

 

本国からの命令で被験体をVeaに切り替えるとする

 

 

 

 

Mk.0が血まみれで帰って来た

 

帰って来たMk.0は全身血まみれの状態で、娘を抱えていた

 

原因は不明だが、娘はMk.0と共に出掛けていたらしく、道中で老人と口論になり、Mk.0が仲裁に入る

 

老人は娘を杖で殴打したらしく、Mk.0は娘を守る為に反撃

 

老人は自身が入居している老人ホームに逃げ帰るが、Mk.0の怒りは収まらず、老人ホームの人間を皆殺しにしたらしい

 

事態を聞いて駆け付けた警官の飽和発砲により、全身から多量に出血

 

そんな状態で娘を抱えて帰って来たのだ

 

如何に回復力が高いと言っても、これだけ出血していれば回復が間に合わない

 

…輸血が必要だ

 

 

 

 

彼の最後の記録をここに記す

 

彼は平和的な思考の持ち主だ

 

私達の事を家族だと認識している

 

私自身も彼を息子と認識し、情が湧いている

 

だが、あれ以降老人を見ると突発的に体の一部分がDMM化してしまう

 

特に左腕。あの部位には注意が必要だ

 

私はこれから本国に渡り、恐らく死刑になる

 

少し、深海の子達と関わり過ぎた様だ

 

恐らくMk.0とVeaは深海の子と人間の友好的な架け橋になる

 

彼等二人を深海側に身を置かせる事にする

 

こうでもしないと彼等が余りにも不憫だ

 

いや、不憫な思いなら既にさせているか…

 

Mk.0…

 

君が背負わなければならない運命は、余りにも残酷だ

 

だが、君はもう分かっているはずだ

 

深海の子にだって、友好的で戦いに反対する奴はいる

 

それを知る人間は数少ない

 

だから、頭の固い連中に教えてやって欲しい

 

彼女達だって生きている

 

コミュニケーションだって取れる

 

平和な道はあるはずだ…

 

頼んだぞ…マ…

 

 

 

恐らく名前が書いてあったのだろうが、誰かが何度も触れたのだろうか⁇

 

掠れて見えなくなっている

 

俺は最後の文に目を向けた

 

 

 

 

心残りがあるとすれば、妻の事だ

 

娘はきっと、巡り巡って君の元に行くだろう

 

だが妻は別だ

 

妻は思い込みが激しい

 

自分がこんな世にしてしまったと思い込んでいる

 

余裕がある時でいい

 

妻の考えを更生させてやってくれ

 

君ならきっと出来る

 

何せ、私と君は外見も性格も瓜二つだ

 

私に出来て、君に出来ない事は無い

 

頼んだぞ‼︎

 

資料はここで終わっている

 

 

 

 

資料を読み終えた瞬間、俺は振り返り、ピストルを構えた

 

「読んじゃったのね…」

 

そこに居たのはサラだった

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