艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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158話 死神と呼ばれた潜水艦(2)

《潜水艦浮上‼︎来るよ‼︎》

 

「どわっ‼︎」

 

海面に巨大な船影が見えた瞬間、船体を軽く浮き上がらせながら海上に現れた

 

《レイ、どうする⁉︎》

 

「…」

 

海上に現れた潜水艦を見て、息が詰まった

 

《レイ⁇》

 

「タナトス…」

 

《タナトス⁇タナトスって、あの死神の⁇》

 

「タナトス。俺だ。分かるか⁇」

 

《創造主の声がするでち…》

 

《喋ったぁぁぁぁぁぁぁぁあ‼︎》

 

グリフォンがビビっている

 

あの潜水艦は、俺がロンギヌスの前に造り出した一番最初の潜水艦だ

 

あの潜水艦は火力も防御力も速力も最高の仕上がり

 

浮上してもイージス艦レベルなら体当たりで破壊出来る程の硬さを持ってる

 

だが、俺がタナトスと名付けたのはそこじゃない…

 

「長い任務だったな…疲れたろ⁇」

 

《寒かったでち…もう、ここに一人ぼっちは嫌でち…》

 

「温かい海に帰ろう。戦争は終わった」

 

《うん…でもその前にしたい事があるでち》

 

「なんだ⁇」

 

《こんな所にタナトスを放置した創造主に、同じ思いを味わわせてやる事でち‼︎》

 

タナトスはいきなりグリフォンに標準を合わせて来た‼︎

 

ミサイルハッチも開いている‼︎

 

《ヤバッ‼︎逃げるよ‼︎》

 

《死ね‼︎創造主‼︎》

 

タナトスはグリフォンに向けて対空ミサイルを撃ち出した

 

《あれ⁇》

 

《うっしっし…ファイアコントロールロックせいこ〜う‼︎》

 

グリフォンがタナトスの電子機器をコントロールし、対空ミサイルを撃てない様にしていた

 

グリフォンにとって、敵の電子機器を弄るのは朝飯前

 

唯一ファイアコントロールをロック出来ないのは叢雲位だ

 

《外せ‼︎》

 

「撃たないって約束して、大人しく近くの軍港に行くって言うなら外してやる」

 

《…分かったでち》

 

タナトスは大人しく着いて来た

 

「タナトス。レーダージャミングも解除してくれないか⁇」

 

《嫌でち。創造主が裏切る可能性もあるでち。解除したけりゃ、タナトスに乗る事でち》

 

「…あぁったよ」

 

グリフォンのレーダーは正常に動いているが、軍港に近付くにつれ、基地との通信状態が悪くなった

 

グリフォンが着陸した後もそれは続いていた

 

「マーカス大尉‼︎これは一体‼︎」

 

「目的の潜水艦を連れて帰って来た。ちょっとグリフォンを頼む」

 

「り、了解…」

 

グリフォンを停めてすぐにタナトスの所に向かう

 

港に止まったタナトスは、辺りにいた兵士の野次馬達に囲まれていた

 

《来やがったでち》

 

「乗せてくれるか⁇」

 

《創造主だけでち。そこの緑の奴は嫌いでち》

 

「なっ、なんだとぉ‼︎」

 

「きそは良い子だ。一緒にお前を迎えに来てくれたんだぞ⁇」

 

《…二人だけでち》

 

「サンキュ」

 

タナトスが防水扉を開けてくれ、俺ときそだけが中に入る

 

「うわぁ…」

 

きそがため息を漏らす

 

艦内は無人だが、電子機器はしっかりと起動しており、ほぼ全ての機関が自立して動いている

 

俺はメインルームに入り、モニターの前に立った

 

「タナトス」

 

《何年放っておくつもりだったでち》

 

「すまん…忘れた訳じゃないんだ」

 

開口一番にタナトスに怒られた

 

怒られて当然だ

 

タナトスは、当時敵対していたロシアの動きを逐一見る為に北極海に配備された

 

少しでも不審な動きをしたら先制攻撃をする為でもある

 

それを、ロシアと仲良くなっても今の今まで、ずっと海底で見張り続けていたのだ

 

「どうして急に動き出したんだ⁇」

 

《タナトスが動いたらダメでちか》

 

「いや、良いさ」

 

《…帰投命令の音楽がしたでち》

 

「あぁ…なるほど…」

 

AIにいつも教えているのが一つある

 

それは最初で最後の命令であり、造り出したAIにはそれだけは守らせる

 

それは、とある音楽を聴いたら必ず帰投する事

 

それが俺がこの間バイオリンで弾いたあの曲だ

 

タナトスは何処からか無線を傍受して、命令と勘違いして浮上したのだろう

 

「タナトスはレイの事嫌い⁇」

 

《嫌いじゃないでち。これはタナトスに課せられた任務でち》

 

「僕達を許してくれるの⁇」

 

《創造主”は”いつだって許してるでち。緑の奴は嫌いでち》

 

「うぅ…」

 

《人の動きを封じる奴は嫌いでち》

 

「ごめんよぉ…」

 

「よしっ、出来た‼︎」

 

きそとタナトスが話している間、俺はタナトスの航路座標を設定していた

 

《ここに行けばいいでちか⁇》

 

「そっ。一人で行けるか⁇」

 

《タナトスをバカにすんなでち‼︎お使い位一人で行けるでち‼︎》

 

そう言って、タナトスは急に動き出した

 

「待て待て‼︎俺達を降ろしてくれ‼︎」

 

《早く降りるでち‼︎》

 

「レイ‼︎早く早く‼︎」

 

俺ときそは急いでタナトスから飛び降りた

 

俺達が港に戻った瞬間、タナトスは海中に消えて行った…

 

「タナトスって、結構短気⁇」

 

「だからタナトスって名前なんだよ」

 

「なるほどっ…」

 

タナトスは確かに強力な潜水艦だ

 

だが、命令を聞かない事がたまにある

 

しおいやはっちゃんが的確に、そしてある程度は加減して言う事を聞く反面、タナトスは言われた事をこれでもかと忠実に熟し、完膚なきまで破壊する

 

AIの性格設定を失敗した訳ではない

 

ただ、護る者を護るにはそれなり…それ以上の打撃力が必要と判断した上でタナトスは産まれた…

 

きそと共に再びロシアの基地に戻り、今度は温かいミルクを飲む

 

「でも、タナトスってカッコイイね‼︎」

 

「ありがとう」

 

「それで、何処に座標設定したの⁇」

 

「一旦は横須賀に設定しておいた。後はアイツが望む場所に配備させようと思う」

 

「タナトスはしおい達のお姉ちゃんに当たるの⁇」

 

「そっ。しおいがみんなを護る盾なら、タナトスは槍だ」

 

「なるほどね〜」

 

「きそ」

 

「ん〜⁇」

 

両手でコップを持ってミルクを飲んでいたきそが、机にコップを置いた瞬間、俺はきその両手を取った

 

「もし、だ。もし、タナトスが体を欲しいと言って来たら、造ってやってくれないか⁇」

 

「うんっ‼︎いいよ‼︎」

 

きそは口周りに白い輪を作りながら、ビックリする位素直に受け入れてくれた

 

「君達」

 

誰かに呼ばれて振り返る

 

そこにはガングートを小さくしたような白髪の女の子が立っていた

 

…垂れ目で何だか眠たそうな顔をしている

 

「ライコビッチが呼んでいる。来てくれ」

 

「ロシアの子だ」

 

「私は響。元は日本の艦娘だ」

 

「へぇ〜っ。一人で来たのか⁇」

 

「そう。日本の政治は響に合わなかった。私はロシアの方が良い。無理矢理連れて帰らないでくれ」

 

「んな事するか。案内してくれ」

 

響に連れられ、ライコビッチの居る部屋に案内される

 

「ここだ。ライコビッチ、入るよ」

 

「ベールヌイ‼︎変な人には襲われなかったか⁉︎置いてあったオヤツはキチンと食べたか⁉︎ん⁉︎」

 

「大丈夫。襲われてないし、オヤツもキチンと食べた。美味しかったよ」

 

「う〜んハラショー‼︎」

 

ライコビッチは普段の冷徹な瞳ではなく、デレッデレな顔で響に頬擦りをする

 

その間響は無表情のまま頬擦りを受け続けていた

 

「ら、ライコビッチ…お客様だ」

 

「お客…う、うんっ‼︎」

 

俺達に気付き、ライコビッチは咳払いをする

 

「目標の潜水艦は此方で引き取った。迷惑かけたな…」

 

「此方こそありがとうございます。これで北極海の生態調査が継続可能になりました‼︎」

 

「…随分と子煩悩なんだな⁇」

 

半笑いでライコビッチに迫る

 

「あ、あはは…」

 

「あ、そうだ‼︎これ見て‼︎」

 

きそはタブレットを取り出し、ライコビッチに写真を幾つか見せた

 

「ガングート…こんなに楽しそうに…」

 

大体は清霜と遊んでいる写真だが、ライコビッチにとっては嬉しい報告だった様だ

 

「あの、マーカス大尉」

 

「なんだ⁇」

 

「差し支えなければ、ガングートがロシアに帰りたいと言うまで、そちらで預かって頂けませんか⁇」

 

「それはいいが…」

 

「ガングートはロシアに帰って来たら実験や研究の矛先になります。私はそれを見ていられなかった…だから、貴方がたに託したのです」

 

ようやく分かった

 

ライコビッチはハナから日本にガングートを”逃がす”つもりだった

 

粛清癖を治せと言って来たのは口実で、本当の目的はガングートをロシアの実験の矛先にならない様に逃がす事にあった

 

響は日本からの”来賓”扱いなので、そう言った扱いをすると国際問題に発展するので絶対にそうはならない

 

「レイ、そろそろ帰ろう。またひとみといよに怒られるよ⁇」

 

「そうだな。また遊びに来るよ。ガングートは任せな」

 

「お願いします」

 

「私が外まで送ろう。ライコビッチは書類を整理しておいてくれ」

 

「ちゃんと帰って来るんだよ⁉︎分かった⁉︎」

 

「分かった」

 

響がライコビッチに微笑みを送る

 

グリフォンに乗るまでの間、響が口を開いた

 

「ライコビッチにとって、ガングートは娘みたいな子なんだ」

 

「マジで子煩悩なんだな…見方が変わったよ」

 

「確かにライコビッチは目つきが悪い。だけど、いつだってみんなを心配してる…上に立つべくして立った人さ」

 

「あの時も情が湧かない様に…」

 

「大尉は知らないだろうな。あの日帰って来た時、ライコビッチがギャン泣きしていたのを」

 

「時々、ガングートに連絡を取らせるようにしよう。そしたらギャン泣きは無くなるだろ⁇」

 

「…多分」

 

話が良い感じに途切れ、おれたはグリフォンに乗る

 

手を振って見送る響に手を振り返し、ロシアを後にした…

 

 

 

 

《ベールヌイって呼んでたね》

 

「ロシアじゃ”信頼できる”って意味だ」

 

《いい名前だね》

 

「あぁ」

 

残る問題はタナトス一つ

 

横須賀に着くのは3日後…

 

暴れなけりゃあ良いが…




無人潜水艦”タナトス”…カチカチ潜水艦

火力、速力、防御力、どれもトップクラスの潜水艦

AIのみの独立起動が可能で、数年に渡ってロシアに目を光らせていた

イージス艦程度なら体当たりで余裕に大破させられる装甲

1基地なら十二分に再起不能に叩ける程の火力

尚且つ普通の潜水艦の二倍の速度で動き回れる

ただ、AIに少々難があり、言われた事以上の破壊行動をしてしまう
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