艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

503 / 1101
さて、160話が終わりました

横須賀に、ついにタナトスが来航します

タナトスが来航する直前、横須賀の執務室では…


161話 心優しきリーパー(1)

横須賀の港で仁王立ちして海を眺める…

 

今日、タナトスが帰って来る

 

横須賀近海でジャミングが強くなっているので、近くに居るのは間違いない…

 

 

 

 

同時刻、横須賀の執務室では…

 

「たあとす⁇」

 

「たあとすてなぁに⁇」

 

アタイの膝の上で、ひとみといよが質問攻めをして来る

 

「お父さんが造ったスッゲー強い潜水艦さ‼︎」

 

「えいしゃんすおい‼︎」

 

「なんれもつくう‼︎」

 

「よいしょ〜っと」

 

子供の前にも関わらず、母さんはリクライニングを倒し、スクリーンを降ろす

 

「母さん‼︎仕事終わったのか⁉︎」

 

「終わったわよ〜。あ、朝霜。そこのシュークリーム取って〜」

 

「ったく…」

 

致し方無く冷蔵庫からシュークリームを取り、母さんの前にドンッと置く

 

「はい、あ〜ん‼︎」

 

「あ〜ん…」

 

母さんからシュークリームを一口貰う

 

やっぱり美味しいな

 

「あんま食い過ぎっと肥えるぞ⁇」

 

「いっぱいあるから、いよちゃん達と食べていいわよ」

 

「…あんがとっ」

 

アタイの分と二人の分を持ってホームシアターの前に戻って来たと同時に、スクリーンに映画が映し出された

 

「うぁ〜」

 

「あぉ〜」

 

ひとみといよがいつも通りの反応をして始まった映画は、タイムトラベル物の映画

 

「昔、お母さんとお父さんがデートした時に見に行った映画なの」

 

「ほぇ〜…」

 

また二人を膝の上に座らせ、映画を見る

 

序盤の内容は、死んだ恋人を助けようと何度も過去に戻って助けようとするが、何度戻って助けようとしても恋人は死んでしまうと言った意味の深い内容だ

 

序盤でも分かる位、中々胸に来る…

 

 

 

 

 

 

 

横須賀の執務室で流れている映画が中盤辺りに入った時、港付近で水柱が上がった

 

タナトスが勢い良く海面に現出し、天を目掛ける様に艦首を突き出した

 

「そっ、総員退避ーっ‼︎」

 

俺がそう叫ぶと、付近に居た艦娘や整備兵達が慌ただしく逃げるが、港付近では浸水が起こり、辺り一面水浸しになる

 

そして、軽く地響きが起こる

 

《ただいまでち‼︎》

 

「バッキャロゥ‼︎水浸しじゃねぇか‼︎」

 

《創造主が帰還時の説明をしなかったのが悪いんでち‼︎》

 

「…まぁいい。おかえり」

 

《ただいまでち‼︎》

 

タナトスは大人しく錨を降ろし、横須賀に停泊した

 

 

 

 

「なんだぁ⁉︎」

 

「ぐあぐあすう‼︎」

 

「あ〜しゃんこあい〜‼︎」

 

タナトスの帰還時に起きた地響きは執務室にも届いて来た

 

アタイはひとみといよを抱き締め、地響きが収まるのを待つ

 

地響きはすぐに収まり、アタイは二人を離し、母さんの方を振り向いた

 

「母さん‼︎大丈夫か⁉︎」

 

「んがっ…」

 

母さんは鼻ちょうちんを作って大口を開いてイビキをかいていた

 

「起きろ‼︎」

 

「うひっ‼︎」

 

鼻ちょうちんが割れ、母さんが起きた

 

「何かグラグラしてたわ…目眩かしら⁇」

 

「違わい‼︎来たみたいだぜ‼︎」

 

ホームシアターの向こうにあるカーテンを開けると、港に巨大な潜水艦が停泊しているのが見えた

 

「デッケェ〜…」

 

息を飲むようなデカさだ…

 

お父さんはアレを造ったのか…

 

「んっ、いよにもみしぇて‼︎」

 

「ひとみも‼︎」

 

お父さんの様に腕力が無いから、アタイは二人を脇に抱え、窓の外を見せた

 

「えいしゃんいた」

 

「おみじゅ、ごぁ〜ってなってう」

 

《横須賀‼︎聞こえるか‼︎》

 

二人と一緒に外を見ていると、母さんの無線からお父さんの声がした

 

「はいはい‼︎来たのね⁉︎」

 

《悪い‼︎水浸しにしちまった‼︎》

 

「起こった事言っても仕方ないでしょ⁇」

 

《怪我人が居ないか確認してくれ‼︎》

 

「分かったわ‼︎」

 

母さんは無線を基地全体に切り替えた

 

「港付近で浸水が発生した。手隙の者は怪我人及び行方不明者が居ないか確認して‼︎繰り返す…」

 

普段はナマケモノの母さんだが、こう言う決断が早いのはホント尊敬する

 

お父さんだってそう言ってた

 

「朝霜、あんたは二人とお留守番ね⁇清霜とガングートが帰って来たらシュークリームあげて。いいわね⁉︎」

 

「あ、あぁ‼︎任せな‼︎」

 

母さんは上着を着ながら外へ出て行った

 

「おうすばん⁇」

 

「あ〜しゃんとおうすばん⁇」

 

「そうだぞ〜‼︎”良い子ちゃん”にしてたら、お父さんも早く帰って来るかんな‼︎」

 

「うんっ‼︎」

 

「おとなしくしてう‼︎」

 

二人はホントに大人しくしてくれていた

 

持って来たお気に入りのイルカのぬいぐるみで遊んだり、お絵描きをしたりと、普段お父さんが向こうで二人に何を教えているか、この二人を見るとよく分かる

 

アタイはアタイで母さんの椅子に座り、母さんがゼッテー残しているであろう書類を片付け始めた

 

アタイは母さんの様な決断力は無いけど、計算だとか、輸入される物資がいついつ来る等を纏める事位はアタイでも出来る

 

って言うか、アタイがやんなきゃ母さんはいつまでも貯めておく

 

まっ、これで小銭くれっから良いんだけどさっ…

 

「あ〜しゃんあ〜しゃん‼︎」

 

いつの間にか横に居たいよに服の裾を引っ張られた

 

「ん⁇どした⁇」

 

「こえあげう‼︎」

 

手を休め、いよの手から紙を貰う

 

「おぉ‼︎アタイか‼︎」

 

いよから貰った紙には、ニコニコ笑ったアタイが描かれていた

 

そういや、お父さんはみんなが書いた絵を宝物の様にファイルに挟んでたな…

 

あ…何か分かる気がする

 

「ひとみもかいた‼︎」

 

ひとみからも絵を受け取る

 

ひとみの描いたアタイは、歯がギザギザに描かれている

 

「アタイは歯ぁギザギザだもんな‼︎二人共上手だなぁ‼︎アタイにくれんのか⁉︎」

 

「あげう‼︎」

 

「ひとみたち、あ〜しゃんらいしゅき‼︎」

 

「二人共、ホント”良い子ちゃん”だなぁ‼︎」

 

二人をギュッと抱き締める

 

「くふふっ…」

 

「あ〜しゃんのにおいら…」

 

「アタイの匂い⁇」

 

「あ〜しゃん、おひしゃまのにおいすうの‼︎」

 

「えいしゃんはたあこのにおい‼︎」

 

「母さんの匂いも分かんのか⁇」

 

「よこしゅかしゃんは、ふあふあしゅるにおい」

 

「よこしゅかしゃん、いいにおいしゅるの」

 

「えいしゃん、おかあしゃんのにおいっていってら‼︎」

 

「へぇ〜…意外だなぁ…」

 

いつも大体お菓子食ってるか、デッケェ音立てて屁ぇこいてんのに…

 

やっぱ、母さんも母さんなんだな…

 

「ふぅ〜っ、疲れたぁ〜‼︎」

 

「ただいまぁ〜」

 

母さんとお父さんが帰って来た

 

「えいしゃんら‼︎」

 

「えいしゃん‼︎」

 

二人はアタイから離れ、お父さんに突進するかの様に飛び付いた

 

…アタイも一発決めてみっかな⁉︎

 

「お父さん‼︎」

 

アタイは足にくっ付いている二人を避け、お父さんのボディに向かって飛び付いた

 

「朝霜っ‼︎ははっ‼︎」

 

お父さんはアタイをしっかりと抱き留めてくれた

 

「またデカくなったか⁇」

 

「メシモリモリ食ってっからな‼︎」

 

「タナトスの整備が終わったらメシ食いに行くか‼︎」

 

「やったぜ‼︎」

 

「んじゃっ、ちょっくら行って来る」

 

「あ〜しゃんあいがと‼︎」

 

「たのしかた‼︎」

 

「あぁ‼︎また後でな‼︎」

 

お父さんは二人を連れて執務室を後にした

 

「…」

 

またすぐに逢えんのに、何か分からない喪失感に苛まれる…

 

「お父さんと離れると寂しくなるでしょ⁇」

 

「何で分かった‼︎」

 

「お母さんがそうだったからよっ。あらっ‼︎書類終わらせてくれたの⁉︎ありがと〜っ‼︎」

 

「あ、あぁ…良いって事よ…」

 

この気持ちを、母さんは今まで何十回何百回と越えて来たのか…⁇

 

やっぱ、アタイには越えらんねぇな…

 

母さんはタフだなぁ…

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。