艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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さて、163話が終わりました

今回のお話は、勘の良い方はすぐ気付くかも知れませんが、とある艦娘の赤ちゃんが産まれます

そしてレイはその赤ちゃんと接し、複雑な心境になります


164話 旅行鳩の愛鳥(1)

夕張の件から数日後…

 

深夜までとある作業をしていた為、俺は工廠でグラビア雑誌を開けて顔に置いて眠っていた

 

「レイ‼︎鹿島と棚町さんの間に子供が出来たわ‼︎」

 

「は、はぁ⁉︎」

 

定期報告に来た横須賀の一言で叩き起こされた

 

「いつまで寝てんのよ‼︎もう昼前よ‼︎」

 

「昨日徹夜だったんだ…よいしょ‼︎」

 

グラビア雑誌を放り、致し方無く起き、あくびをする

 

「鹿島か…ふぁ…」

 

「良い機体になりそう⁇」

 

立ち上がると、横須賀はシートが被せられた試作機を見ていた

 

全貌は明らかになっていないが、きそや妖精達と共に建造を進めている

 

「まぁなっ…ヴェアに貰った設計図を元に造った。まっ、その内この試作機で実験してみるさっ。行くぞ」

 

「あ、ちょっと」

 

グリフォンに乗ろうとしたら止められた

 

「二式で行くわ」

 

「なら、何人か連れてくか…」

 

 

 

 

 

「ちゃんと霞のおててと、たいほうのおてて握ったか⁇」

 

「にいった‼︎」

 

「たいほ〜のおてて‼︎」

 

「きそ、はっちゃん。俺に何かあったら止めてくれよ⁇」

 

「う、うん‼︎」

 

「はいっ、マーカス様‼︎」

 

これだけ連れてきゃ大丈夫だろ

 

ひとみといよのお目付役に、霞とたいほう

 

俺のお目付役に、きそとはっちゃん

 

ひとみといよは初めての大湊になる

 

俺が中々大湊に寄り付かないからだ

 

「久し振りかも‼︎」

 

勿論秋津洲も健在

 

「チェンジ‼︎」

 

「了解かも‼︎」

 

いつも通り秋津洲と操縦を代わり、二式大艇が基地から出る

 

「おそあ〜」

 

「とりしゃん〜」

 

「ぽーらだ‼︎」

 

「凄い…」

 

ひとみ、いよ、たいほう、そして霞まで、外の景色に夢中になる

 

「ふぅ…」

 

子供が出来たら祝う

 

それさえも、心の何処かでイヤがる自分がいた

 

「なぁに⁇やっぱりイヤ⁇」

 

助手席を見ると、横須賀は膝の上で頬杖をつき、イタズラな目で俺を見ていた

 

「仮にも自分が叩き落とした奴と、元妻に会うんだぞ⁇」

 

「アンタがそう言っても、向こうはアンタのお陰で今があるって言ってるわ⁇」

 

「…」

 

そう言えば鹿島は時々、頭お花畑になる時があったな…

 

今が幸せ過ぎて、本来憎むべき相手でさえ感謝している

 

「じゃあレイ⁇何で大湊が危機に晒された時、アンタは一番早く助けに来たの⁇」

 

「たまたま大湊に居たからだ」

 

「…きっとレイの事だから、二人の子供を見たら気も変わるわ⁇」

 

「だといいな。着水するから黙ってろ。舌噛むぞ」

 

「はいはい」

 

横須賀は終始楽しそうに助手席に座っていた

 

横須賀…

 

何度も言って悪いが、旦那の元妻と会うんだぞ…

 

 

 

 

「レイ‼︎来てくれたのね‼︎」

 

「お久ぶりです‼︎大尉‼︎」

 

「あ、あぁ…」

 

執務室に入った途端、二人に歓迎される

 

「ずっと来てくれないから心配しましたよ⁇」

 

「いつも照月ちゃんにお世話になってます‼︎」

 

途中から話が耳に入って来なかった

 

どうも体が拒絶しているらしい

 

「レイっ」

 

「…ハッ‼︎」

 

気が付くと横須賀が左腕を握っていた

 

「ごめんなさい…レイ、昨日徹夜作業してて、まだオネムなのよ。ねっ⁇」

 

笑顔を送る横須賀だが、左腕を握る手に軽く力が入っている

 

「そ、そうなんだ。すま…ふぁ…」

 

横須賀に話を合わせる為に、あくびをかます

 

「少し横になりますか⁇」

 

「いや、いい…早く子供を抱かせてくれ。楽しみで仕方ない」

 

「マーカスさんと横須賀さんよ⁇」

 

鹿島の足元から、ひとみといよサイズの小さな女の子が顔を見せた

 

毛先が鹿島に似たのか白っぽく、何処かで見た事があった記憶があるのだが、思い出せない…

 

「か、可愛い〜‼︎おいでっ‼︎」

 

横須賀は早速膝を曲げ、鹿島の足元にいる女の子に向かって手を広げた

 

女の子は指を咥えながら、チョコチョコ歩いて来た

 

「あ、あらららら…」

 

横須賀を避け、女の子は俺の足に抱き着いた

 

そして、愛おしそうに頬を擦り付けて来た

 

「よいしょっ…」

 

女の子を抱き上げると、俺の胸に頭を置き、寝息を立て始めた

 

「寝ちまった…」

 

「レイは本当に子供に懐かれますねぇ…」

 

「名前は⁇」

 

「”時津風”ですっ」

 

「そっか…」

 

思い出した

 

随分前に夢で見た記憶だ

 

俺と鹿島の未来を映し出した、あの夢…

 

それが今、現実になって手元に帰って来た

 

鹿島に時津風を返すと、時津風はすぐに目を覚ました

 

「びぇ〜〜〜〜〜‼︎」

 

時津風は泣き始め、赤子特有の甲高い声を出す

 

「あらあら…」

 

「私が抱こう」

 

鹿島は必死にあやすが泣き止む気配は無く、棚町が抱いたら更に酷くなった

 

「どうしたんだ〜⁇ん〜⁇」

 

棚町は尽力を尽くすが、時津風が泣き止む気配は無い

 

俺は棚町の腕の中で泣きじゃくる時津風の頬を、手の甲側の人差し指と中指で撫でた

 

「良い子だ…」

 

「キャッキャッ‼︎」

 

時津風は一瞬で泣き止み、更に笑い始めた

 

「凄い…」

 

「流石は父親ですねぇ…」

 

横では横須賀と鹿島がため息を吐いている

 

「大尉、お願いがあります」

 

「しばらく抱っこしてくれか⁇」

 

「えぇ。時津風は大尉に懐いてます」

 

再び時津風を抱かせて貰う

 

俺に抱っこされると落ち着くのか、時津風はすぐに眠ってしまう

 

「レイ。子供部屋に案内します」

 

鹿島に案内され、時津風を布団に寝かせに行く事にした

 

子供部屋は執務室の隣にあり、執務室からはいつでも内部を見れる様になっている

 

「あかしゃんら…」

 

「かあいい〜…」

 

着いて来たひとみといよは、布団で寝た時津風の顔を覗き込んでいる

 

「ひとみもいよも、赤ちゃん好きか⁇」

 

「しゅき…」

 

「ひとみも…」

 

赤ちゃんが眠っているので静かにすると言うのは、二人には分かっているみたいだ

 

四人で時津風の顔を見ていると、俺の腕から離れたと気付き、グズり始めた

 

「おっはようしゃん、あっかしゃん」

 

「ひとみ〜あ〜、ま〜ま〜お〜」

 

「おっ…」

 

貴子さんにでも歌って貰っているのだろうか⁇

 

ひとみといよは時津風のお腹を優しくポンポンと叩き、子守唄を歌う

 

すると、時津風はまた寝始めた

 

「あかしゃんねた…⁇」

 

「たかこしゃんのおうたきいた…⁇」

 

「凄いじゃないか⁉︎」

 

「たかこしゃん、ひとみちゃんといよねんねすうとき、このおうたうたってくえうの」

 

「たいほ〜はねんねこおい〜うたってくえう」

 

ひとみといよは俺の知らない所で愛情を注がれ、それをしっかりと受け継いでいる

 

基地で一番小さいと思っていたが、たいほうと同じく、少しずつ、色んな事を覚えているみたいだ

 

執務室に帰って来ると、子供達が棚町からお菓子を貰って食べていた

 

「んっ、いよもびすけっろほちい」

 

「ひとみもほちい」

 

「はいっ‼︎」

 

「あいがと‼︎」

 

「あいがと‼︎」

 

二人共棚町からビスケットを受け取り、横須賀の膝の上で食べ始めた

 

「あらっ…ふふっ‼︎」

 

二人に甘えられ、横須賀はご満悦

 

「レイはどうやって二人に教育を⁇」

 

「俺は何もしてない。基地で貴子さんや、子供達が面倒見てくれてるんだ」

 

「なるほど…」

 

「そうだ大尉‼︎今日こそご飯食べて行って下さいよ⁉︎」

 

「美味いのじゃなきゃイヤだぞ⁇」

 

「ふふっ‼︎勿論‼︎今日はボスが料理番です‼︎」

 

棚町に案内され、食堂へと向かう

 

鹿島は時津風の面倒を見る為、執務室に残った

 

食堂に行くまでの道中、頭にたいほう、右手できそ、左手で霞と手を繋いでいた

 

ひとみといよは横須賀と手を繋ぎながら、横須賀と共に歌を歌っている

 

「はっちゃんは帰りの時な⁇」

 

はっちゃんは何故か首を横に振った

 

「はっちゃんは、この間デートして貰ったのでい〜です」

 

「ダメだ。それはそれ、これはこれだ」

 

「つっ、次は私ともデートしなさいよ…」

 

そう言ったのは霞

 

「たいほうはたまにすてぃんぐれいとでーとしてるよ‼︎」

 

「そうだな。んじゃ、次は霞だな⁇」

 

「う、うんっ…」

 

自分で言い出したのに、霞は顔を真っ赤にしていた

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