艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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さて、166話が終わりました

今回のお話は、ド〜〜〜〜〜ンと暗くなります

ですが、新しい子も出て来ます

可愛らしい子なので、暗いお話の心休めにどうぞ


167話 真っ赤なお弁当(1)

横須賀の基地の横には、大きな公園がある

 

そこは勿論海が見えて、昼間はお散歩コース

 

そして夜はデートスポットになっている

 

その日俺は、清霜とガングートがそこで遊んでいると聞いたので、磯風と共に迎えに行く事になった

 

「確か、いつもこの辺りで…あぁ‼︎いたいた‼︎」

 

清霜とガングートはすぐに見付かった

 

休憩する為に建てられた、屋根と椅子がある場所でおしゃべりしていた

 

「あっ‼︎お父様‼︎」

 

「イディオット‼︎」

 

清霜とガングートは、俺を見つけるなりすぐに抱き着いて来た

 

「オトンは本当に二人に好かれてるな」

 

「磯風も来い‼︎」

 

ついでに磯風も抱き寄せる

 

「やめろ‼︎い〜ちゃんはタバコの匂いが嫌いなんだ‼︎離せ‼︎」

 

「ぐはっ‼︎」

 

磯風、俺を全否定である

 

「いーちゃんもイディオットにナデナデして貰うといい。イディオットのナデナデは良いぞ⁉︎」

 

「触るなよ。噛むからな」

 

「わ…分かった分かった」

 

もしかすると磯風は思春期に入っているのかも知れない

 

ちょっと聞いてみよう

 

「磯風。俺と一緒に洗濯洗うの嫌か⁇」

 

「それは構わん。洗濯の回数は少ない方が良いからな」

 

「俺の事、キモいとか言わないのか⁇」

 

「オトンは気持ち悪くは無い。お母さんが惚れたのも分かる。クサイだけだ」

 

「ぐっ…おっ…」

 

ジワジワとダメージが蓄積して行く…

 

「帰ろう。おばあちゃんがお菓子を作ってくれたんだ。あ〜ちゃんはもう食べてるぞ」

 

「何かな〜⁇き〜ちゃん、マフィンがいいな〜‼︎」

 

「ん⁇」

 

三人が楽しそうに基地へ帰る中、一人の少女に目が行った

 

その少女は防波堤で足を降ろし、小さなお弁当箱を開けて、中身を口にしている

 

ただ、あまりにも身なりがボロボロだった

 

服は至る所が破れ、髪の毛はボサボサ

 

この近辺でこの様な子を見かけたのは初めてだ

 

「磯風。二人連れて先に戻ってろ」

 

「うぬ」

 

磯風に二人を任せ、その少女に近付く

 

「お弁当食べてるのか⁇」

 

「うん」

 

少女の前で膝を曲げ、顔を見てみた

 

ぎこちない手つきでお箸を持ちながら、真っ赤なお弁当の中身を食べている少女は、かなり虚ろな目をしている

 

よく見るとお弁当箱の中身は、底に薄っすらと白ご飯が敷かれているだけで、オカズの類いは一切無かった

 

「そんなんで足りるのか⁇」

 

「”おじさん”はパチンコで忙しいし、”おばさん”は男の人と出掛けてるから、残ってるご飯、少しずつ食べてるの」

 

どうやら少し訳ありみたいだ

 

「学校はどうした⁇この時間は学校だろ⁇」

 

「先生にね”臭いから学校に来るな”って言われた」

 

「なんちゅう先生だ…」

 

「お兄さんは、あの基地の人⁇」

 

「そっ。おじさんとおばさんは何時に帰って来るんだ⁇」

 

「分かんない…もうずっと帰って来てない」

 

少女はそれに慣れているのか、俺と話しながら粗末なお弁当をパクパク食べ続けている

 

「お、お父さんとお母さんは⁇」

 

「いない。”なな”が赤ちゃんの時に、事故で死んじゃった」

 

マズイ事を聞いてしまった…

 

「ななって言うのか⁇」

 

「うん」

 

「よしっ‼︎ご飯に行くか‼︎」

 

「お父さんとお母さんが、知らない人に着いて行っちゃダメって言ってた」

 

「お風呂入りたくないか⁇」

 

「お風呂…」

 

「美味しいオヤツ、食べたくないか⁇」

 

「オヤツ…」

 

こうしてドンドン行きたくなる様に仕向けて行くのは誘拐犯の常套句だと聞くが、今はそれどころでは無い

 

「ななが帰りたくなれば帰ればいい。でも、お家に帰ってもご飯食べられないし、誰も居ないんだろ⁇」

 

「うん」

 

「なら来い」

 

「うん」

 

ななはお弁当箱をきんちゃくに仕舞い、俺と基地に向かって歩き始めた

 

「まずはお風呂だな。一人で入れるか⁇」

 

「うん」

 

大浴場の前に着き、ななの目を見る

 

口を半開きにして、色々な物を見て驚いている

 

「初月‼︎」

 

「はっ‼︎ここに‼︎」

 

初月が天井から降りて来た

 

「この子をピカピカにしてくれるか⁇」

 

「任せろ‼︎」

 

「二人共、後で間宮に行こうな⁇」

 

「まみや⁇」

 

「楽しみにしておけ。大尉が良い所に連れて行ってくれるぞ」

 

「うん」

 

ななはさっきから”うん”しか言わない

 

余程過酷な環境を生きて来たのか、大人には逆らえない様になってしまっている様子だ

 

ななと初月を大浴場に送り、俺はななの着替えを探し始めた

 

「お父様‼︎」

 

タイミング良く清霜が来た

 

「あの子だぁれ⁇」

 

「お腹空いてるみたいだから、ここに連れて来たんだ。そうだ清霜‼︎お父さんとお服買いに行かないか⁇」

 

「行くっ‼︎」

 

清霜と手を繋ぎ、ちょっと早足でいつもの雑貨店を目指す

 

「いらっしゃいませ〜」

 

「子供服見に来たんだ。奥だったな」

 

「真っ直ぐ行って右側です」

 

店員と挨拶を交わし、子供服を見る

 

ななは清霜と同じ位の背格好だ

 

清霜に合わせれば、大体は合うだろう

 

「さっきの子、どんな服が似合うと思う⁇」

 

「う〜ん…これはどう⁉︎」

 

清霜が指差したのは、セーラー服の様な服

 

確かにこれなら合いそうだ

 

「それとあの子、髪の毛で目が隠れてたから、これも似合うと思う‼︎」

 

清霜が持って来たのは、白いカチューシャ

 

「シャツとパンツは適当でいいな。清霜は何がいい⁇」

 

「ん〜と…コレがいい‼︎」

 

清霜の目線の先には、ウサギのポーチがある

 

「これでいいか⁇」

 

「うんっ‼︎お父様ありがとう‼︎」

 

「これ下さい」

 

店員に品を持って行くと、着替え一式ですぐに気付かれた

 

「新しい子ですか⁇」

 

「まぁ、そんな所だ」

 

「なら、2500円にまけておきます」

 

「すまんな」

 

品物を袋に入れて貰い、レジ越しに清霜に渡して貰う

 

「また来るよ」

 

「ありがとうございました〜。清霜ちゃん、ばいば〜い」

 

「ばいば〜い‼︎」

 

雑貨店を出て、また早足で大浴場に戻る

 

「清霜も間宮行くぞ」

 

「いいの⁉︎」

 

「お母さんとお姉ちゃんには内緒だぞ⁇」

 

「うんっ‼︎」

 

「これを初月に渡して来てくれないか⁇」

 

「分かった‼︎」

 

清霜がいて助かった

 

男の俺じゃ、脱衣所にさえ入れないからな

 

しばらくすると、三人共戻って来た

 

清霜はそのまま中で初月と共にななの着替えを手伝ってくれた様だ

 

「お〜お〜‼︎綺麗になった‼︎」

 

ななは見違える様に綺麗になって戻って来た

 

髪は艶を取り戻し、黒く汚れていた肌も白さを取り戻していた

 

「このお洋服…」

 

「ななにあげる。さっ、間宮行くぞ‼︎」

 

「行こっ‼︎」

 

「うん」

 

清霜に連れられ、ななは少しだけ微笑んだ

 

「大尉」

 

「なんだ⁇」

 

「あのななと言う子。随分と衰弱している。もう何日も栄養を摂っていないみたいだ」

 

「初月的にはどう思う⁇」

 

「一人二人増えた所で変わりは無いと思う。ここなら学校もあるし、教育も受けさせられる」

 

初月は勘の鋭い子だ

 

昼間っからここに居た時点で気付いていたみたいだ

 

清霜とななに少し遅れて間宮に着いた

 

清霜はななと手を繋ぎ、ちゃんと間宮の前で待っていた

 

「レストラン⁇」

 

「そっ。色々あるから、好きなモン食えよ⁇」

 

「うん」

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