艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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167話 真っ赤なお弁当(2)

席に座ると、清霜の注文する料理は既に決まっている様に見えた

 

「ホントに何でもいいの⁇」

 

「あぁ、いいぞ」

 

「僕はドリアにしても良いか⁇」

 

「んっ」

 

「じゃあ、ななコレにする」

 

なながメニューを指差す

 

そこそこボリュームのあるお子様ランチだ

 

「オッケー。間宮‼︎」

 

「はいっ」

 

間宮はすぐに此方に来てくれた

 

「チキンドリアとお子様ランチ二つ。んで、え〜と…」

 

「生にしますか⁇」

 

「そうだな。生とアイスコーヒーで‼︎」

 

「畏まりました‼︎」

 

間宮が厨房に向かい、ななを見る

 

ななは急に何かが気になったのか、俺の目を見た瞬間下を向いてしまった

 

「なな」

 

「はい」

 

「そんなクソみたいな先生が居る学校なんかサボッちまえ‼︎」

 

「うん」

 

「言っとくがな、なな。俺は中学はおろか、小学校も行った事がない」

 

「ホント⁇」

 

「あぁ」

 

「お父様、学校行ってないの⁉︎」

 

「本当か⁉︎」

 

ななに言ったのに、清霜と初月の方が驚いている

 

「マジだ。だから言語がたまに弱いだろ⁇」

 

「お待たせしました〜」

 

それぞれの料理が目の前に置かれて行く

 

「いただきま〜す‼︎」

 

「いただくぞ」

 

「いっただっきま〜す‼︎」

 

「…」

 

三人が食べるのを見て、ななは数回瞬きした後、小さく手を合わせてから、お子様ランチを口にし始めた

 

ななは一口お子様ランチを食べた後、何かに気付いたかの様に次々と口に入れ始めた

 

「おいしぃ〜なぁ〜‼︎」

 

口の周りにいっぱいチキンライスを付けながら、ようやくにこやかに笑ってくれた

 

「なな。お前さえ良ければ、明日からここの学校に通うか⁇」

 

「ここの学校⁇」

 

「そっ。ここの学校なら優しい先生がいっぱいいるし、給食も美味しい。どうだ⁇」

 

「行きたい‼︎」

 

「手続きなら俺が済ませてやるから、心配するな」

 

「ありがとう、お兄さん‼︎」

 

「なら決定だ。明日から通える様にしておくから、明日の朝、さっき入って来た門の前に来い」

 

「…うんっ‼︎」

 

その時、ななは一瞬渋った

 

その理由は、次の日明らかになった…

 

 

 

間宮を出て、ななを門まで送る

 

「お兄さん、清霜ちゃん、初月さん、ありがとうございました」

 

「また明日な⁇」

 

「…うん」

 

やはり渋る

 

帰る道中、何度も何度も此方を振り返る

 

だが、家には帰らねばならない

 

まだ虐待と決まった訳じゃないからな…

 

 

 

 

次の日…

 

「おはようございます‼︎」

 

「おっ⁉︎ちゃんと来たな⁉︎行こうか‼︎」

 

ななを連れて、学校へと向かう

 

「マーカスサン、オハヨウゴザイマス‼︎」

 

「んっ、おはよう‼︎」

 

「…」

 

頭に鞄を乗せた駆逐の深海の子を見た瞬間、ななは俺の背後に隠れた

 

「…」

 

「マーカスサンノオトモダチ⁉︎」

 

「そっ。ななって言うんだ」

 

ななは俺のズボンをガッチリ握り締めて離さない

 

「怖くないぞなな。みんな友達だ」

 

「ヨロシクネ、ナナチャン‼︎」

 

「…噛まない⁇」

 

「噛まないなっ⁇」

 

「カマナイ‼︎ヤクソクスル‼︎」

 

深海駆逐の子はその場で待ってくれている

 

どうやらななに触れて欲しい様だ

 

「触ってご覧…」

 

「うん…」

 

ななの手をそっと握り、ゆっくりと深海駆逐の子の頭に置く

 

「ウヒヒ…」

 

「わぁ〜…ツルツルしてる」

 

ななの恐怖はすぐに消えた

 

深海駆逐の子はななが撫でてくれる手を嬉しそうに堪能している

 

「テレビとかで見て、ずっと怖いものと思ってた…」

 

「外見で判断しちゃいけないぞ⁇中にはこうして、人と仲良くなろうとしてくれる深海の子だっている」

 

「うんっ…お名前は⁇」

 

「イーサン‼︎」

 

ななは此方を向いた

 

そう言えば、名前を教えていない

 

「俺はマーカス・スティングレイ。お兄さんでいいぞ⁇」

 

「お兄さん、行って来ます‼︎」

 

「行って来い‼︎」

 

「イコッ‼︎」

 

ななとイーサンは一緒に学校へと入って行った

 

「生な事する様になったな⁇」

 

背後に隊長が立っていた

 

「隊長‼︎」

 

「遊戯場行くぞ。ボウリングの腕見てやる」

 

隊長と共に遊戯場に行き、束の間の休息を取る

 

「そうか。ななって言うのか…」

 

ボウリングをやりながら、隊長にななの事を話した

 

「明らかなネグレクトだ。何とかしてやりたい」

 

「何か必要な事があったら言うんだぞ⁇何だったら基地に引っ張って来い‼︎」

 

「最終的にそうさせっかなぁ〜…」

 

そう言いながら投げたボールは、ガターへと吸い込まれて行った…

 

 

 

 

夕方になると、ななが帰って来た

 

「ただいま‼︎」

 

「どうだった⁇」

 

「楽しかった‼︎」

 

どうやら楽しめたみたいだ

 

帰りにななと駄菓子屋に寄り、数個の駄菓子を食べ、また門へと送る

 

「明日も来てくれるか⁇」

 

「うんっ‼︎」

 

昨日より覇気のある返事をしたななを見送る

 

そしてななはまた、何度も何度も此方を振り返る…

 

その度に、胸の奥がチクリと痛む

 

 

 

 

 

次の日も、そのまた次の日も、ななはちゃんと学校に来てくれた

 

帰りにジュースを飲んだり、数十分だけグリフォンに乗せて空を飛んでみたりもした

 

「ありがとうございました‼︎」

 

「また明日な⁇」

 

朝と夕方、ななを見送るのが日課になって来た

 

昼間は基地や横須賀で工廠で艤装を開発したり、哨戒任務や訓練に当たる

 

夕方になり、ななを見送ってから、基地に戻る日々が続いている

 

「ななちゃん、可愛い子だよね」

 

今日はきそと共に、何度も振り返るななに手を振る

 

「あ、レイ‼︎やっと見つけました‼︎」

 

息を切らした鹿島が来た

 

「どうした⁇」

 

「あの…ななちゃん…」

 

「とりあえず呼吸整えてよ。はい、お水」

 

「ありがとうございます…」

 

鹿島はきそに差し出された水を飲み、息を整える

 

「んで⁇なながどうした⁇」

 

「虐待の痕があります」

 

「何処にあった⁇」

 

「背中にヤイトの痕跡が数ヶ所、腹部や胸辺りに多数の痣があります」

 

「なんで気付かなかったんだ‼︎」

 

「ごめんなさい‼︎私の力不足です‼︎」

 

「あんなに傍に居たのに…クソッ‼︎」

 

「ごめんなさい、レイ…」

 

「…鹿島。多分レイは自分に悔やんでるんだよ」

 

きそが鹿島の耳元でつぶやく

 

「えっ⁇」

 

「鹿島を責めてなんてないよっ」

 

悔やんでも悔やみ切れない…

 

とにかく明日だ

 

明日、ななが来たらまずは検査をしよう

 

 

 

その日の夜…

 

「お兄…さん…きよしも…ちゃん…たすけて…」

 

ななは必死で歩いていた

 

ボロボロの体で、足を引き摺りながら横須賀基地を目指す

 

この日の夜、ななは保護者の男性と女性に暴行を受けていた

 

虐待の中でななは思い切り腹を踏み付けられたり、後頭部を殴打されていた

 

ななは、もうほとんど見えない目で横須賀を目指していた

 

「お兄…さん…」

 

「お、おい‼︎ゲートを開けろ‼︎」

 

ゲート付近に備えられた櫓の中から警備にあたっていた兵士が門を開ける様に指示する

 

その日、俺はたまたま横須賀に残っており、アレンと少しだけ飲んでいた

 

「大尉‼︎マーカス大尉はいらっしゃいますか⁉︎」

 

「何だ⁉︎」

 

息を切らした男性が鳳翔に入店して来た

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