艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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167話 真っ赤なお弁当(5)

数時間後…

 

「帰れ帰れ〜」

 

記憶を抜かれ、ボーッとした状態の三人を基地の外へ叩き出す

 

「どうなるか見ものだなぁ⁇」

 

「俺も鬼じゃない。真っ当に働いていた時の記憶だけは残しておいてやった。その内気付くだろう」

 

三人を見送った後、一本の連絡が入る

 

《レイ、どうなった⁇》

 

通信の先はきそだ

 

「記憶を消して世に送り返した。まっ、心配は無いだろ」

 

《そっか…悪いニュースと良いニュースがあるんだけど…どっちから聞きたい⁇》

 

「悪いニュースからだな」

 

《これで僕はマッドサイエンティストだ》

 

「今更言うか⁇」

 

《酷いや‼︎》

 

通信の向こうから聞こえて来るきその声は、比較的明るい様に思えた

 

「良いニュースは⁇」

 

《施術、成功したよ‼︎今、体を再構築してる‼︎》

 

「ありがとう。すぐ行く」

 

通信を切り、アレンと健吾と共に医務室に向かう

 

「あ、来た来た‼︎」

 

医務室では、ちょっと肩で息をしているきそが待っていた

 

「疲れただろ⁇」

 

「うん…まぁね⁇お母さんがカプセルの前にいるから、一緒に見て来て」

 

きそはそのまま椅子にもたれかかり、目を閉じた

 

「横須賀」

 

「レイ、アレン。見て…」

 

横須賀に言われ、カプセルの中を見る

 

カプセルの中では、もうある程度の体が出来上がって来ている

 

「凄いわ…」

 

俺はあの時、きそにこう言った

 

”脳を取り出して、体を再構築してくれ”と

 

脳挫傷を起こしてはいたが、本当ならカプセルにさえ入れば何ら問題は無かった

 

だが、ななは途中で息を引き取ってしまった

 

カプセルはそこまで高性能じゃない

 

死人を蘇生する事は出来ない

 

だから、脳だけ何とか修復し、記憶から体を再構築させた

 

それはきそでさえ試した事がない大手術

 

深海の子は、潮の一件があるが、普通の人間では初めてであり、尚且つ深海棲艦より遥かに脆い

 

そんな中、きそはたった一人で成功させたのだ

 

疲れ果てて眠ってしまってもおかしくない

 

神経を擦り減らしながら作業を行ったのだろう…

 

「きそが言ってたわ。このタイマーがゼロになったら、ななちゃんはここから出て来るって」

 

カプセルの下部には

 

”71:23:23”

 

と、アナログのタイマーで表示されている

 

約72時間…3日後に、ななは生まれ変わる

 

「横須賀」

 

「当ててあげましょうか⁇」

 

「やってみろ‼︎」

 

「ななちゃんを私達の子供として迎えてくれないか⁇でしょ⁇」

 

「ご名答だ」

 

「いいわよ。一人二人増えた所で、騒がしいのは変わりないわ。子供達には私から説明しておくわ」

 

「慣れて来たら抱っこさせろよ⁇」

 

「俺も‼︎」

 

「分かったよ。振り回して悪かった」

 

「気にしないで下さい。あっ‼︎じゃあ、これで”あみ”の件とイーブンですね⁉︎」

 

「オメェは〜‼︎」

 

健吾の首に手を回し、空いている手でコメカミをグリグリする

 

「気にすんなって言っただろ〜⁇」

 

「ごめんなさい‼︎」

 

ようやく笑顔が戻る

 

「そうかそうか。健吾も遂に北上を呼び捨てかぁ‼︎」

 

「い、いやぁ…あはは…」

 

健吾ははぐらかすが、呼び捨てにしたのは事実である

 

健吾の顔を見ると、どうやら仲は良くなった様子だ

 

「さて、朝メシでも食いに行くか‼︎」

 

「僕も行く‼︎」

 

きそが飛び起きた

 

随分腹が減っていたみたいだ

 

「レイ、奢って‼︎」

 

「よしよし。朝メシだがっ、パーッと食いに行くか‼︎」

 

ようやく終わりを迎えたこの一件

 

既に外は明るくなり始めていた…

 

 

 

 

 

三日後…

 

少し前からカプセルの前で俺ときそ、そして横須賀が待機している

 

そして、アナログタイマーが全て0になった

 

「くぁ〜っ…‼︎」

 

カプセルの中から出て来た”少女”は、大きくアクビをする

 

「おはよう」

 

「おはようさん‼︎」

 

どうやら元の性格はかなり明るかった様だ

 

俺は生まれ変わった少女の前で屈み、目線を合わせる

 

「新しい人生だなっ‼︎」

 

「うんっ‼︎」

 

少女に白いカチューシャを渡す

 

少女はすぐにカチューシャを付け、俺に笑顔を見せた

 

少女は飲み込みが早かった

 

自分が一度死んでしまった事も、なんとなくだが理解している様だ

 

「君の新しい名前は”谷風”。これからは谷風って名前だよ⁇」

 

きそはいつも名前を付けるのが早いし上手い

 

そして、付けられたその名は、皆それぞれ似合っている

 

「谷風かぁ‼︎うんっ‼︎良い名前だね‼︎気に入ったよ‼︎」

 

「じゃあ、谷風で登録するわね‼︎」

 

横須賀は谷風の頭を撫でた後、谷風を登録する為に部屋を離れた

 

「谷風。今日からここで暮らす事になるが、もう心配しなくて良いからな⁇」

 

「イーサンにまた逢える⁇」

 

「逢える。約束する」

 

「よっしゃ‼︎谷風、やる気出て来た‼︎」

 

「その意気だっ」

 

谷風はまた学校に行きたいみたいだ

 

あそこならイジメも無く学校生活を送れる

 

何故イジメが無いと断言出来るかって⁇

 

イジメが起きれば、双方の仲に亀裂が生じる問題に発展する可能性も0じゃない

 

それにイジメをしたら、艦娘の子であろうが深海の子であろうが、空飛ぶ怖いオッサン集団に撃たれると普段から鹿島達教師が箔を付けているからだ

 

ちょっとインパクトが強い気もするが、イジメが起きなければそれで良いし、双方それで理解している

 

何にせよ、谷風が気に入ってくれて良かった…

 

 

 

 

 

 

駆逐艦”谷風”が横須賀で暮らし始めました‼︎




谷風…てやんでい艦娘

レイが保護した少女”なな”の生まれ変わり

外見はほぼ元の姿のままだが、目の色が変わっている

因みに目の色は黄色寄りのオレンジ

ななの時は暗い性格で大人には逆らえない性格だったが、生まれ変わった後は元々はそうだったのか、かなり明るい性格であり、口調に特徴がある

学校生活がお気に入りで、調理実習が楽しみ

赤いお弁当箱は谷風になっても大切な物で、今は学校に行く時やお出掛けする際の肩掛け鞄の中で、お菓子入れとして重宝している
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