今回のお話は、リクエストがあった、スパイトと貴子のちょっとしたお話です
そう言えば二人の母親のお話は書いていなかったので、二人が絡むお話を書くのは今回が初です
貴子と姫は一体どんな関係なのか⁉︎
「静かね…」
「そうね…」
子供達を寝かし終えた夜、基地の食堂には母が二人
片方は貴子
もう片方は私
今日はマーカスとウィリアムは横須賀に泊まっている
私と貴子は紅茶を飲みながら、束の間の休息に勤しむ
「いつもありがとうね、スパイト。ウィリアムを手伝ってくれて」
「こちらこそ。マーカスに愛情をありがとう、貴子っ」
私達二人は上手くやっているはず
でも、私は貴子を越えられない
貴子は私から見ても凄いと思う
私より一回り半程歳が下なのに、あれだけの子供達を一度に愛する事が出来る
私には到底真似出来ない
それを貴子は、さも普通にやってのける
ヒトミとイヨをマーカスの様に両肩に乗せたり
照月の食欲に付き合ったり
霞に料理を教えたり
れべとまくすの手品を見たり
自分の娘であるてぃーほうを一番に可愛がったりしない
私はどうしても、てぃーほうやヒトミとイヨを先にしてしまう
それに、マーカスだって…
「そうだスパイト。ちょっと聞いてくれる⁇」
貴子は一旦ティーカップを置き、私の目を見つめた
「どうしました⁇」
「この間、タウイタウイモールで、ウィリアムのお母さん…アクィラに会ったの」
「ちょっとバブリーなあの方ね」
「子供達と一緒に居たんだけど、アクィラ、どうも私の事を気に入らないみたいなの」
「貴子は良い嫁よ。気にする必要は無いわ」
「ん…そうなんだけど…ね⁇」
貴子を見る限り、言われたのは自分の事だけでは無さそうだ
「リベちゃんの事を言われて…ちょっとね⁇」
「Left⁇Right⁇」
「ライト…」
「Hook⁇Straight⁇」
「両方…」
「いい⁇貴子」
私もティーカップを置き、貴子を見つめる
「悪口を言う人間は、殴られる覚悟があるから言っているの。もしそれでゴタゴタになったとしても、原因を作ったのはAquilaの方よ」
「殴ったのは、ちょっとやり過ぎたかな…って」
「大丈夫。私は貴子の味方よ。子供達の前で悪口言うのはイケない事だわ。それで、Aquilaは⁇」
「えと…壁まで突き飛ばしたらノビちゃった…」
「Oh…」
貴子は腕力がハンパない
リンゴを片手で握り潰したり
握力だけでギョーザを作ったり
マーカスとウィリアムが読み終わった厚みのある週刊誌を容易く真っ二つにしたりと、尋常じゃない握力の持ち主だ
Aquilaが吹っ飛ぶのもおかしくない
「貴子。これを…」
貴子の前に、膝の上に置いてある箱からピンバッジを取り出す
「これは⁇」
「今、子供達の間で流行ってるんですって」
私が出したのは、単冠湾の榛名が舌を出し、アッカンベーのポーズをした姿を模した小さなピンバッジ
横須賀やタウイタウイモールで500円程度で売られている割には高性能な録音機だ
「申し訳無いと思いながら、貴子の事は先に聞かせて貰ったわ」
「たいほうね⁇」
「うふふっ‼︎御名答‼︎てぃーほうが持っていたのを貸して貰ったの。私は事実を知った上で、私は貴子の味方をするわ」
録音されていたのは、中々に酷い内容のAquilaの暴言だった
貴方をウィリアムの嫁と認めていないとか
リベは特殊な境遇の子なのに、よく他の子と同じ扱いを出来るだとか
そして、貴子がキレた理由に直結した暴言が
どうせたいほうは大きく育たない。所詮貴方の教育はそこまでだと言われていた
録音内容を聞く限り、この時点では貴子は苦笑いをしていた
そして、最後に貴子に言った言葉で、貴子はAquilaを吹っ飛ばした
ヒトミとイヨみたいな”化け物”とよく接していられるな…
キレて当然だと思う
よく殴ったと思うし、よく我慢したと思う
「あんな姑嫌っ‼︎スパイトが姑さんだったら良かったのに〜っ‼︎」
貴子は机に突っ伏して駄々をこねる
貴子は時々こうして、私に本音を言ってくれる
私も貴子の本音を聞けて嬉しい
「ふふっ。貴子にそう言われると、おばあちゃんになったのも悪くないと思いますっ」
「そっかぁ。スパイトはお母さんだし、おばあちゃんかぁ…」
「私が本当に強いて言うなら、マーカスの長女のアサシモ…もうちょっとゆっくりと歯を磨いて欲しいものです」
「あの子、歯ギザギザだからね」
「小さい頃のマーカスは、今のアサシモに良く似ています。私はあの頃、ほんの少ししかマーカスに接してあげられませんでしたが、記憶はちゃんと残っています」
「あんな感じだったのね…」
「貴子の小さい頃は、てぃーほうみたいな感じかしら⁇」
「ちょっとツリ目の所とか、ふとした瞬間、私に似てるなぁ〜とは思う」
「性格はウィリアム⁇」
「あの頑固さはウィリアム譲りね。ほら、たいほうって、一度決めたらやめないでしょ⁇」
「確かに…てぃーほうは一度決めたら諦めませんね」
てぃーほうはウィリアムに似て、頑固さも少し入っているが、てぃーほうの性格上、曲がった事が嫌いなのだと思う
それに、Aquilaの言った事は間違っている
てぃーほうはしっかり成長している
ヒトミとイヨの面倒だってちゃんと見るし、段々と覚えている事も増えて来ている
「さてとっ‼︎私も少し寝よっかな〜。色々聞いてくれてありがと」
「またお話しましょう⁇私、貴子と話すの好きなの」
「うんっ‼︎」
貴子の笑った顔は、てぃーほうに良く似ている
そう言えば、私はマーカスと似ている所はあるのかしら…
寝る前にちょっと行ってみましょう