次の日の朝…
お休みのマーカスは朝早くからヒトミとイヨを連れて横須賀に向かった
私は執務室で書類仕事を処理している
「うい〜んうい〜ん」
「ふふっ」
足元では、てぃーほうがお気に入りのMini Carで遊んでいる
「貴子」
「はいはい。どうしたの⁇」
「お袋ぶっ飛ばしたらしいな⁇」
「ママとパパだ」
てぃーほうが二人の声に反応し、私はメガネとペンを置いた
「てぃーほう。私、喉渇いたから、一緒に食堂でジュース飲みましょうか」
「うんっ‼︎」
てぃーほうを膝の上に乗せ、ちょっとだけ急いで食堂に向かう
「ごめんなさい…」
「ウィリアム。怒る相手が違うわ」
「姫…」
「てぃーほう。オレンジジュースをお願いしても良いかしら⁇」
「わかった‼︎」
てぃーほうが膝の上から降り、貴子の横に付く
「ウィリアム。貴方、貴子の旦那なら、貴子の味方をしてあげなさい」
「違うんだ姫‼︎貴子を責めてない‼︎」
「え⁇」
「お袋の事だ。どうせ思った事をポンポン言ったんだろ⁇」
「えぇ…」
「よくそれだけで我慢してくれたな…って言おうとしたんだ」
「それでも、手を挙げたのは良くないわ…」
「落ち込む必要は無い。お袋は一度痛い目に遭って分かるべきだ。知ってるか⁇親父が長門と再婚した時、お袋は親父を”あんな人”と言った。自分で分かってないんだよ」
貴子は下を向いて黙ったままでいる
「貴子は良くやってる。本当に有り難い」
「そうよ貴子。貴方は私よりウンと立派よ⁇」
「ありがとう…二人共…」
「もってきた‼︎」
「ありがとう、てぃーほう」
てぃーほうは私達の前にオレンジジュースを淹れたコップを置き、また私の膝の上に乗る
「たいほう。たいほうはアクィラおばあちゃん好きか⁇」
「す、すき…」
珍しくたいほうが吃る
「たいほうも嫌いか…」
「あのね、あくぃらおばあちゃん、たいほうはおっきくならないとか、ひとみといよのわるぐちいうの」
「たいほうの前で言ったのか⁉︎」
「うん。たいほうと、てるづきと、かすみもいた」
「はぁ〜…」
「ママはね、たいほうをかすみのところにおいて、あくぃらおばあちゃんをどっかにつれてってた」
たいほうの言葉を聞き、私とウィリアムは胸を撫で下ろした
貴子は子供達の見えない所で殴っていたのだ
「貴子。ありがとう」
「ううん…お母さんを殴った事実は変わらないわ…」
「貴子」
ウィリアムはずっと下を向いている貴子の頭を撫でた後、ギュッと抱き締めた
「お前は良い妻だ。ごめんな、辛い思いをさせて…」
「いいの。スパイトだって、貴方だって分かってくれたら。でも、殴った事は反省してる」
「それだけで充分さっ‼︎」
幸せそうな夫婦二人を見て、私も何だかリチャードが恋しくなる
「おかたづけしてくる‼︎ひめ、ありがとう‼︎」
「ふふっ、いつでもっ」
てぃーほうが膝の上から降り、もっと人肌恋しくなる
「ウィリアム。書類はある程度終わらせてあるわ」
「姫もありがとう」
「スパイト〜っ‼︎アッロハァ〜‼︎」
陽に焼けた肌にアロハシャツ、そしてサングラスを掛けた男性が私の名を呼ぶ
「い、いらっしゃいませ‼︎ウィリアム、私お茶淹れるわ‼︎」
「あ、ちょっ、貴子さん。気にしないで下さい‼︎急に来た私が悪い‼︎」
貴子とウィリアムが離れ、貴子は厨房、ウィリアムは男性を席に案内しようとした
私は男性に近付いた
「リチャード‼︎」
「スパイト‼︎」
来たのはリチャードだ
私は車椅子を引き、リチャードの懐に潜り込む
そして、拳をリチャードの顎に当てる
「ぐほぁっ‼︎」
「貴方って人は‼︎どうしていつもいつも空気が読めないの‼︎」
「ごめんなしゃい‼︎スパイトの好きなマカダミアナッツのチョコレート買って来たから‼︎ね⁉︎許して⁉︎」
「…」
机に大量のマカダミアナッツのチョコレートを置くリチャードを睨む
リチャードはいつもそう
間が悪いと言うか、空気が読めないと言うか…
とにかく、大体入って来るタイミングが最悪だ
「ほらスパイト‼︎これ買って来たから‼︎機嫌直してくれ‼︎」
リチャードが渡して来たのは、イルカのストラップ
「まぁ…‼︎可愛いわ。私にくれるの⁇」
リチャードは頷く
私はリチャードからそれを受け取り、すぐに大切な物を入れておく箱に入れた
因みにこの箱の中、貴子やマーカスの嫁が散々探していた、マーカスの二つ目の指環がケースごと入れてある
マーカスが”ここならバレないだろう”と言って、私に預けたのだ
皆が何処を探しても見つからないハズだ
「ウィリアムとレイはこれっ‼︎ジャジャン‼︎アロハシャツ‼︎」
ウィリアムには白いアロハシャツ
マーカスには赤いアロハシャツを買って来てくれた
「ありがとうございます」
「マーカスに言っておいてくれ。真夏に革ジャンは暑苦しいってな‼︎じゃっ‼︎」
「リチャード‼︎」
「はひっ‼︎」
「ここ」
私は自身の唇を指差した
「ロコモコ付いてたか⁉︎」
「もぅ‼︎」
リチャードの胸倉に手を伸ばし、此方に引き寄せ、唇を合わせる
「横須賀にマーカスがいるわ。夕ご飯までに帰る様に言っておいて。分かった⁇」
「分かったよ、ひ〜めっ‼︎いだっ‼︎」
頬をビンタし、リチャードを見送る
ありがとう、リチャード
ちょうど貴方が恋しかったの…