艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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176話 生贄の少女達(4)

「ひとみといよを預かります。しおいは単独での探索をお願いします」

 

「オッケー」

 

はっちゃんはお得意のソナーを使いながら、海底に沈んだ船の中から生体反応を探す

 

「微弱ですが、反応がありますねぇ…」

 

「はっしゃん。ここにいうお」

 

ひとみが一つの船を指差す

 

船に開いた穴から中に入り、ソナーを使う

 

「いました」

 

ひとみの言った通り、カプセルの中に女の子が眠っていた

 

「結構重いですから、皆で持ちますよ…せ〜のっ‼︎」

 

「んい〜っ‼︎」

 

「あぁれ〜‼︎」

 

三人でカプセルを持ち上げ、何とか船内から出る

 

「しおい。聞こえますか⁇生存者を一人確保したので一旦浮上します」

 

《オッケー‼︎こっちも見つけたから、後で手伝って‼︎》

 

「分かりました」

 

三人がカプセルを持ち上げ、海上に出るとタナトスが待機していた

 

「はっちゃん‼︎」

 

タナトスの艦上からマーカス様が手を振っている

 

「マーカス様‼︎」

 

はっちゃん達はカプセルをタナトスに引き渡した

 

「マーカス様。あと一つ生体反応があります。もう少々お待ち下さい」

 

「も〜ひとがんあり‼︎」

 

「いってくう‼︎」

 

「ありがとうな…」

 

マーカス様の申し訳無さそうな顔を見た後、今度はしおいを目指して潜る

 

しおいは既に艦内からカプセルを引き出してくれており、海底に置いてはっちゃん達を待っていた

 

「馬力足らなくて…」

 

「全員なら出来ます。さぁ‼︎」

 

四人がかりでカプセルを持ち上げ、再び海上に上がる

 

マーカス様にカプセルを渡し、はっちゃんとしおいとでもう一度海底の探索に向かう

 

…だが、幾度探せも一人の生体反応もない

 

何度も呼吸を繰り返しながら、数時間が経過する…

 

「あ…」

 

海中に浮遊していた誰かの千切れた腕が目の前に来た

 

…既に魚達が啄ばみ始めている

 

「しおい。これだけ探索したのに出てこないとなれば…」

 

「…分かった」

 

探索を切り上げ、タナトスに戻る事にした

 

タナトスに戻ると、すぐにマーカス様がはっちゃんとしおいをキツく抱き締めてくれた

 

「ありがとう…辛かっただろ⁇」

 

「大丈夫ですよ。はっちゃん、こう見えてビビリの耐性があります。しおいはビビってましたけどね」

 

「怖いモノはこわいもん‼︎」

 

「後は俺達に任せてくれ。何とかしてみる」

 

「しおい。タナトスのご飯は美味しいんですよ⁇」

 

「ホント〜⁇」

 

しおいははっちゃんに疑いを持ちつつ、二人でタナトスの艦内食堂に向かった

 

「さて…」

 

 

 

 

 

タナトスの医務室に戻ると、きそが慌ただしく動いていた

 

救い出されたカプセルは、現状3つ

 

はっちゃんやしおい達が引き上げたカプセルが2つ

 

そしてもう一つは、タナトスが一番最初に体当たりを当てた駆逐艦の中にいた少女が入ったカプセル

 

タナトスはあの後、小型の無人潜水艦を出し、カプセルだけを引き上げてくれていた

 

しかし、どれも予断を許さない状態

 

それでもきそは一人で三人分の命を救おうと、3つのカプセルの前を右往左往している

 

「レイ‼︎」

 

「助けられそうか⁇」

 

「ふふふ…僕を誰だと思ってるの⁇レイはあの空母の調査をお願い」

 

「分かった。頼んだぞ‼︎」

 

「任せて‼︎」

 

話す限り、きそは余裕そうだ

 

ここは任せて大丈夫だろう

 

俺はタナトスの後部格納庫に向かい、慌ただしく動く妖精達を前にしてタバコに火を点ける

 

「さてとっ…クランプ外せ‼︎」

 

”あいあいさー‼︎”

 

目の前で宙ぶらりんになっていた黄色い小型潜水艦が降りて来た

 

この潜水艦は、マンボウの形をしており、調査の為の潜水艦であり、攻撃力は皆無だが中々に防御力が高い

 

「ちょっと狭く造り過ぎたか…」

 

防水扉を開け、操縦席を覗く

 

有人艦の割には結構窮屈な造りだ

 

改良は必要だな…

 

「うきうきまいんら‼︎」

 

「ひとみものいたい‼︎」

 

内緒で造っていたのに、何故かひとみといよが知っており、目を輝かせている

 

「何で名前知ってるんだ⁇」

 

「よこしゅかのゆ〜いじょ〜にあた‼︎」

 

「まんぼ〜しゃん‼︎」

 

横須賀の遊技場に置いてあっただと⁉︎

 

今度見てみよう

 

「ちょっと行って来るから、はっちゃんの所にいるんだぞ‼︎」

 

「わかた‼︎」

 

「き〜つけてな〜‼︎」

 

二人に見送られ、防水扉を閉める

 

「よ〜し出発だ‼︎」

 

”うきうきマリン、発進や‼︎”

 

後部シャッターが開き、ゆっくりとうきうきマリンが着水する

 

目指すは大破し、座礁したあの空母だ

 

 

 

 

「デッケェモンだなぁ…」

 

近付くに連れて分かる、この空母の大きさ

 

ガンビアも大概デカイが、コイツはもっとデカイ

 

何処か入れそうな場所は…

 

「おっ」

 

恐らく榛名が開けたであろう、側面に出来た巨大な穴

 

そこから入ろう

 

うきうきマリンを停めてワイヤーで適当な場所に固定した後、防水扉を開けて、空母の中に入る

 

中には勿論人っ子ひとりいない

 

だが、手元のレーダーを見ると微弱ながらも反応が一つあった

 

しかも時刻は午後10時

 

オバケが出るかも知れない

 

懐中電灯で照らしながら、もう片方の手で生体反応を探るレーダー。そして口にはタバコを咥えている

 

タバコを吸う事でオバケが寄らないと聞いたからな…

 

反応に向かって歩いて行くにつれ、レーダーから発する音の間隔も短くなって行く

 

「この辺りか…」

 

レーダーが生体反応を示したのは機関室

 

もし居るとすればここの確率が高い

 

…しかし、何処を探しても見つからない

 

目ぼしい機材は全て見て回った

 

セイレーン・システムの複製ならば機関室に置くハズなのに…

 

オバケの恐怖と軽い疲労の為、何気無しに柱に背中を置き、もう一本のタバコに火を点けた

 

「…内は…煙だ…」

 

「ひっ…」

 

いきなり聞こえて来た声で肩が上がる

 

来たかオバケ…

 

「艦内は禁煙だ…」

 

「すっ、すすすすみましぇん‼︎」

 

ビビってタバコを床に捨て、すぐに踏んで消化する

 

「よし…良い子だ…」

 

「え…」

 

今の声…背後から聞こえて…

 

恐る恐る背後に振り返って見る…

 

「うひぃぃぃぃぃぃい‼︎ひぃぃぃぃぃぃぃい‼︎」

 

俺のすぐ背後に女の顔が浮かび上がっている‼︎

 

このまま白目を剥いて気絶してしまいたい‼︎

 

だが、何とか気力で乗り切る

 

今は救助中だ

 

気を取り直して柱と思っていた物を見ると、巨大だが見慣れたカプセルが見えた

 

「き、君がこの艦の中枢だな⁇」

 

「…」

 

どうやら気を失ったみたいだ

 

だが、このままでは巨大過ぎてタナトスに運べない

 

カプセルの中で気を失っている女性の顔を見ながら、どう運んで良いものか考える

 

「わっ‼︎」

 

「ひいっ…」

 

カプセルの中に居た女性は起きていた様で、いきなり目を見開いて驚かして来た

 

俺は見事気絶し、その場に倒れた

 

「情けない男だ…フンッ‼︎」

 

女性はいとも簡単にカプセルのガラスを割り、気絶した俺の首根っこを掴み、そのままズリズリと何処かに運んで行った…

 

 

 

 

「ぬはっ‼︎」

 

「起きましたか⁇」

 

気が付くとベッドに寝かされており、横にはっちゃんが居た

 

「オバケはどうなった⁉︎」

 

「オバケ…ですか⁇」

 

ベッドから起き上がると、ここがスカイラグーンと気付くまで時間は掛からなかった

 

「皆さん喫茶ルームにお集まりですよ。それと二人、お初のお方がいらっしゃいます」

 

「ありがとう」

 

「マーカス様」

 

喫茶ルームに行こうと立ち上がろうとすると、はっちゃんに座り直させられた

 

「ここなら誰も見ていませんっ…」

 

はっちゃんは約束のご褒美を受け取る

 

「…こんなので良いのか⁇」

 

「えぇ。はっちゃんも横須賀様と同じ事、してみたかったのです」

 

無言ではっちゃんの頭を撫で、二人で喫茶ルームに向かう

 

「おっ‼︎レイが起きたぞ‼︎」

 

「おかえり‼︎」

 

「ただいまっ‼︎」

 

隊長、アレン、そして榛名とニムが迎えてくれた

 

「オバケで気絶するとかなっさけねぇ野郎ダズル‼︎」

 

「うるせぇ‼︎怖いもんは怖いんだよ‼︎ひとみといよ達は⁇」

 

「みんな先にタナトスで帰って晩御飯食べてる。俺達も一杯やろう‼︎今日は特別だぞ‼︎」

 

隊長の前には豪華な料理とお酒が置かれている

 

「俺も祝って良いのか⁇」

 

「今日誕生日の子がいるんだよ」

 

隊長がそう言うと、皆が同じ人物を見る

 

「戦艦棲姫改め、戦艦リシュリューです‼︎」

 

「なるほど…それは祝わんといかんな‼︎」

 

「座れ座れ‼︎」

 

誕生日は誕生日で祝わねばならないな

 

「「「かんぱ〜い‼︎」」」

 

「かんぱ〜い‼︎」

 

グラスを持った手が一つ増えた

 

「え…」

 

背筋に悪寒が走る

 

「わっ‼︎」

 

「あ°っ‼︎」

 

空母の中に居たオバケがいる‼︎

 

「なっ、ななな何で‼︎」

 

「ははは‼︎レイ、その子はアーク・ロイヤルって名前だ」

 

「よろしく、ビビリさんっ‼︎」

 

「よ、よろしく…」

 

アーク・ロイヤルは高貴な外見とは違い、中々活発な性格の様だ

 

よく見ると、一昔前の横須賀の様な目をしている…

 

とりあえず、今はリシュリューの誕生日を祝ってやろう…

 

色々するのは明日でも良いな…

 

沈んだ船の中の生体反応も無い

 

救えるだけの子は、何とか救えたからな…

 

今はリシュリューの誕生日を祝ってやる事にしよう‼︎

 

 

 

 

戦艦リシュリュー及び、航空母艦アーク・ロイヤルが味方艦隊に加わります‼︎




リシュリュー…トリコロール娘

人を助けたいと思った戦艦棲姫の中から出て来た艦娘

火力が高いのに足も速い

榛名に助けられた為、榛名をとても尊敬している

嫌な予感がする…





アーク・ロイヤル…赤いオバケ

空母”アーク・ロイヤルbis”の中枢システムの中身

高貴な外見をしている割に人をビビらせたりする等、かなりのイタズラ好きであり、よく笑う快活な子

カプセルの外に出てからは、目に見えてビビるレイをおちょくるのが好き

オッパイ以外は、一昔前の横須賀に似ている





うきうきマリン1号2号…探査用小型潜水艦

タナトスに内蔵されている、マンボウの形をした黄色い小型潜水艦

横須賀の遊技場にある、ひとみといよが好きなゲームをモデルにしている

1号が有人艦であり、2号が無人艦

気付いた人もいるかも知れないが、一昔前に実際にゲームセンターにあったゲームがモデル

完全に余談になるが、モデルになったゲームは作者の思い出のゲームであり、ひとみといよがイルカ好きと言う案は、このゲームが無ければ生まれなかった
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