「ここは何だ⁇」
横須賀のいる執務室の前に立つと、アークは少したじろいだ
「子供達を紹介しておこうと思ってな」
「ビビリはケッコンしているのか…」
何故かアークは悲しそうな顔をした
執務室のドアを開け、中に入る
「あら‼︎来てたの⁉︎」
親潮と共に執務をしていた横須賀がすぐに俺達に気付き、椅子から立ち上がって此方に来た
「ん…」
アークは組んでいた腕に力を入れた
顔を見ると、ほんの少しだけ横須賀に敵意を見せている様に見えた
「基地の生活には慣れたかしら⁇」
「ちょっとだけな」
「お父様だ‼︎」
清霜も来た
前回の一件を反省しているのか、清霜は俺の前に来る寸前でスピードを緩め、足に抱き着いた
アークに組まれている反対の腕で清霜の頭を撫でる
清霜の頭を撫でていると、アークは気付かれない程度に自分の方に俺を引っ張って来た
「お父様、その方は⁇」
「この人はアークロイヤルさんだ」
「アークでいいぞ」
「アークさん‼︎お父様を宜しくお願いします‼︎」
清霜がアークに頭を下げる
「マーカスと違って礼儀正しい子だな‼︎気に入った‼︎」
「創造主様」
「おっ‼︎どうだ親潮。横須賀はワガママ言ってないか⁇」
「大丈夫です。親潮、ジェミニ様から学ぶ事は沢山あります」
「どれっ。一つ二つ聞かせて貰おうか⁇」
「創造主様…」
親潮が横須賀の顔を見ながら話を渋るので、膝を曲げてみた
すると、親潮は俺の耳元で横須賀から学んだ事を教えてくれた
「フタに付いているヨーグルトやプリンの食べ方や、アメリカンドックのカリカリ部分の食べ方を教わりました」
どうやら横須賀は素晴らしき無駄知識ばかりを親潮に叩き込んでいる様子だ
「親潮は楽しいと感じてるか⁇」
「ジェミニ様や創造主様…そして創造主様の御子息様達と過ごす時はいつだって楽しいです‼︎」
「なら問題無い‼︎」
「どっ⁇ちゃんと教えてるでしょっ⁇」
横須賀はドーンと胸を張る
その姿を見て、二人の少女を思い浮かべる
あぁ、ひとみといよは横須賀のマネをしているんだな…
こぁ〜〜〜〜〜っ‼︎とか
きいたげう‼︎何々したげう‼︎という時の仕草とか
二人は横須賀のマネをする事が多い
「朝霜達はどうした⁇」
「朝霜は工廠、磯風は朝霜の艤装の試験運用、ガングートはお昼寝、ななは同級生の子と遊びに行ったわ⁇」
「き〜ちゃんはお母様のお手伝いしてるの‼︎」
「そっかそっか‼︎偉いな‼︎」
「…」
清霜の頭を撫でていると、親潮がこっちを見ているのに気が付いた
「親潮、ありがとうな⁇」
「はいっ‼︎」
「むっ…」
親潮の頭を撫で終わった途端、アークに手首を取られた
「アークも撫でろ‼︎アークも良い子ちゃんにしてるだろうが‼︎」
アークは俺の手を何としてでも自分の頭の上に置こうとしている
「分かった分かった‼︎アークも良い子だな‼︎」
「ふふふ…」
アークの頭も撫でるとようやく落ち着いてくれた
「もうちょいアークに基地を案内して来る」
「レイ。一つお願いがあるんだけど」
「なんだ⁇」
横須賀に言われた場所に来た
「てやんでぃや‼︎」
その場所に近付くにつれ、威勢の良い声が聞こえて来た
「ここだな」
「ラーメン=テヤンディ…」
嫌な予感しかしない…
声の主は屋台の中におり、俺とアークは暖簾を分けた
「いらっしゃいてやんでぃ‼︎空いてるてやんでぃに座ってやんでぃ‼︎」
屋台の店主は、青みがかった髪の女の子
てやんでぃてやんでぃうるさいが、笑顔は良い
「マーカス。テヤンディとはなんだ⁇今日は特別な日か⁇」
「そのディじゃない。べらんめぃ‼︎と、一緒の言葉だ」
「なるほど…要は馬鹿野郎をマイルドにしたのだな‼︎」
「今のでよく分かったな⁇」
「何にするてやんでぃ⁇」
「どれっ…」
てやんでぃちゃんからメニューを貰う
”てやんでぃラーメン
380円
味は保証するでぃ‼︎”
このメニューしかない
「じゃあこの…」
「てやんでぃ‼︎てやんでぃを一丁だな‼︎」
「あ…アークもテヤンディにしよう、か…な⁇」
「てやんでぃ二丁入りや〜す‼︎てやんでぃ‼︎がってんでぃ‼︎」
自分に注文をして、自分で注文を受けている
「てやんでぃてやんでぃ‼︎」
「はやっ‼︎」
ラーメンはすぐに出て来た
しかも美味しそうだ
「ん⁇」
アークが何かに気付く
「”オハチ”がない‼︎マーカス、アークにそれを寄越せ‼︎」
「おはちだぁ⁉︎」
「オハチはオハチだ‼︎日本人はオハチを使って食事をするのだろう⁇」
「箸の事か⁉︎」
「そうだ。オハチが無ければ食べられない」
「アーク。これはお箸だ」
「オハチだ‼︎」
箸一つで顔を見合う
アークも母さんも、時々日本語のイントネーションが可笑しい
アークのオハチよろしく、母さんは子供達をてぃーほう、れべ、まくすと言っている
…嫌な所遺伝したな、俺
「てやんでぃ‼︎箸の一本で喧嘩するんでねぇ‼︎てやんでぃすっぞ‼︎てやんでぃが悪いんだからてやんでぃと言ってくれればいい‼︎ほいっ‼︎」
てやんでぃちゃんからアークに”オハチ”が渡される
「ありがとう…」
箸を貰った後、アークはちゃんと手を合わせた後、俺の方を見た
「味は中々だな」
「マーカス。これはウドンとは違うのか⁇何か細いぞ⁇」
「これはラーメンだ。ウドンと同じ食べ方でいい」
「ほ〜…」
俺が食べるのを見て、アークはラーメンを口にする
「…美味しい‼︎」
濃いめの醤油ラーメンで、ちぢれ麺がスープに絡んで中々どうして美味しい
それに味もしつこくなく、見た目の割には後口はあっさりしている
「美味しかった‼︎」
「ごちそうさまっ‼︎」
「いいてやんでぃっぷりだ‼︎また来なよ⁉︎」
暖簾を再び分け、表に出て来た
「味は良かったな」
「そうだな」
屋台から出て、とりあえずアークの口周りを拭く
どうやって食べたらそんなに口周りが汚れ、ほっぺたにネギやらメンマの切れ端が付くのだろうか…
「ビビリはあれだな…」
「なんだ⁇」
口を拭きながらアークは口を開いた