艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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193話 命の権利(3)

大湊に着き、ガンビアを確認する為に基地の屋上から双眼鏡で確認する

 

「鎮座しておりますなぁ」

 

「鎮座しておりまする」

 

互いの双眼鏡の向こうに映る、目標であるガンビア

 

「ここで何をしている」

 

声がした後方に顔を向けると、岩井と違うもう一人のガンビアの艦長がいた

 

「ガンビアってデカイな〜って思って…」

 

「コイツに着艦方法を教えてたんです‼︎」

 

「大尉御二方でしたか‼︎不審人物かと‼︎」

 

「「不審人物はコイツだ‼︎」」

 

と、互いに指をさす

 

「ガンビアは良い艦です…今までの艦より、凄く…」

 

彼の名前はヴィンセント

 

厳つそうな顔付きをしてはいるが、話が分かる人間だ

 

そんなヴィンセントが、ほんの一瞬、悲しそうな顔を見せた

 

「そこまで艦長に言わせるんだ。ガンビアは良い艦だろうに。な、アレン」

 

「そうだな」

 

「ふふっ。いつでもいらして下さい。大した物はありませんが、軽食と飲み物はいつでもお出ししますよっ」

 

ヴィンセントが去り、レイも異変に気付いた

 

「ありゃ訳ありだな」

 

「セイレーン・システムと関係あるんじゃないか⁇」

 

「面倒な事にならなきゃ良いが…」

 

双眼鏡を仕舞い、屋上から降りた後、ガンビアへと向かう

 

顔見知り…特にレイの所にいる照月ちゃんのお陰で、ガンビアの艦内へは顔パスで行けた

 

ようやく止められたのは機関室の前の門番

 

「ようこそガンビアへ‼︎」

 

「昨日のシステムのチェックをしに来た。構わないか⁇」

 

「どうぞ‼︎お通り下さい‼︎」

 

難なく機関室に入り、カプセルの前に来る

 

「さ〜てとぉ⁇クラウディア。ガンビアのメインシステムに接続してくれ」

 

《畏まりました。ガンビア・ベイⅡ、メインシステム内に接続…》

 

「お前スゲェな…」

 

「友達の頼みだ。最後までやる」

 

そう言った、前を見つめるレイの目はとても澄んだ目をしていた

 

「大尉‼︎彼女に何を‼︎」

 

レイとクラウディアが電子機器を操作する中、一人の作業員が止めに入った

 

「システムを切り替えるのさ」

 

「待って下さい‼︎そんな事したら艦長が悲しみます‼︎」

 

「艦長が⁇」

 

「クラウディア。一旦作業を中断してくれ」

 

《畏まりました。メインシステムに接続して、作業を中断致します》

 

クラウディアが作業を中断し、レイはインカムを取り、作業員の方を向いた

 

「話を聞かせて貰おうか。どうも彼女とヴィンセントは訳ありみたいだしな」

 

「ヴィンセント艦長は、時々ここに来て彼女を見てるんです。どう言った関係かは分かりませんが…いつもとても悲しそうな顔をされています」

 

「そうか…」

 

「何をしている‼︎」

 

言ったしりから当人が来た

 

「彼女に触れるな‼︎」

 

「彼女をここから出す」

 

「下がってろ…」

 

俺は作業員を逃がし、レイとヴィンセントの睨み合いが続く…

 

「艦長。彼女とどういう関係だ⁇」

 

「言う必要は無い。とにかく、彼女から離れろ。これは命令だ‼︎」

 

「断る‼︎彼女にも生きる権利はある‼︎」

 

言い合いを続けるレイとヴィンセントだが、急に互いの声が止まる

 

「悪いが…ようやく出逢えたんだ。ここで引き剥がされる訳にはいかん」

 

ヴィンセントが銃を構えた

 

「撃てよ」

 

冷たい目をしながら、レイは銃口に体を近付ける

 

「頼む…彼女から離れてくれ…君を撃ちたくな…」

 

ヴィンセントか一瞬躊躇った瞬間、レイは銃を奪い、ヴィンセントに向け返した

 

「あ…」

 

「半端な思いで…」

 

喋りながらレイは銃を解体し、足元に銃弾を落として行く

 

「人を弾こうとするな」

 

たった数秒で銃はバラバラに解体され、ヴィンセントの足元に落とされた

 

「クラウディア。接続再開。彼女をここから出す」

 

《畏まりました。接続を再開します》

 

「大尉…」

 

「こっから出て、抱き締めてやりゃあ良い…」

 

「…」

 

ヴィンセントは敵わないと感じたのか、レイの背中を見続けている

 

「俺に出来る事は⁇」

 

「保護‼︎」

 

「よっしゃ分かった‼︎」

 

レイが快調に作業を続ける中、ヴィンセントからコツコツと音がした

 

爪を床に立てたり、時々擦り付ける様にして、音を立てている

 

「…」

 

《創造主様》

 

「分かってる…」

 

レイはヴィンセントの出す音に耳を傾けながら、作業を続ける

 

そして、レイも手元の空きスペースの上を指先でコツコツと突き始めた

 

それでも作業のスピードは緩めない

 

互いの指の音がやんで数分後、レイは立ち上がった

 

「G73。聞こえるか⁇」

 

《おはようございます。私はガンビア・ベイII、エンジンを起動します》

 

レイの言葉に反応したAIがガンビアを動かす

 

「おぉ…」

 

流石のヴィンセントも驚いている

 

「システム変更完了。よくやったな、クラウディア」

 

《お褒めに預かり光栄です》

 

「今度一緒に甘い物でも食べに行こうな⁇」

 

《はいっ‼︎お待ちしてます‼︎》

 

クラウディアとの通信が切れ、レイはインカムを外してヴィンセントに投げた

 

「ホラよ。後はアンタ次第だ」

 

「あ、あぁ…おとと‼︎」

 

《初めまして、ヴィンセント艦長》

 

インカムを受け取ったヴィンセントは早速G73の質問責めに合っている

 

「さ〜て、御対面だ…」

 

セイレーン・システムを必要としなくなったガンビアは、中から女の子を出す為にカプセルから溶液を抜いている

 

溶液が無くなった時、フタが開いて床に女の子出て来た

 

俺は女の子を受け止め、顔を見合わせた

 

「大丈夫か⁇」

 

「ア…ア…」

 

女の子はアレンの顔を見て何かを伝えようとしている

 

「が、ガンビア‼︎」

 

「…」

 

俺の腕から簡単に女の子が引き剥がれる

 

ヴィンセントの言葉を聞く限り、ガンビアと言う名前らしい

 

「逢いたかった…」

 

「…」

 

ガンビアもヴィンセントを抱き締め返している

 

「もう大丈夫だからな⁇ほら、これ着て」

 

素っ裸の状態でいたガンビアはヴィンセントから上着を被せて貰い、頭を撫でて貰った

 

「ガンビア。この人達と行くんだ」

 

「ア…」

 

ヴィンセントの話の最中に、ガンビアが俺の手を握って来た

 

「心配ない。アレンは信頼出来る奴だ。俺が保証する」

 

「ア…レ…ン…」

 

「そっ。アレン。よろしくな⁇」

 

ガンビアは首をほんの少しだけ縦に振り、握った手に力を入れた

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