「わ、分かった‼︎」
「がんばれむさし‼︎」
「ふっ…抜錨だ‼︎」
《二戦目、ドイツ艦隊対日本艦隊を始めます》
「はまかぜよ」
「爆雷とソナーは持ちました」
「今更言うのもなんだが…」
「どうしました⁉︎」
「…艤装を忘れた」
「ち、ちょっと‼︎どうするんですか‼︎」
「相手は重巡洋艦と潜水艦だ。はまかぜよ、とにかく潜水艦を頼むぞ」
「了解です」
「始め‼︎」
「えい」
開幕した直後に、潜水艦から魚雷が発射される
「回避‼︎」
「くっ…」
はまかぜに向けられ発射された魚雷は、持ち前の機動力で回避出来た
「深度…確認。炸裂深度…セットよし‼︎沈みなさいっ‼︎」
腰に巻き付けたカートリッジ式の爆雷発射装置が数発爆雷を吐き、海面を叩いた
「5…4…3…2…炸裂、今‼︎」
海面で巨大な水柱が上がる
数秒すると、白い肌にスパッツが特徴的な少女が浮かんで来た
「ちょっと…良くないです」
「U-511、戦闘不能‼︎」
これで残りは重巡洋艦だけだ
「潜水艦撃沈‼︎武蔵、今向かいます‼︎」
《どうした‼︎お前の力はそんなものか‼︎》
無線の向こうで武蔵が喋る合間合間に、何か鈍い音が聞こえる
「随分離れた…機関、全速前進‼︎」
嫌な予感がはまかぜの胸を過る
吹かしたエンジンが、何度も吠える
「どうした重巡洋艦‼︎もっとやれ‼︎ほら‼︎」
「も、もう…やめてくらさひ…」
「オラァ‼︎」
武蔵が誰かの頭を掴み、何度も殴打する
はまかぜが聞いていた鈍い音はこの音だ
「うぇぇえん‼︎あろみら〜るさぁ〜ん‼︎いらいよこあいよ‼︎うわぁぁあん‼︎」
「まだだ‼︎」
「武蔵‼︎」
「はまかぜか。潜水艦は⁇」
「撃沈判定が出ました。もう終わりましょう」
「ダメだ。こいつは許せぬ」
「何があったんです⁉︎」
数分前…
はまかぜが潜水艦を追い掛け回している最中、武蔵は重巡洋艦の前に立った
「名前は⁇」
「プリンツ・オイゲン。艤装はどうしたの⁇ムサシ」
「要らぬ」
「基地がビンボーなの⁇」
「重巡洋艦レベルの相手なら、艤装を省いた方が機動がいいからな」
「そう言うの、マンシンって言うんだよね⁉︎そんなのだからアドミラルが取られちゃうんだよ⁇」
プリンツが言い終わった瞬間には、武蔵の姿は無かった
「あれ…⁇」
「オリャア‼︎」
「ひっ‼︎」
突然後方に現れた武蔵の右フックで、プリンツの右舷兵装がへし折れた
「な、何⁉︎」
「どりゃあっ‼︎」
「キャァァァァア‼︎」
すぐさま左側に移動し、右脚で左舷の艤装を吹き飛ばす
「な…」
プリンツは息つく間も無く、主となる艤装を殆ど失った
残っているのは、腰の両脇に巻かれた魚雷発射管のみ
「魚雷なら…ファイ…‼︎」
「没収だ」
6発はあった魚雷が全て抜かれ、海に沈んで行く
「あ…あ…」
「…」
無言の武蔵の手には、先程抜き取った魚雷の内の一本が握られている
「ぎ、ギブア…」
恐らくギブアップと言おうとしたのだろうが、それを言う間も無く、代わりに鈍い音が響く
「がっ…‼︎」
鈍い音の正体は、武蔵が魚雷でプリンツの頭を叩き降ろした音だ
「立て」
「ひ…」
プリンツの胸倉を掴み、何度も殴打を繰り返す
「ご、ごめんなさ…ゴボッ…」
「私の事を馬鹿にした所で留めておくべきだったな」
開幕直後のプリンツの台詞に余程腹が立ったのか、はまかぜが来るまで殴打を繰り返した
「武蔵‼︎もうやめましょう‼︎歯も抜けてます‼︎」
「歯の二、三本では許さぬ」
「提督‼︎提督、応答して下さい‼︎」
《武蔵、もういい。作戦完了だ》
「ふん‼︎」
海面にプリンツが落ちる
「二度とその口を叩くな」
「は…はひ…」
「帰るぞ」
プリンツを置き去りにし、武蔵達は基地に帰投した
《ドイツ艦隊対日本艦隊演習が終了しました。勝利は日本艦隊です。演習はこれにて閉幕です》
「おかえり。武蔵、はまかぜ」
「ただいまです」
「…」
提督の前でもまだ武蔵は膨れている
「武蔵」
「ちょっと…やり過ぎた」
「スッキリしたか⁇」
「あ、あぁ…」
「そっか。なら良かった」
「怒らないのか⁇」
すると、提督は笑顔で答えた
「何で武蔵を止め無かったと思う⁇」
「何故だ⁇」
「戦いで必要なのは打撃力、そして状況判断だ。武蔵は艤装を忘れた状況で無傷で勝利を収めた。これに叱る所があるか⁇」
「いやしかし…」
「演習は安全を確保された上で行なわれる。現に見ろ。プリンツはピンピンしている」
「べ〜‼︎だ‼︎」
向こうの方でピンピンしたプリンツが赤い舌を見せている
「いけ好かない野郎だ‼︎もう一発…‼︎」
「ほらほら‼︎演習は終わりだ。ご飯にしよう‼︎な⁇」
「う…うぬ…」
「すぱげっちぃだよ‼︎」
「ふっ…分かった‼︎よし‼︎鱈腹食わせて頂こう‼︎」