艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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アークがとある人物に一目惚れ


196話 アークの子育て奮闘記(5)

「こう見えてアークはリョーサイケンボなんだぞ‼︎お料理も出来る‼︎洗濯も掃除も出来る‼︎夜戦だってある程度は心得ているぞ‼︎ははは‼︎」

 

私がそう言うと、ビビリは一瞬私の胸を見た後、お茶を飲みながら目を逸らした

 

「マーカスさんはどうする⁇ナンヨウハギにする⁇それともネオンテトラにする⁇」

 

「ナンヨウハギにする」

 

「ナンヨウハギ…」

 

ズィーカクの手元には、青い魚がいる

 

前に来た時もビビリは変な魚を食っていた

 

…いや、食わされているのか⁇

 

…美味しいのだろうか⁇

 

「アークさんはこっちよ‼︎」

 

ズィーカクが流してくれたのは、プリプリのエビ

 

「おぉ〜‼︎アーク、これ好きだ‼︎頂きます‼︎」

 

野菜系のオスシーも良いが、やはり魚介類も美味しい

 

「ど⁇マーカスさんもアークさんも美味しい⁇」

 

「美味い‼︎」

 

「ズィーカクのオスシーは美味しいな‼︎」

 

「ふふっ‼︎良かった‼︎」

 

「儲かってますかーっ‼︎」

 

リチャード殿が来た

 

そう言えば、リチャード殿はズィーカクとフリンしているらしい

 

「さっ、アーク。面倒な事になる前に行こうか‼︎」

 

「ごちそうさまズィーカク‼︎」

 

「親父にツケといてくれ‼︎」

 

私達は中将と入れ違いでズィーズィーズッコロバシから出た

 

 

 

 

「中将⁇息子さんがツケといてって‼︎」

 

「はっはっは‼︎安い口止め料だ‼︎」

 

「中将、ウナギの味見してくれない⁇」

 

「おぉ〜‼︎ウナギか‼︎」

 

今日もこの二人はご機嫌にウワキをしている…

 

 

 

 

「リチャード殿と話さなくて良いのか⁇」

 

「人の恋路を邪魔しちゃならん。よっこらせ‼︎」

 

ビビリと共に、広場の中心にある大きな木の下のベンチに座る

 

ビビリはタバコに火を点け、駆逐艦の子達を眺めている

 

「ビビリはいつからタバコ吸ってるんだ⁇」

 

「さぁな〜。気が付きゃ吸ってた。多分、兵器の開発やら、設計をし始めた頃だろうな」

 

「タナトスもビビリが造ったんだな」

 

「色んな人の力を借りたけどな…それに、姉妹艦を造った俺が沈めた」

 

「姉妹艦⁇二隻いたのか⁇」

 

「開発段階ではもう一隻の三隻居たんだ。最後の子は、開発段階で頓挫になった…今でもどっかに設計図位はあるんじゃないか⁇」

 

ビビリは自分が造ったり産み出したりした子や、航空機をモノ扱いしない

 

いつも”彼女”や”あの子、その子”と言う

 

「その子の名前は⁇」

 

「アルテミス」

 

「アルテミス⁇」

 

どっかの国の神の名だ

 

「アルテミス。その子は光学迷彩搭載の潜水艦で、狩猟の神の名に恥じない性能を持つハズだった…まっ、時代は彼女に追いつかなかったって訳だ」

 

「また造りたいと思うか⁇」

 

「まぁな…AI自体は完成していたんだ。それに、小型なら光学迷彩は可能にまではした。でもそれまでだ」

 

「そうか…」

 

淡々と話し、目を輝かせているビビリだが、その奥で、どこか悲しい目をしていた

 

ビビリも色々背負って生きているのだな…

 

「そう言えば、ビビリは神を信じてないのに、潜水艦には神の名を付けるのだな⁇タナトスとか、アルテミスとか…」

 

「さっ‼︎この話は終いだっ‼︎遊戯場行こう‼︎」

 

「ユーギジョー…」

 

ビビリは話を切り上げ、私を連れてユーギジョーに向かう

 

 

 

 

その頃基地では…

 

「じゃ〜ゔぃしゅ。こえあ〜んら⁇」

 

「ぴ〜ぷ〜」

 

きその膝の上にいるジャーヴィスの前に、ヒトミとイヨのお気に入りのイルカのぬいぐるみが出される

 

ジャーヴィスはイルカのぬいぐるみを欲しそうに手を伸ばしている

 

「らっこちてみう⁇」

 

「あいっ‼︎」

 

ヒトミとイヨからイルカのぬいぐるみを貸して貰い、ジャーヴィスは二つ共ギュッと抱き締めた

 

「これはイルカさんだよ⁇」

 

きその声に反応して顔を一瞬上げ、すぐにヒトミとイヨに顔を戻し、小さくイルカのぬいぐるみを振っている

 

その度にイルカのぬいぐるみはピープーピープー鳴る

 

どうやらジャーヴィスはその音が気に入った様で、何度も振る

 

「ヒトミ‼︎イヨ‼︎こっちにいらっしゃい‼︎」

 

「ひめしゃんら‼︎」

 

「いってくうお‼︎」

 

姫に呼ばれたヒトミとイヨは二人の前から去った

 

「ジャーヴィスは振ったら音がするオモチャが好きなんだね…ふふふ」

 

嬉しそうにイルカのぬいぐるみを振るジャーヴィスを抱っこするきそは何かを考えていた…

 

 

 

「空飛んだら命中率は高いのにコレはからっきしだな‼︎」

 

「うぬぐぐ…」

 

ビビリと共にユーギジョーに来た私達は、バスケットボールをゴールに入れて、高得点なら景品の引換券が貰えるゲームをしていた

 

制限時間内に30回入れれば引換券が貰えるのだが、私は50回

 

ビビリは12回

 

「ははははは‼︎どうしようもないな‼︎」

 

「アークに負けるとは…」

 

ビビリは膝から崩れ落ちている

 

「どれ。あのザラとか言う奴に渡せば良いのだな⁇」

 

「そっ。お菓子とか小ちゃい景品位なら貰えるだろ」

 

「ははは‼︎あ〜楽しかった‼︎」

 

私が先にザラの所に向かうと、ビビリはよっぽど悔しかったのか、最後の一球をまだ手にしている

 

「早く行くぞビビリ‼︎」

 

「分かったよ‼︎」

 

ビビリはゲーム台から少し離れた位置から後ろ向きでバスケットボールを投げて、ゴールに入れていた

 

「手を抜かれていた…だと⁇」

 

「手は抜いてないと思いますよ⁇マーカスさん、何でか分からないんですけど、後ろ向いて投げた方がよく入るんです」

 

「変な特性持ってるのだな…」

 

しかしこのザラとか言う娘、良い匂いがするな…

 

人工的な香水や化粧品の類いの匂いではなく、如何にもザラ独特‼︎の匂いだ

 

あぁ、あれか

 

このユーギジョー、男が固まって来るのか

 

子供達は子供達のコーナーがあって、パイロットや職員が遊ぶコーナーがあって、ザラは後者寄りにいる

 

男達が吸ったであろうタバコの匂いがする…

 

電子機器のモーターの匂いがする…

 

ふとした瞬間、男の汗の匂いがする…

 

でも何故だろう。私はどれも嫌いじゃない

 

そんな男臭さの中、ザラの甘いフレグランスが心地良く思える

 

「どうされましたか⁇」

 

「い、いや‼︎どれにしようかなと‼︎」

 

クソッ、何だこの気持ちは‼︎

 

ザラも私も女のハズなのに、ドンドンザラに惹かれて行く私がいる

 

軽く首を傾げるその仕草にさえ、何故だか分からない胸の高鳴りがする

 

「そっ、そのクッキーを貰おう‼︎」

 

「はいっ‼︎此方ですね‼︎」

 

笑顔で棚からクッキーの箱を取り、私に手渡すザラ

 

私は引換券をザラに渡す

 

「どうぞ〜」

 

引換券を渡した時、ザラの手から私の手に触れた

 

そして、何故かも分からずテンパってしまう

 

「はっ、はひっ…ありがとごじゃましゅ…」

 

「ふふっ‼︎レイさんも遂にお渡しになられたんですね⁇」

 

「はは…事情があってな。今日は特別なんだ。今日だけ、”マーカス様”は私の旦那なんだ」

 

「マーカス様⁇」

 

「あぁ‼︎いやいやビッ、ビビリだっ‼︎」

 

クソッ‼︎何故だ‼︎

 

何故ザラの前ではペースを崩されるのだ‼︎

 

「ザラ。コーラくれるか⁇」

 

「わっ、私も同じのを‼︎」

 

「少々お待ちを〜‼︎」

 

カウンターの向こうで、ザラのフリル付きのスカートが揺れる…

 

ウェーブのかかった髪先が揺れる…

 

冷静を保ったフリをし、口元で両手で杖をつきながら唾を飲む

 

「アーク」

 

「な、なんだビビリ」

 

ビビリが半笑いでコッチを見て来る

 

「何でもないっ」

 

ビビリはそのままの顔でタバコを取り出し、火を点けた

 

「言え‼︎私達は夫婦だろう‼︎夫婦に隠し事はナシだ‼︎」

 

「母さんに似てるなって思っただけさ」

 

「そうか。おそばに居たから、似て来るのは必然かもな」

 

「…鈍感な野郎だ」

 

ビビリだけには言われたくない

 

「そういや、ポーラは最近どうだ⁇」

 

「この前、スパイトさんとバーに行ってましたよ⁇スパイトさんに誘われる様になってから、息抜き程度に飲む様になって助かってるんです‼︎」

 

「なら良かった。母さんもたまには飲みたいだろうからな」

 

「おいビビリ。ポーラと姫は飲んでいるのか⁇」

 

「何だ⁇アークも飲みたいのか⁇」

 

「そうだな。アークも飲みたい」

 

「なら、夜は飲みに連れてってやるよ」

 

「飲み過ぎないで下さいよ⁇」

 

「どうせまた歌わされて楽器弾くから飲む暇なんざないだろうから大丈夫さ‼︎ごちそうさん‼︎」

 

「あ…」

 

いつの間にか互いにコーラを飲み干していた

 

「ごっ、ごちそうさま…また来ていいか⁇」

 

「えぇ‼︎勿論‼︎」

 

ザラ、気に入った

 

ビビリ並にホッとする

 

機会があったらまた来よう

 

 

 

 

 

「凄い綺麗な人だったなぁ…」

 

ザラはザラで、アークに憧れを持っていた

 

気品溢れる身嗜み

 

スラッとしたスリムなボディ

 

何をしても様になるその姿は、ザラの目にも焼き付いていた…

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