艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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198話 もう一人の愛娘(3)

《アクィラ。そこにいるのか》

 

「待ってて」

 

通信が入り、アクィラはモニターに出す

 

《アルテミスは何処だ》

 

「貴方達にあの子は渡さないわ」

 

《そうか。なら、此方にも考えがある》

 

通信が切れ、アクィラは俺の方に振り返った

 

「ごめんなさいで…済まないわよね」

 

「そうだな」

 

「あの子を返すわ…だから、あの子を護ってあげて⁇」

 

「マーマ、パーパ、おはなしおわった⁇」

 

るいちゃんが帰って来た

 

「るいちゃん‼︎」

 

アクィラの顔付きが変わり、るいちゃんに向かって叫んだ

 

「マーマー‼︎」

 

手回しがもう回って来た

 

男がるいちゃんを人質に取り、此方に銃を向けた

 

「え〜んえ〜ん‼︎マーマー‼︎パーパー‼︎」

 

「手を上げろ‼︎」

 

「断る」

 

銃声が響いた後すぐ、男の足に穴が開き、るいちゃんを離した

 

「タナトスまで走れ‼︎」

 

「るいちゃん‼︎」

 

「マーマ‼︎」

 

るいちゃんとアクィラが抱き合っているのを見た時、何故か敵わないと感じた

 

「レイ‼︎」

 

「助けに来たよ‼︎」

 

大淀博士が基地に繋げていたのだろう

 

隊長ときそが助けに来てくれた

 

「ウィリアム私…」

 

「話は聞いた。許されない行為だが、今はレイを信じる‼︎」

 

「レイ早く‼︎」

 

「俺はこいつで行く‼︎二人をタナトスに頼む‼︎」

 

「分かった‼︎スカイラグーンで待ってるからね‼︎」

 

きそと隊長がアクィラとるいちゃんを連れ出した

 

もう安心だな

 

電子機器を弄り、いざエンジンに点火しようとした時…

 

「よっ‼︎」

 

いきなり後頭部にガス缶が振り下ろされ、、咄嗟に振り返ってそれを止めた

 

「手こずらせやがって…」

 

ガス缶で殴られるのは流石に堪えるぞ…

 

男がもう一度ガス缶を振り上げた

 

「ひじゃちお〜らお‼︎」

 

「ひりゃちお〜ら‼︎」

 

「いでっ‼︎」

 

ガンッ‼︎

 

ゴンッ‼︎

 

と、男の膝が内側から砕ける音がした後、男は膝をついて倒れた

 

「ひとみ‼︎いよ‼︎」

 

魚雷をバットの様に持ったひとみといよが、何故かそこに居た

 

「ぶっこおいはしゃんといたう‼︎」

 

「まっと〜にいきうんあな‼︎」

 

「このガキ…」

 

男はすぐに立ち上がり、ひとみといよに掴み掛かろうとする

 

「ぶっこおいすうか⁇」

 

「いたいれ⁇しらんれ⁇」

 

「ほ〜え、ほ〜え…ここかあ〜っ⁇」

 

いよは男の鳩尾

 

「しぬれ⁇いたいれ⁇ろか〜んすうお⁇」

 

ひとみは男の眉間に魚雷の先端を置き、グリグリする

 

「ひとみ、いよ。ありがとう。そいつをグルグル巻きにして情報を聞き出す」

 

「くうくうあきにすう‼︎」

 

「ぐうぐうあきら‼︎」

 

ひとみといよにグルグル巻きにされた男は床に寝かされた後、暴れない様に二人が体の何処かに常に魚雷の先端を突き付けている

 

「いたい⁇」

 

「痛い…」

 

「たすかいたい⁇」

 

「助かりたい…」

 

「「だえだね‼︎」」

 

男は完全にひとみといよにおちょくられている

 

《レイ‼︎二人をタナトスに入れたよ‼︎》

 

「了解した。そのままスカイラグーンに向かってくれ‼︎」

 

《オッケー‼︎タナトスお願い‼︎》

 

タナトスが動き出し、アルテミスもエンジンの点火に入る

 

「あらっ‼︎可愛い子‼︎」

 

「大淀博士‼︎」

 

「お〜よろはかしぇ⁇」

 

「めがね」

 

「マーカス君一人じゃアルちゃん動かすのしんどいでしょ⁇大淀さんも手伝ったげる‼︎」

 

「助かる」

 

大淀博士が来てからすぐ、アルテミスはスムーズに出港した

 

「さ〜て‼︎尋問タ〜イム‼︎」

 

「おきお‼︎」

 

「はよ‼︎」

 

「わ、分かった…」

 

大淀博士の言葉に反応したひとみといよに蹴られながら起き上がり、男は椅子に座らされた

 

「よくもやってくれたな」

 

「上からの命令だったんだ…や、やめろ‼︎」

 

男の足元でひとみといよが何やらガサゴソしている

 

「あばえたらぶっこおいすうれ⁇」

 

「えいしゃんのほ〜むく‼︎」

 

「うぅ…」

 

男は嫌々俺の方を向いた

 

「誰の差し金だ。アクィラとお前のボスは誰だ」

 

「い…言ったら助けてくれるのか⁇」

 

「足元にいる俺の娘の気分による」

 

男はひとみといよの顔を見た

 

自分より遥かに小さい子にコテンパンにされた自分が情けなくなったのか、男は一呼吸置いた後、口を開いた

 

「…防衛省だ」

 

「国が何でアルテミスを欲しがる」

 

「誰だって欲しいさ。この潜水艦は高性能だ」

 

「俺は構想しただけだ。造ったのは別の奴だ。そいつは誰だ」

 

「アンタじゃないのか⁇」

 

「いや…」

 

「あ、ゴメンマーカス君。言うの忘れてた‼︎アルテミス造ったのアクィラちゃんとサラちゃん」

 

「アクィラとサラ⁉︎」

 

「そっ。マーカス君の為に二人で内緒で造ってたんだけど、先に国が目を付けちゃって」

 

「それに、私はアクィラとアルテミスを保護しろと聞いた」

 

「大淀博士。総理に電話を繋いでくれ」

 

「総理ね‼︎オッケー‼︎」

 

話が分からなくなって来たので、本元の更に上に聞いた方が早いだろう

 

《マーカスか⁇どうした⁇》

 

「総理。防衛省の連中に俺のAIを奪取しろと言ったか⁇」

 

《いや…そんな命令した覚えはない》

 

「防衛省の差し金が今ここにいるんだが、どうしたらいい⁇」

 

《ちょっと待ってろ‼︎防衛大臣を叩いて来てやる‼︎スカイラグーンに連れてけばいいか⁇》

 

「忙しくないのか⁇」

 

《はは‼︎なぁに‼︎友人の頼みは断れんよ‼︎こっちは任せなさい‼︎》

 

「頼んだ」

 

通信が切れ、男に顔を戻す

 

「アンタに銃を向けたのは謝る…不審人物かと…」

 

「俺は弾いたからな。イーブンだろ。足はどうだ⁇」

 

「そう言えば痛くない…」

 

「おくすいぬいぬいちたったれ‼︎」

 

「かんちゃせ〜お‼︎」

 

二人は男の足の被弾箇所に薬を塗ってくれていた

 

「ありがとう…良い子なんだな」

 

「自慢の娘さ。さっ、着くぞ」

 

「あうけ‼︎」

 

「分かったよ…」

 

呆れ半分で男はスカイラグーンに足を降ろした

 

皆が待っている喫茶ルームに入ると、アクィラが隊長にコテンパンに怒られてギャン泣きしていた

 

「絶対貴子とたいほうに謝れ‼︎分かったな‼︎」

 

「わ''がり''ま''じだぁぁぁ〜‼︎」

 

「うげ…あくぃあ…」

 

「こあい〜…」

 

男の足元にいたひとみといよは、取り敢えず男のズボンにしがみ付いた

 

人懐っこいひとみといよでさえ、アクィラは苦手の様だ

 

「大丈夫。アクィラは良い人だ」

 

「うそら‼︎」

 

「たかこしゃん、あくぃあぱんちちてたもん‼︎」

 

「マーガズぐん、ごべんなざい…」

 

涙と鼻水でドロッドロの顔面になったアクィラに謝られる

 

「防衛省の命令だったんだろ⁇」

 

「うん…」

 

「連れて来たぞ‼︎」

 

総理の傍らには、ボッコボコに殴られて顔がパンパンに膨れ上がった防衛大臣がいた

 

「秋津洲タクシーの中で全部ゲロった。本当に申し訳無い…」

 

「何故アルテミスを奪取した」

 

「く…国にょ防衛を上げりゅ為に…」

 

「国の防衛を上げる為なら盗みを働いても良いのか。ましてや自分の手を汚さずに…」

 

「おっひゃると〜りでふ…」

 

「マーカス。処分は君に任せる。因みに私は蒼龍送りが良いかと思う」

 

「キツ過ぎないか⁇」

 

「彼は幾度と無く部下に窃盗を依頼していたんだ。放っておいたらまたやる。それに、ちょっと個人的恨みもある」

 

「蒼龍送りだな」

 

「よし。歩け」

 

総理に連れられ、防衛大臣は出て行った

 

「あぁ、そうだマーカス‼︎」

 

「ん⁇」

 

「き…機会があったら、タナトスに乗って見たいんだが…」

 

「タナトスにか⁇」

 

急にデレた総理が面白くなった

 

「い、嫌なら良いんだ‼︎」

 

「ゴーヤ。総理を送ってやってくれないか⁇」

 

「お安い御用でち‼︎」

 

「今回の礼って事で良いなら、ゴーヤに着いて行ってくれ」

 

「マジで⁉︎やった‼︎行く行く‼︎オラとっとと歩け‼︎矢崎‼︎マーカスに失礼ない様にな‼︎」

 

「はっ‼︎」

 

意気揚々と総理が出て行った

 

「矢崎って言うのか」

 

「申し遅れました。私、総理補佐官の矢崎と申します」

 

「防衛省の差し金じゃないのか⁇」

 

「あはは…申し訳ございません。総理からは名を伏せていろと…」

 

「じゃあアンタは…」

 

「総理からの直属の命令で、アクィラとるいちゃんを保護する様に言われたのです。ただ、失礼ながらまさか貴方がマーカス様とは…とんだご無礼を」

 

「こっちこそ悪かった…総理って、もしかして軍事マニアか⁇」

 

「総理は潜水艦マニアなんです」

 

男の一言で、総理が潜水艦マニアだと知る

 

「そうなのか⁇」

 

「えぇ。執務室に潜水艦の模型を飾ってるくらいですから。それに、今回の件が潜水艦絡みだとアクィラさんが総理に申し出てくれて、私をここへ」

 

「…結構濃いな」

 

「…かなり」

 

「なかなおいちた⁇」

 

「もうえいしゃんたたかない⁇」

 

俺の足元にひとみ

 

矢崎の足元にいよが来た

 

「したよ‼︎この子はひとみ。そっちの子がいよだ」

 

「いよ‼︎」

 

「ひとみ‼︎」

 

「私は矢崎。君達強いんだね⁇」

 

「えいしゃんのむすめらもん‼︎」

 

「ひとみといよちゃんつおい‼︎」

 

ドーンと胸を張るひとみといよ

 

「アクィラさん。総理からの辞令が来ています」

 

「総理から…」

 

ようやく泣き止んだアクィラは、矢崎から辞令書を貰う

 

「たった今、防衛大臣の席が空いてしまったみたいで、代わりを探している所です。アクィラさんがよろしいならば、今しばらくお願いしたいとの事です」

 

「私が…」

 

「総理は艦娘と人間との隔てを無くすおつもりです。それに手を貸して欲しい、と」

 

「でも私…」

 

「マーマおえらいさんになるの⁇すごいすごい‼︎」

 

アクィラの隣でるいちゃんが喜んでいるのを見て、決心が付いたみたいだ

 

「謹んでお受けいたします」

 

「母さん。その内貴子の所に来いよ⁇ちゃんと説明しておくから」

 

「ちゃんと謝るわ…言っちゃイケナイ事、あの子に言っちゃったから…」

 

「行きましょう。これから忙しくなりますよ‼︎」

 

矢崎と共にアクィラも立ち上がった

 

「お騒がせ致しました」

 

「また後日お詫びに行きます」

 

「る…るいちゃん‼︎」

 

勿論るいちゃんもアクィラ達と行こうとした

 

「なぁに⁇」

 

「マーマは好きか⁇」

 

「うんっ‼︎マーマすき‼︎るいちゃんたすけてくれたの‼︎」

 

「そっか…」

 

「パーパ」

 

るいちゃんに手招きされ、耳を寄せた

 

「産んでくれて、ありがとう…お父様…」

 

耳元でハッキリとした言葉を放ち、るいちゃんは最後の”アルテミスさ”を出した

 

その言葉に、涙が零れた

 

「るいちゃんいくね‼︎パーパまたね‼︎」

 

「元気でなっ…」

 

子を手放すとはこう言う事か…

 

何も言えない、何も出来ない…

 

こんな虚無感に襲われるのか…

 

「元気出せっ」

 

「へっ…元気だよ‼︎」

 

隊長に頭を撫でられ、指で涙を払う

 

「今日は横須賀で飲むか‼︎」

 

「行く‼︎」

 

「僕達が貴子さんに言っとくよ‼︎」

 

「たまには二人で飲んで来なさいな‼︎」

 

「きょ〜はぷいんもあえう‼︎」

 

「こえたまった‼︎」

 

ひとみといよの手には、一面にスタンプを押して貰ったカードがあった

 

「レイ。もうちょっとグリフォン借りていいか⁇」

 

「擦らないでくれよ⁇」

 

「大丈夫だっ」

 

その後、子供達は秋津洲タクシーに乗り、隊長はグリフォンに乗り、俺と大淀博士はアルテミスに乗った

 

 

 

 

横須賀に向かうアルテミスの中で、俺は椅子に座って考え事をしていた

 

「マーカス君っ」

 

背中から大淀博士が抱き着いて来た

 

「アルテミスのデータを消してやってくれないか⁇」

 

「言うと思って消してありますぞ」

 

「そっか…」

 

「ね、マーカス君」

 

大淀博士が、俺の膝の上に対面状態で座る

 

「やめてくれ…嫁いるの知ってるだろ…」

 

そう言って顔を背けるが、すぐに引き戻された

 

「女で出来た傷は、女でしか埋められないの、マーカス君なら知ってるでしょ⁇」

 

「なら横須賀に埋めてもら…」

 

「はは〜ん⁇確かマーカス君は巨乳フェチだったにゃ〜っ⁇」

 

博士は胸が無い

 

ある事はあるのだが、俺からすれば無い

 

「胸が無くたって、出来る事はあるのっ‼︎」

 

………

 

……

 

 

居酒屋鳳翔にて…

 

「こっ酷くやられたな⁇」

 

「うぅ…頼む‼︎横須賀にはなにとぞ‼︎」

 

俺の顔中に付けられたキスマークの数々

 

あの後、俺は大淀博士からキスの猛攻撃を受けていた

 

隊長は俺の顔を見て、ずっと笑いを堪えている

 

「おっ酒お酒〜‼︎翔子ちゃ〜ん‼︎」

 

「あら貴方‼︎」

 

タナトスを返しに来た総理が来た

 

「うはははは‼︎マーカス‼︎なんだその顔‼︎」

 

「くっ…」

 

「ははははは‼︎」

 

総理が爆笑するのを見て、隊長も糸が切れた

 

「はぁ…はぁ…いやぁ、笑った笑った‼︎」

 

「しばらく言われるな…こりゃあ」

 

結局総理も交えた三人で酒を交わし、夜は更けて行った…




るいーじ・とれっり…ふにふにちゃん

タナトス型潜水艦3番艦として産まれるハズだったが、計画が頓挫した為、保管庫に眠っていたAI。元はアルテミと言う名前

自分の事を”るいちゃん”と呼び、まだまだ知能は足りなさそうに見えるが、そこが可愛い

アクィラとソフトクリームが好き

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