今回のお話は、新艦がまた一人出て来ます
果たして誰なのか…
「ん〜っ‼︎」
横須賀の広場でのびをする
春がもうそこまで来ているのか、風がほんのり暖かい
訓練するには絶好の日だ
「さてさて…」
朝からの訓練の為、滑走路に向かう
「お⁇」
いつも時間前には立って待っているサンダース隊の連中が、今日は座って何かを見ている
「いいかい⁇この機体は…」
震電の下に小さな黒板を立て、水色の服を羽織った少女が何かを教えている
「こらこら。ここは立ち入り禁止だぞ」
「わぁ‼︎」
少女の首根っこを掴み上げ、宙に上げる
「な、何するんだ‼︎ボクは先生なんだぞ‼︎」
少女はジタバタするが、まるで説得力が無い
こんな小学生くらいの子供が先生な訳無い
「離せよぉ‼︎子供扱いしないでよ‼︎」
「はいはい。あっちでジュース買ってやるからな〜」
「ホントに先生なんだってばぁ〜っ‼︎」
少女を滑走路から離れた場所に置き、小銭を渡した
「危ないからもう入って来るなよ⁇」
「わ〜い‼︎お金だぁ〜‼︎じゃなくて‼︎いらない‼︎ホントに先生なんだってば‼︎」
壮絶なノリツッコミの後、少女は小銭を突き返して来た
「何の先生だ⁇ん⁇」
「ボク、ロシアからの派遣将校なんだ‼︎」
「はは。冗談が上手い奴だ。じゃあな〜」
少女の頭を撫で、訓練へと戻る
「ちょ、ちょっと‼︎はぁ…」
少女はため息を吐いた後、トボトボとその辺を歩き始めた…
「よ〜し上出来だ‼︎降りたら飯にしよう‼︎」
昼前には訓練が終わり、滑走路に震電達とグリフォンが降り立つ
「大尉…」
「ん⁇」
サンダース隊の一人が指差す方向には、窓際に立ち、此方を見ているさっきの少女がいた
そして、俺の顔を見るなり驚いた顔をして、何処かに去って行った
「見てる分には良いだろ」
「あの子の話、妙に説得力があったんで結構面白かったんです‼︎」
「絵本でも見て学んだんだろ⁇飯行くぞ‼︎」
「はいっ‼︎」
サンダース隊の連中を連れ、ランチタイム中のずいずいずっころばしの暖簾を分ける
「やってるか⁇」
「いらっしゃいマーカスさん‼︎お好きな所にどうぞ〜‼︎」
テーブル席に座り、早速寿司を食べ始める
「そういや、お前らこれはどうなんだ⁇」
寿司を頬張りながら小指を立てる
サンダース隊は五人いる
一人くらいは付き合っている奴がいるかな⁇とは思っていたが、一人が大火力の爆弾をその場に落とした
一人目…
「自分はまだいませんが、本屋の店員さんが気になります」
妙高がタイプか
二人目…
「好きな子はいるんですが…」
「誰だ⁇」
「か…香取先生…」
その場から”おぉ〜”と声が上がる
三人目…
「雑貨屋の店員さんが気になります‼︎」
高雄がタイプか
四人目…
「自分は恥ずかしい話、全くなくて…」
「気にすんな。その内出来るさ‼︎」
「へへっ…はいっ‼︎」
そして、最後の五人目に全員が目を向ける
コイツがとんでもない爆弾を放り込んだ
「田舎に妻がいます‼︎」
全員がお茶を吹いたりシャリを吹き出した
「け、結婚してんのか⁉︎」
「はい‼︎ここに写真が…」
五人目の子は、内ポケットから写真を取り出し、皆の前に置いた
「妻の”大鯨”です」
「うわメッチャ美人じゃね〜か…」
「お前マジか‼︎」
「同い年なのに…」
全員がため息を吐くほどの美人が写真に写っていた
大鯨と言われた女性は、麦わら帽子を被り、スイカを胸に抱えて嬉しそうに微笑んでいる
「大鯨とは幼馴染なんです。自慢の嫁です」
「くっ…爆散しろぃ‼︎」
「そーだそーだ‼︎」
「何で言わなかった‼︎」
全員心で血涙を流すも、楽しそうに話している
「横須賀とは大違いだな‼︎ははは‼︎」
俺がそう言った時、サンダース隊の動きが固まった
「大違いで悪かったわね」
テーブルの真横で横須賀が仁王立ちして俺を睨んでいる
「はは…は…い、いやぁ〜‼︎横須賀って奴はあれだな‼︎オッパイもデカイし、包容力もあるよな⁉︎」
「その子だって胸デカいわ⁇」
「え、え〜と…そ、その〜…」
「元帥は子育てが本当にお上手です‼︎」
大鯨旦那がフォローに入り、全員が頷く
「そう‼︎それだ‼︎」
「それだけかしら」
横須賀の怒りは収まらない
「うっぐ…」
完全に追い込まれた俺は、テーブルの上にサンダース隊の頭を寄せた
「…助けてくれ」
「任せて下さい。元帥は褒め上手‼︎」
一人が頭を上げてそう言うと、続いて皆も頭を上げて横須賀を褒め始めた
「元帥は若い‼︎」
「元帥は怒らない‼︎」
「元帥は優しい‼︎」
「俺達みんな元帥が好き‼︎」
「ふふっ‼︎サンダース隊は良い子揃いね⁇レ〜イ⁇」
「は…はひ…とってもゆ〜しゅ〜でふ…」
「大尉…」
サンダース隊の一人が腕を突き出す
壁ドンしろとの合図だ
横須賀は壁ドンに弱い
その合図に小さく頷き、席を立ち上がって横須賀を壁に寄せた
「な…何よ…ひっ‼︎」
壁ドン、発動‼︎
「黙って俺に着いて来い…」
「あっ…」
顔が真っ赤になる横須賀を見て、サンダース隊がガッツポーズをする
「…うっさいわね‼︎アンタに着いてってるでしょ‼︎このバカ‼︎」
「ぬべら‼︎」
パチィーンと、横須賀のビンタが炸裂する
「私が壁ドンで落ちると思ったのが関の山よレイ‼︎」
「今度の休み、ひとみといよと買い物行くか⁇」
「い…行く…」
「じゃあ許して‼︎」
「ま…まぁ良いわ⁇て言うか、そんなに怒ってないわ⁇」
「そ、そっか…」
「それとね…さっきの壁ドンで、落ちてるわよ⁇じゃあね‼︎」
照れ臭さに負けたのか、横須賀はずいずいずっころばしから走り去った
「元帥乙女なんですよね」
「う〜ん…下手に悪口言えない…」
そんな乙女な横須賀の話をしながら寿司を食べる…
寿司を食べ終え、サンダース隊は全員宿舎に戻った
俺は広場に行き、ベンチに座ってようやっとタバコに火を点けた
「君‼︎やっと見つけた‼︎」
朝いた少女がこっちに走って来た
「まだいたのか⁉︎タバコ吸ってるから危ないぞ⁇」
「どうしたらあんな飛び方出来るんだ⁉︎」
少女の目を見るとキラキラしている
これは本気の目だ
「戦う為に飛ぶより、如何にして生き残るかが俺の飛び方なんだ」
「教科書にはあんな飛び方書いてないぞ⁇」
「実戦に出たら分かる。確かに教科書は基本動作や生き残る術を書いてくれてある。でも、それは実戦に出たらほとんど意味が無い。頼るのはっ…自分の腕と勘だ」
「はぇ〜…流石だね‼︎」
「サンダース隊の連中には、それを分かって欲しいんだ。殺す飛び方じゃなくて、生きる飛び方を…」
「ふむふむ…確かにサンダース隊の飛び方は生存率を高める為の回避訓練に重点を置いてるね⁇」
少女は腋に挟んでいた書類を見て、サンダース隊の特徴を見抜いた
「他の部隊の様に、満遍なく訓練してる訳じゃないの⁇」
「いや。攻撃訓練もしてるさ。それはなんだ⁇」
「あぁこれ⁇横須賀基地の飛行隊の記録さ‼︎ボクが纏めたんだよ‼︎」
ニコニコしながらバインダーに挟んだ書類を渡して来た
「よく調べたな…」
ここの基地の飛行隊の訓練内容を殆ど記録しており、どの部隊がどの訓練をしている等、事細かに書かれている
「良い趣味してるな⁇」
少女にバインダーを返すと、苦笑いしながら受け取った
「君はホンットに失礼だね⁇」
「まっ。また見に来いよ。悪い点があったら教えてくれ」
「ホント⁉︎」
タバコを携帯灰皿に入れ、少女の横から立ち上がった
「子供の言った事の方が正しいって事も、世の中にはあるんだよ‼︎じゃあな‼︎」
「ぐぐ…何て失礼な男だ‼︎」
最初からクソガキだと思っていたが、数日後、俺はちょっと後悔する事になる