艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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203話 ギャンブラーの仕返し(3)

夜9時…

 

「時間通りに来たのは褒めてあげましょう」

 

「この後は軍法会議だぞ」

 

「構いませんよ。さ、お座りに…」

 

薄暗い食堂の一席で、男二人の戦いが始まる

 

エドガーは珍しく咥え煙草をしながら、柄が全部”アイちゃんの顔”のトランプを切る

 

「もし不安なら、別のトランプをお使いになられますか⁇」

 

「構わん」

 

「そうですか…ポーカーはご存知で⁇」

 

「あぁ」

 

「ではポーカーで参りましょう…私はエドガー。貴方は⁇」

 

「高橋だ」

 

「それでは高橋、始めましょう。私、高橋…」

 

エドガーの手から、一枚、また一枚とトランプが配られて行く

 

「さぁ、どうぞ」

 

「二枚チェンジだ」

 

高橋は手札から二枚トランプを抜き、山札の上から二枚取る

 

「全部チェンジで」

 

エドガーは手札全てを捨て、山札から五枚引く

 

「さ。貴方の番ですよ」

 

「これで構わん」

 

「本当に良いのですか⁇」

 

「あぁ」

 

「後戻りは出来ませんよ⁇」

 

「構わん」

 

「では、手札をお見せ下さい」

 

「フルハウスだ」

 

「なるほど…良い手ですね…」

 

ダイヤの3のスリーカードと、ハートの2のワンペア

 

「手堅く、そして強い。まるで貴方の様です」

 

「貴様も早く見せたらどうだ」

 

「と…その前に。このゲームのベットをご存知で⁇」

 

「なんだ⁇金か⁇ハッ‼︎所詮は傭へ…」

 

机の隅がライトで照らされる

 

「言いましたよね。全財産だと」

 

「いつの間に‼︎」

 

高橋のクレジットカードがそこに置かれていた

 

「もし降参なさると言うのならば、降参後に簡単なお仕事を二つ申し上げます」

 

ダラダラと脂汗を流す高橋を前に、ラバウルさんは薄っすら目を開ける

 

「うぐ…」

 

「さぁ…全財産か、降参か…二者択一です」

 

「…降参だ」

 

その目と賭けられたものに怖気付いたのか、高橋は根を上げた

 

「ま。それも良いでしょう…」

 

「降参の条件とは何だ」

 

「簡単ですよ。貴方の横にいる子に、キチンと謝罪を申して下さい」

 

高橋の両サイドが照らされる

 

「ひっ‼︎いでで‼︎」

 

「おりゃおりゃおりゃおりゃ‼︎ひとみちゃんのさいこおかえしぇ‼︎」

 

「おりゃおりゃおりゃおりゃ‼︎」

 

ひとみといよは高橋のスネをポカポカ叩き始めた

 

「わ‼︎悪かった‼︎遊んでいただけだったんだな‼︎」

 

「さいこおしゃんかえしぇ‼︎おりゃ‼︎」

 

「いでっ‼︎」

 

「こえれもくあえ‼︎うりゃ‼︎」

 

「あだっ‼︎」

 

二人は最後に高橋の膝に可愛い正拳突きをし、机の下を通ってラバウルさんの足にピッタリ抱き着いた

 

「おあった‼︎」

 

「あたたたちた‼︎」

 

「良い子です」

 

「もう一つは何だ」

 

「此方が指定しますので、壊したサイコロより上級なサイコロを、この子達に返して上げて下さい」

 

「分かった…それ位なら構わん」

 

「では、これでお開きにしましょう」

 

勝負が終わったラバウルさんはそそくさとトランプを片付け始めた

 

「何でしょう⁇」

 

「あんたの手は何だったんだ」

 

「知りたいですか⁇」

 

「あぁ」

 

「ふふ…畏まりました」

 

ラバウルさんは自身の手札を高橋の前に置いた

 

「う…」

 

エース四枚とジョーカーのファイブカードが、高橋の目の前に置かれる

 

菱型のイヤリングを強調するアイちゃん

 

三つ葉のクローバーを咥え、ウインクするアイちゃん

 

胸の前で手でハートを作るアイちゃん

 

オモチャの槍を持ったアイちゃん

 

そして、舌を出しているアイちゃん

 

「降参して正解でしたね」

 

「たかあちさいなあ〜‼︎」

 

「いのちびおいちたな‼︎」

 

トランプを内ポケットにしまい、いよを肩車、ひとみを抱っこした後、食堂を出た

 

数日後、高橋にダイヤモンドと純金で出来たサイコロの明細が届くのは知る由も無い

 

 

 

 

 

「ひとみちゃん。好きな数字は何ですか⁇」

 

「さんといち‼︎ひとみのおなまえ‼︎」

 

「なるほどなるほど…それっ‼︎」

 

基地に帰る少し前、ラバウルさんとひとみといよは昨日と同じ場所でシートを引き、ラバウルさんが賽を四つツボに入れて数回振った後、ひとみといよの前に置いた

 

「一が二つ、三が二つです」

 

ツボを開けると、賽は一と三が二つずつ出ていた

 

「うぁ〜‼︎」

 

「すごい‼︎」

 

「次はいよちゃん。好きな数字は何ですか⁇」

 

「いちとよん‼︎いよのおなまえ‼︎」

 

「ふふっ、なるほど…では、次は少し凝ってみましょう‼︎」

 

再びツボに賽が入れられ、それを振った後、二人の前に置き、ツボを開ける

 

「に、ご、さん、よん」

 

「ばあばあ‼︎」

 

「足してみて下さい」

 

「につとごつで、ななつ」

 

「さんつとよんつれ、ななつ」

 

「ななつとななつで…じゅ〜よんつ‼︎あ‼︎いちとよん‼︎」

 

「正解です‼︎」

 

「ひとみ〜‼︎いよ〜‼︎帰るぞ〜‼︎」

 

「ぱぱしゃんら‼︎」

 

「ありがとござました‼︎」

 

「いえいえ、此方こそ。また遊びましょうね⁇」

 

ラバウルさんは、隊長に向かって行く二人を見て優しく微笑んだ後、シートと丁半セットを片付けた…

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