艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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さて、中々の修羅場の207、208話が終わりました

今回のお話は、ちょっぴり切なくて、ちょっぴり楽しいお話です

ようやくあの謎が解けるかも⁉︎


209話 雷鳥の妻の勘(1)

もうそろそろ初夏

 

レイの言う通り、夏になりかけだが、朝は少しヒンヤリして心地良い

 

「こえ、うにとうやつ」

 

「こえ、びいびいのやつ」

 

「危なくなったらちゃんとしおいとはっちゃんに言うのよ⁇遠くに行っちゃダメだからね⁇」

 

私達は港に来ていた

 

しおいとはっちゃんと一緒に、ひとみといよが小さな漁をする為、それを見送りに来た

 

「あかった‼︎」

 

「いってきあす‼︎」

 

しおいとはっちゃんが二人の隣に着き、海へと潜る…

 

こうなればしばらく上がって来ない

 

あの子達は朝ご飯を食べたけど、私はまだだ

 

間宮でモーニングでも頂こうかしら

 

視察と言う名目でね‼︎

 

「いらっしゃいませ‼︎おはようございます‼︎」

 

「え〜とっ⁇この一番高いモーニングを頂けるかしら」

 

「は、はいっ‼︎」

 

伊良湖が焦って伝票を書き、そのまま厨房の間宮に渡した

 

あ、そうだ

 

何かあったらいけないから、タブレットは机に置いとこう

 

濡れちゃいけないから、なるべく端っこに…

 

タブレットを出していると、机を挟んだ前の席に誰かが座った

 

「いっぱい空いてるでしょ⁇他の所座んなさい」

 

顔を見ずに人影だけで言ってしまった

 

「ならカウンターに座る」

 

「ちょっと待って」

 

席を立とうとした人影の服の裾を掴む

 

「す、座んなさいよ…」

 

「ど〜もっ。伊良湖‼︎モーニングプレート‼︎コーヒーでくれ‼︎」

 

「畏まりましたー‼︎」

 

「悪いな。朝からひとみといよの事見て貰って」

 

「別にいいわ⁇」

 

座ったのは、朝の航空訓練を終えたレイ

 

レイは断りも無く革ジャンの胸ポケットから煙草を取り出し、吸い始めた

 

「アンタこの前ジープで吸ったでしょ」

 

「あれは吸ってない。吹かしただけだイデッ‼︎」

 

言い訳の途中でレイの頭に軽くゲンコツを落とす

 

「一緒よ‼︎」

 

「すまんすまん‼︎」

 

「お待たせしました‼︎モーニングパンケーキセットです‼︎」

 

「あら、ありがと」

 

私の目の前に料理の乗ったお皿がドンドコ並ぶ

 

採れたての野菜サラダ

 

目玉焼きとベーコンとウインナー

 

おっきいパンケーキが三枚

 

シロップとチョコソースが入った小瓶がそれぞれ一つ

 

ヨーグルト

 

最後にコーヒー

 

レイは机に頬杖をついて微笑みながら、置かれて行く皿一つ一つを目で追って行く

 

ひとみといよがよくしてるあの癖ね

 

分かんないなら、す〜ぴゃ〜マーケットの話を見るといいわ

 

レイが二人の父親だって事が、またちょっと分かるわ

 

「マーカスさんのモーニングです‼︎」

 

「ど〜もっ」

 

レイのモーニングも置かれる

 

お皿におっきなタマゴサンドが二つとウインナー二本

 

それとコーヒー

 

こんなのじゃ足りないわ

 

あ、あれか

 

陸の勤務になってから胃がおっきくなったのかしら…

 

「…」

 

「…なんだよ」

 

「アンタが食べてるの、久々に見たな〜って思っただけよ」

 

「いつも見てるだろ⁇」

 

そう言ってレイは笑う

 

私も目の前の料理を口に運ぶ…

 

 

 

 

「ご馳走様」

 

「また来るよ」

 

「ありがとうございました‼︎」

 

間宮を出て、レイは爪楊枝を咥えながら一旦進行方向と逆の方を向いて、歩き始めようとした

 

「ちょっと待ちなさい」

 

「なんだ⁇」

 

私と逆方向を歩き始めようとしたレイを引き止め、腕を組んだ

 

「視察行くわよ」

 

「ん」

 

「否定しないのね」

 

「暇だからな」

 

私はいつもそうだ

 

素直になれない

 

だからこうして、視察と嘘を吐いてレイとデートをする

 

レイがそんな奴じゃないのは遠の昔に知っている

 

正直に”デートして欲しい”と言えば、すぐに時間を空けてくれる

 

でも、私はワガママだから、今すぐにデートがしたい

 

だから、嘘を吐いた

 

「あら。通信だわ…はい」

 

《うにとえたお‼︎》

 

《でかいおしゃかなもとえた‼︎》

 

通信の相手はひとみといよ

 

「あらっ‼︎じゃあおばあちゃんに渡して、今日の夜ご飯にしましょう⁉︎」

 

《あかった‼︎》

 

《しゃらにあたちてくう‼︎》

 

通信が終わり、タブレットを仕舞う

 

「ふふっ…」

 

「ひとみといよか⁇」

 

「えぇ。今帰って来たらしいわ⁇」

 

「今のお前、母親の顔してるぞ」

 

「…はっ‼︎」

 

繁華街のガラスに映る自分を見た

 

レイが映ったのが見えた後、顔が綻んだ自分の顔が見えた

 

これが母親の顔か…

 

「ホラ、行くぞ」

 

「あっ」

 

レイに軽く引っ張られ、その場を後にする

 

視察は昼前まで続いた

 

色々食べて、色々飲んだから、今はちょっと疲れてベンチで休んでいる

 

「ちょっとトイレ行って来るわ」

 

「ん」

 

レイが離れてすぐ、繁華街に気になる人がいた

 

二人はウインドウショッピングでもしているのか、歩いては少し店内を見ては話しを繰り返している

 

すぐにベンチを立ち上がり、二人を引き止めた

 

「ちょっと貴方達」

 

「あら、これは元帥様…」

 

その二人はサティとフォティと呼ばれている女性二人

 

私に気付いたサティがスカートの裾を摘んでお辞儀した

 

「貴方達がサティとフォティね。レイとアレンが世話になったわ。それと、健吾も世話になったって言ってたわ⁇」

 

「わたくし達は、いつだって貴方がたのお傍に…」

 

サティは裾を摘んでお辞儀をし、フォティがそのまま一礼した後、すぐに歩き出そうとした

 

「ちょっと待ちなさい」

 

私が止めると、二人は歩みを止めた

 

「お礼位させなさいよ」

 

「構いませんわ。わたくし達、いつも貴方がたから頂いてますの」

 

「お礼を返すのは此方の方です」

 

そう言い残して、二人はまた歩み出した

 

「待って‼︎私、貴方達を知らないわ‼︎」

 

「ふふっ…すぐに分かりますわっ⁇」

 

「あ…」

 

サティの笑顔だけが残り、私の髪を揺らす風が吹いた…

 

「どうした⁇」

 

「例の二人よ。サティとフォティ」

 

「あの二人は謎が多いな…」

 

「いつかお礼したいわね⁇」

 

「放って置くのがお礼なんだよ、あの二人は。そろそろ帰るぞ」

 

「ちょっと待ちなさいよ‼︎」

 

一足先に歩み出したレイが伸ばした手を取り、小さなデートは終わりを告げ、執務室に戻る

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