「清霜達はまだみたいね」
「親潮もいないな…」
誰もいない執務室はガランとしている
いつもは子供達がいるので中々騒がしいが、昼下がりのこの時間は一瞬だけ静かになる
親潮と朝霜磯風は三人で見回り
ガングートと清霜早霜はお昼寝かお母さんの所
ななは学校
いつもなら一気に静かになるこの時間の内に一気に仕事を片付けるのだが、今日はもう無い
「はっちゃん達でも探して来る」
「戻って来たらオヤツ食べましょ⁇」
レイが執務室から出て数十秒後、入れ違いの様に誰かが入って来た
「提督‼︎不審者を逮捕しました‼︎」
入って来たのは憲兵隊の隊長とあきつ丸
「何処にいるの⁇」
「はっ。会議室にいるであります‼︎」
「すぐに行くわ‼︎」
上着を着て、憲兵隊の隊長と共に会議室に向かう
「離せ‼︎俺は何もしてない‼︎」
会議室では一人の男性が暴れており、憲兵隊の二人が取り押さえていた
「彼は何を⁇」
「本人によると、防衛省の人間らしいのですが…タナトスの設計図を拝借しようとしておりました」
「漏洩してないでしょうね⁇」
「あんな頑丈な倉庫を破るのは無理であります…」
あきつ丸は制帽を直しながら、あきれ顔で答えた
タナトス型の設計図は横須賀でも超が付く機密事項
それはもう無茶苦茶頑丈な倉庫に保管してあるし、何重もの電子ロックを破って、本人認証とか私の静脈、網膜スキャン…
…とにかく無理よ‼︎
「そっ。ならいいわ。尋問室に移して頂戴」
「了解であります‼︎」
とにかく尋問しなければ…
「騒がしいですわね⁇」
「ちょっと貴方達どうやって…」
いつの間にかサティとフォティがいた
「尋問なさるのですか⁇」
「そうよ。貴方達も尋問されたくないなら早くここから出なさい」
そう言うと、二人は不審者を横目で見ながら帰って行った
「どうやってここに…」
「提督。準備が出来ました」
「行くわ」
尋問室に入り、少し強引な尋問が始まる
本来なら軽い問答をして、その後監視を付けて奉仕活動で済ましてあげるのだが、今回は訳が違う
基地の機密事項を拝借しようとした挙句、未だに抵抗を続けている
台に寝かされて手足の自由を奪われても、彼はまだ抵抗を続けていた
「…ちょっと休憩するわ」
「…」
一点だけを見つめて、「俺は言いません」みたいな顔がムカつく
久し振りに煙草でも吸って落ち着こう…
表に出て、胸ポケットからクシャクシャになった煙草の箱を取り出し、マッチで火を点けた
メンソールの香りが頭をスッキリさせてくれる…
さて、どう処理しようかしら…
「お母様がお困りね」
「なんとかしないといけませんね…」
人の目をかいくぐり、サティとフォティが戻って来た
「お母様は尋問をしてましたわね⁇」
「はい。彼から何かを聞く、と」
「準備は良いわね⁇」
「はい。姉さん」
サティとフォティが尋問室に入る
「誰だ貴様達は‼︎」
「フォティ。ゴーグルを着けてあげて⁇」
「はい、姉さん」
「何かするつもりか知らんが、俺は口を割らん」
「それは残念ですわ⁇フォティ、始めましょう」
「えぇ」
「はっ。言ってろ」
二人はマジックハンドを手にし、彼の両脇から消えた
「なんだそれは」
再び両脇から現れた二人は、マジックハンドの先に何かを掴んでいた
「この辺かしら…」
「もう少し右ですね」
サティはマジックハンドで掴んだそれを、彼の顔の上で構えた
「それっ」
「いだっ‼︎」
サティはその何かを何のためらいも無く彼の顔面に落とした
「おりゃ」
「ぐっ‼︎」
続いてフォティも落とす
「やめろ‼︎何を落とした‼︎」
「バフンウニですわ⁇チクチクチクチク、痛いですよね⁇それっ」
「ぽとり」
「やめろやめろいででで‼︎」
サティとフォティは、彼の顔にバフンウニを落とし続ける
「吐く気になりましたか⁇」
「この位屁でもない」
「では次に参りましょう」
二人はまた両脇に消え、マジックハンドに何を掴んで戻って来た
「ノーマルなウニです」
「これは痛いですわぁ〜っ⁇それっ」
「ぎゃ‼︎」
サティは如何にも痛そうな声と雰囲気を醸し出しながら、またもやためらい無く顔面にノーマルウニを落とす
「そりゃ」
「ぎゃぁぁぁあ‼︎」
フォティも顔面に落とし、彼は悲鳴を上げる
「やめろ‼︎これ以上は本当に‼︎」
「痛いですか⁇」
「痛い‼︎」
「助かりたいですか⁇」
「助かりたい…が‼︎俺は口は割らん‼︎」
「じゃあダメです。おりゃ」
「うりゃ」
「うぎゃぁぁぁあ‼︎」
そこそこの落下速度のウニを何度も顔面に落とされ、彼はそろそろ限界に来ていた
「言いませんわね…」
「姉さん。次に行きましょう」
「そうね…」
「ヒィ…フゥ…」
彼の顔面は、折れたウニのトゲだらけになっていた
「次は痛いですわ〜…」
「よいしょ…」
「な…何だそれは‼︎」
フォティのマジックハンドの先には、強力そうな針をしたデカいウニがあった
「ただのガンガゼですわ⁇」
「凄く痛そうです」
「ひっ…ひっ…」
サティは彼の頬を撫でながら、逃げないように固定する
その顔上には、フォティが持ったガンガゼが待機している
「ガンガゼのトゲには毒がありますの…刺さるとどうなるか…うっふふふ…」
「ほ〜れほ〜れ」
フォティはイタズラにガンガゼを彼に近付ける…
「うううう…分かった‼︎言う‼︎だからそれだけはやめてくれ‼︎」
「あ、落ちた」
「ひぎゅぁぁぁぁぁぁぁあ‼︎」
フォティが”わざと”落としたガンガゼは、彼の顔の横スレスレに落ちた
「ちょっと貴方達‼︎何やってるの‼︎」
そこでようやく私が帰って来た
「頼む‼︎何でも話すから助けてくれ‼︎」
「え…」
尋問していた彼は怯えきっていた
「またお会いしましょう⁇」
「包み隠さずお話して下さいね⁇」
「は、はひっ‼︎」
サティとフォティはバケツにマジックハンドを入れて、尋問室から出ようとした
「ちょっと待って‼︎お願い‼︎」
サティとフォティはすぐに足を止めてくれた
「私にまで借りを作る気⁇」
「違いますわ。これは恩返し…わたくし達、いつも…」
「貴方達に貸しを作った覚えは無いわ‼︎それに、そのマジックハンドは私の娘のよ‼︎」
少しカンシャクを起こしてしまった
仮にも借りを作った相手なのに…
「…覚えていなくても、私達にはあります」
「…沢山の愛情を、ありがとうございます」
二人は同じタイミングで左右対称の目の涙を人差し指で払い、一礼した後、また何処かに行ってしまった
「あ…」
二人の後ろ姿を見て、私はある事に気付いていた…
結局彼は本当に口を割り、不法侵入で逮捕となった
実は国などはでっち上げで、基地の備品を盗んで売り飛ばそうとしていただけだった…