艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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212話 フレンチギャルのアルバイト(3)

「あら。本屋なのね」

 

雑居ビルの中は本屋

 

それも全フロア本屋

 

リシュリューは早速ファッション雑誌を手に取り、立ち読みを始める

 

その向かい側では、金髪の女の子が同じく立ち読みをしている

 

リシュリューが立ち読みを終えると同じ様に動き、また立ち読みを始める

 

3回目位になると、流石のリシュリューもそれに気付いた

 

「…なぁに⁇」

 

「…」

 

向かい側の女の子は自分に話し掛けられているとも気付かず、立ち読みを続ける

 

不審に思ったリシュリューは、今手に取っていた雑誌を持ち、レジに並んだ

 

すると、その女の子もレジに向かい、リシュリューの真後ろに並ぶ

 

「何か用なの⁇」

 

「…」

 

イヤホンで音楽を聞いているのか、女の子は漫画を脇に挟みながら別方向を向いている

 

「貴方、ラバウルのア…」

 

「お次の方どうぞ〜」

 

女の子を二度見した後、リシュリューはレジで会計を済ませた

 

 

 

本屋から出た後、リシュリューは見事にねいびぃちゃんを回避し、元来た道に戻って来た

 

「ん…」

 

リシュリューは何度も振り返り、その度に歩くスピードを速める…

 

先程の女の子が背後から着けて来ていた

 

リシュリューの歩くスピードに合わせて、女の子も歩くスピードを速める…

 

「…」

 

リシュリューは歩くのをやめた

 

「アウチ‼︎」

 

リシュリューの背中に女の子が当たる

 

「やっぱり貴方なのね」

 

「アハハ…」

 

苦笑いしながらリシュリューの顔を見ていたのはアイオワだった

 

「Papa‼︎ケンゴ‼︎ウィリアム‼︎Dr.レイ‼︎ヤマト‼︎OKよ‼︎」

 

アイオワが耳に付けていた無線で全員を呼ぶ

 

「ちょっと‼︎ねいびぃちゃんは勘弁よ‼︎」

 

リシュリューがそう言った途端、右肩が握られた

 

「ひぃ‼︎」

 

「ねいびぃちゃんとは誰ですか⁇」

 

肩を掴んだのは大和

 

「あ、貴方がねいび…」

 

「大和です」

 

ねいびぃちゃんと同じく、顔を近付けて圧迫する

 

「あ…ひゃい…」

 

「お疲れさん、リシュリュー」

 

「貴方達…」

 

ラバウルのアレンとカシワギ

 

分遣隊のウィリアムとマーカスが来た

 

「Dr.レイを見たらキラキラになったわ…」

 

「アイオワ」

 

「ン⁇」

 

「彼の事は好きよ。男として…ね⁇」

 

「アイオワも好き‼︎」

 

リシュリューは横目でアイオワを見ながら少しだけ笑った

 

リシュリューもアイオワも、マーカスに対する好きは同じ

 

異性としても好きな事は勿論好き

 

だが、それ以上に”男”として彼の事を好いている

 

似てはいるが、少し違う

 

「あっ‼︎やっぱりウィリアムだったのね⁉︎」

 

「申し遅れました。わたくし、コーヒーショップ、タッチバックスのウィリアム・ヴィットリオを申します…」

 

ウィリアムが冗談交じりにリシュリューに一礼し、そこにいた皆が笑う

 

ウィリアムが顔を上げた後、アレンが口を開いた

 

「リシュリュー、気付いたか⁇」

 

「何が⁇」

 

「今日すれ違った女の子、みんな元艦娘だったの」

 

「あら…じゃあ、私の勘は当たってたのね⁇」

 

リシュリューは薄々気付いていた

 

ビスマルクが社長を勤める、多種多様な会社を経営する巨大なビル…

 

それを中心に、街でアルバイトする女の子達

 

言われてみれば、写真を撮ってくれた人やインタビューしてくれた人も、元からカメラマンじゃない気がする

 

「開発途中だけど、ここは”第2居住区”なんだ」

 

「ここが…」

 

第1居住区のベッドタウンの様な造りとは違い、第2居住区は都市化が進んだ街造り

 

まだ少し先になるが、退役した艦娘や、一定の階級の人間、もしくは功績を残した人間には、何方かに住む権利、そしてある程度の恩給が国から支給される

 

考察、計画、そして実行に移したのは横須賀

 

いつの日か、深海の子達も一緒に暮らせたら…とも考えた上で、ベッドタウンと都市化の二つを造り上げた

 

「今日の俺達はリシュリューさんの万が一の護衛と、開発段階の視察が目的なんです‼︎」

 

「私はアルバイトの体験も兼ねてました」

 

大和、ウィリアムはアルバイトの体験

 

そして健吾は橘花マンの撮影が終わった後に駆け付けてくれた

 

「みんなありがと…そろそろ時間だわ。ちょっと行ってくるわね」

 

「帰りは一緒に帰ろう」

 

「えぇ」

 

リシュリューは約束通りの時間に”ビスマルク・インダストリー・ビル”に入った

 

 

 

「リシュリュー様。今回はありがとうございました」

 

受付横の小さな応接室に通され、先程インタビューしてくれた人と対面してソファーに座る

 

「此方こそありがとう」

 

「此方、今回の謝礼になります」

 

「ありが…こんなに⁉︎」

 

謝礼として渡された封筒には、十数万が入っていた

 

「私、そんな仕事…」

 

「ビスマルクCEOが仰っておりました。また次回もお願いしたい、と。今回はそれを含めた上での謝礼です」

 

「え、えぇ…貴方達が良ければ、また呼んでくだ、さい…」

 

「勿論‼︎此方からもよろしくお願い致します」

 

ようやく男性が笑った

 

「ねぇ、一つ聞いてもいいかしら」

 

「答えられる事であれば」

 

「元は海軍なの⁇空軍なの⁇」

 

「ドイツ海軍です。アドミラルジェミニと、ビスマルクCEOとは、開戦以来のお付き合いで…」

 

「カメラマンは⁇」

 

「彼も同じです。とある事情で国を追われましてね…アドミラルジェミニは、我々の素性を知った上で、腕を買ってくれました。彼女には感謝してもしきれません」

 

「とある事情…」

 

「当時最新鋭の高速戦艦”ビスマルク”の建造ですよ…内緒にしておいて下さい。…CEOは経営は上手いのですが、この件に関してはヒステリーですから」

 

そうリシュリューに耳打ちする

 

この男、中々冗談が通じる男である

 

「…忘れてあげるわ」

 

「では、次回もよろしくお願い致します」

 

「ありがとうございました」

 

「お気を付けて」

 

リシュリューが応接室から出ると、ビスマルクが待っていてくれた

 

「帰りはみんなと帰りなさい。今日はありがとうね」

 

「楽しかったわ‼︎」

 

ビスマルクの小さく振る手を、リシュリューも同じ様に振り返す

 

こうして、リシュリューの一日は終わった…

 

 

 

 

数日後、リシュリューが表紙の雑誌が発売された

 

「ガールズ・フリート・ファッションの増刷依頼よ‼︎」

 

「か、畏まりました‼︎」

 

ビスマルク・インダストリーは、この日嬉しい大パニックに見舞われた

 

初回号をリシュリューが表紙を飾ったオサレの雑誌”ガールズ・フリート・ファッション”が爆発的に売れ、どこの店舗にも無い非常事態になった…

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