「どうしちゃったのかしら…」
「分からん…」
てっきりずいずいずっころばしに行くのかと思いきや、親父は部屋に引き篭もってしまった
もしかすると、お寿司握りロボの顔を見るのが辛くなってしまったのかも知れない…
「私達だけでも行きましょうか」
「メンテナンスもあるしな」
結局俺と横須賀だけでずいずいずっころばしに向かう事になった…
台風程ではないが、雨足は中々強くなって来た
横須賀と相合傘をしながら、繁華街に来た
「イラッシャイマセ。オスシハ、イカガデスカ。オコサマセットモ、アリマスヨ」
「うそ…」
雨ざらしになりながらも健気に呼び込みをするお寿司握りロボを見た瞬間、横須賀は目を見開いて口を抑えた
「お子様セットあったんだ…」
「…」
てっきり横須賀はお寿司握りロボに感動しているのかと思いきや、お子様セットがある事に感銘を受けているだけらしい
マークが言ってたな…
サラの感覚がちょっとズレてるから、ジェミニも多分ズレてるだろう…って
「イラッシャイマセ、イラッシャイマセ」
「…もういいのよ、お寿司握りロボ」
「イラッシャイマセ」
無機質に挨拶をされ、流石の横須賀もちょっと胸にキたみたいだ
「2名よ」
「アリガトウゴザイマス。ニメイサマ、ゴライテンデス」
お寿司握りロボに案内され、俺達はずいずいずっころばしに入った
「テヲ、アライマス」
「えぇ」
ウィーン、ガシャガシャ…
ちゃんと手を洗った後、お寿司握りロボはいつもの位置に付いた
「いなり寿司と…そうね、トロを貰えるかしら」
「イナリズシ、トロ、アリガトウゴザイマス」
横須賀の注文を受けた後、お寿司握りロボは俺の方を向いた
「サバを貰えるか⁇」
「サバ、アリガトウゴザイマス」
注文を受けた後、お寿司握りロボはちゃんと注文されたお寿司を握り始めた
「イナリズシト、トロデス」
コト、コト
「サバデス」
コト
「頂くわ」
「頂きます」
割り箸を割り、寿司を口に運ぶ
「んっ、味は落ちてないわね‼︎」
「やっぱイケるな‼︎」
「アリガトウゴザイマス。ズイカクハ、ウレシイデス」
ウィ、ウィーン
お寿司握りロボはガッツポーズをしてみせた
お寿司は相変わらず美味かった
だが、どうしても店内の雰囲気が暗い
悲しさに満ち満ちている…
黙々とお寿司を食べる中、お寿司握りロボが口を開いた
「リチャードサンヲ、ゴゾンジデスカ」
「あ…あぁ‼︎知ってるよ‼︎」
「リチャードサンガ、キマセン」
「え、演習が終わって疲れてるのよ‼︎」
「リチャードサン、ズイカクノコトヲ、スキダト、イッテクレマシタ」
「お寿司握りロボは、リチャードさんの事好きかしら⁇」
「トテモ、キニナルオカタデス」
お寿司握りロボに感情のプログラムがあったのか…
「痛い場所は無いか⁇」
「ミギウデノボルトガ、ホンノスコシ、ユルンデイマス」
「おいで」
お寿司握りロボはキュラキュラ言わせながらカウンターから出て来て、俺の前で止まり、右腕を前に出した
「これだな…」
右腕の関節部のボルトが緩んでいる
お寿司握って、あれだけウィンウィン動かしてればそうなるか…
しっかりとボルトを締め、簡単にだが潤滑油を少しだけ塗っておいた
「動きやすいか⁇」
「アリガトウゴザイマス。アナタノ、オナマエヲ、オシエテクダサイ」
「俺はマーカス」
「マーカスサン」
ウィ、ウィーン
お寿司握りロボは横須賀の方を向いた
「私はジェミニ」
「ジェミニサン。マーカスサン、ジェミニサン。ズイカク、オボエマシタ」
健気なお寿司握りロボを見て、俺達二人は不思議と子供を見ているような気分になり、笑みが零れた
俺がしたかったのはこれだ
この一瞬の喜びなんだ
横須賀にもそれとなく伝わったみたいだ…
互いに何皿か食べ終え、ずいずいずっころばしから出ようとしたら、お寿司握りロボが見送りに来てくれた
「アリガトウゴザイマシタ」
「頑張るのよ⁇」
「ハイ、ジェミニサン」
「またな」
「オキヲツケテ、マーカスサン」
ウィ、ウィ、ウィーン、フリフリ
まるで娘達を学校に送る時の様に、俺達は笑顔でお寿司握りロボに手を振り返した
「今、アンタの気持ちが分かった気がするわ」
「なら良かった」
「でっ⁇進んでるの⁇」
「明日には終わる。まっ…普通の子に戻る、が…」
「後は本人次第よ」
4日目…
「イラッシャイマセ。オスシハイカガデスカ」
この日の朝もお寿司握りロボはずいずいずっころばしの軒下で客寄せをしていた
「なんだこのロボット‼︎」
一生懸命客寄せをするお寿司握りロボの前に、三人組の不良が来た