艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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215話 機械仕掛けの愛(6)

「オスシハイカガデスカ。オウドンモ、アリマスヨ」

 

「寿司屋の癖にうどんなんか出してんじゃね〜よ‼︎」

 

不良達は意味も無くお寿司握りロボを蹴り飛ばし、倒れたお寿司握りロボを蹴ったり踏みつけたりし始めた

 

「ヤメテクダサイ。ズイカク、コワレテシマイマス」

 

「ロボットが握った寿司なんか食えるか‼︎」

 

「ははは‼︎人になって出直して来いよ‼︎」

 

「イタイデス。ヤメテクダサイ」

 

「ブッ壊れろ‼︎」

 

「アァ」

 

カメラが歪み、思考能力が低下しつつあるお寿司握りロボは、ふと一人の男性を思い浮かべた

 

「リチャードサン…」

 

「あぁ⁉︎何だって⁉︎」

 

「イヤデス。ズイカク、コワレタクアリマセン。リチャードサン。ウワァァァア」

 

お寿司握りロボは精一杯腕を振り回し、抵抗し始めた

 

「ズイカク、ヤクソクシマシタ。リチャードサンニ、オスシヲ、タベテモラウ」

 

「な…何だコイツ…気持ち悪りぃ…」

 

「腕取っちまえ‼︎」

 

「オラ‼︎動くな‼︎」

 

「ウワァァァア、ウワァァァア」

 

お寿司握りロボは羽交い締めにされても、両腕をグルグル回して抵抗を続ける

 

「ブッ壊れろや‼︎」

 

「ヤメテクダサイ、ゴメンナサイ」

 

まさに腕を折られようとした瞬間、誰かの頬が砕ける音が聞こえた

 

「へが…」

 

お寿司握りロボの腕を折ろうとした不良が、いきなり吹き飛んだ

 

「がっ…」

 

もう一人は回し蹴りで踵を口元にクリーンヒットさせ、一瞬でダウン

 

「ちょ、ご、ごめんなさい‼︎ごめ、ごっ…」

 

最後の一人はCQCで瞬く間に気絶

 

「アァ」

 

「人の女に手ぇ出すとは…分かってんだろうな…」

 

「ちょっ…」

 

お寿司握りロボを半破壊され、怒り狂ったリチャードは、近くに転がっていた不良の一人の口に足を置いた

 

「今の俺は機嫌が悪いんだ…」

 

リチャードは足を口に置いたまま、タバコに火を点け、下を向いた

 

「フーーーッ…」

 

「おごごごご…」

 

紫煙を吐きながらゆっくりと足に力を入れると、ミシミシと音を立てた

 

「中将‼︎」

 

ようやく異変に気付いた憲兵隊が駆け付けて来た

 

「…チッ。小僧、命拾いしたな…」

 

足を離し、フライトジャケットを着直した後、お寿司握りロボの所に来た

 

「リチャードサン」

 

「工廠に行こう」

 

お寿司握りロボは台車に乗せられ、リチャードに運ばれる

 

「リチャードサン」

 

「なんだ⁇」

 

「キテクレテ、アリガトウゴザイマス」

 

ボロボロにされ、それでも感謝を述べるお寿司握りロボを見て、リチャードは台車の持ち手を強く握った

 

「…昨日は悪かったな」

 

「ズット、マッテマシタ」

 

「腹下してたんだよ。昨日は朝飯にイントレピッドの朝食も食べたんだ」

 

昨日、演習が終わった直後から気が沈んでいたのはこの為である

 

「キゲン、ヨクナイ、デスカ」

 

「人が休みなのに朝からマーカスやらアレンやらジャーヴィスやらその他諸々が枕元でガシャガシャドンドンパフパフ鳴らしやがって…」

 

そう言うリチャードだが、顔には笑みを浮かべていた

 

実は内心、子供や孫達に起こして貰って満更でもなかった

 

「さっ、着いた」

 

「リチャードサン。ズイカク、ナオリマスカ」

 

「治るさ‼︎息子のマーカスはっ‼︎腕利きのエンジニアだっ‼︎」

 

お寿司握りロボを背負い、工廠の台の上に置く

 

「これまた派手にぶっ壊してくれたな…」

 

俺の所に来たお寿司握りロボは、見るも無残に大破も大破

 

「直せるか⁇」

 

「ま…やってみる。期待はすんなよ⁇」

 

「任せた」

 

リチャードが工廠から出た後、すぐに大淀博士に連絡を入れた

 

「お寿司握りロボが大破した。手伝ってくれ」

 

《オッケー‼︎すぐ行くわ‼︎》

 

 

 

 

二時間後…

 

「親父」

 

「どうだった⁉︎」

 

「すまん…」

 

「は…」

 

お寿司握りロボを修理して、元通りにする事は叶わなかった

 

「まっ。お寿司握りロボは、だがな」

 

「どういう意味だ…」

 

「中将」

 

工廠のカプセルの前には、私服に着替えた瑞鶴がいた

 

「瑞鶴…なのか⁇」

 

「正真正銘瑞鶴よ‼︎」

 

腰に手を当て、私は瑞鶴だ‼︎と言い張る

 

「俺の好きな寿司は⁇」

 

「かんぴょう巻き‼︎」

 

「俺の乗ってるバイクは⁇」

 

「あれでしょ⁇黒いボディのカマキリハンドル‼︎ナンバーは、す・4‼︎」

 

「瑞鶴‼︎」

 

「中将‼︎」

 

二人共大きく腕を広げ、小走りで駆け寄り、強く抱き締め合う

 

「すまなかった…」

 

「いいの…最後に誰かの役に立てたもの…」

 

「ん…マーカス、ありがとうな。マーカス⁇」

 

親父が振り返った時には、俺はそこにはいなかった

 

 

 

 

「これで良かったのか⁇」

 

「えぇ。リチャードが幸せなら、私も幸せよ、マーカス」

 

工廠の裏で海を見ながら、俺の隣で母さんが笑う

 

瑞鶴が大破して入渠していたのは本当だ

 

瑞鶴が治療に専念している間に、母さんはここぞとばかりにずっと計画していたお寿司握りロボをずいずいずっころばしに置き、リチャードが如何に瑞鶴を好いているかの度量を計り始めた

 

因みにこの少し前に大淀博士が遊び半分で造った自動お寿司握りロボを改造したのが、ズイカクだ

 

瑞鶴が大破してすぐ、母さんはこの機を逃すまいと瑞鶴本人に許可を入れ、お寿司握りロボをずいずいずっころばしに設置した

 

そう。これだけリチャードが意気消沈したのはただの母さんのイタズラである

 

「目の前で大々的に浮気だぞ」

 

工廠の中を見ると、親父と瑞鶴が熱いキスを交わしている

 

「その分倍は尽くして貰うからいいわ。それにマーカス。貴方もいるしね⁇」

 

こうして笑った顔を見ると、母さんがジャーヴィスを産んだとよく分かる

 

「母さんがいいならそれでいい。止めたきゃいつでも言ってくれ。そん時ゃ、本気で叩き落としてやるから」

 

「ふふっ、OKマーカス‼︎」

 

 

 

 

後日、普通の女の子となった瑞鶴がずいずいずっころばしに戻って来た

 

最初の客は勿論リチャード

 

お寿司握りロボ⁇

 

お寿司握りロボは瑞鶴が休日の時に代理で出る事が決まった

 

そっ。修理は何とかなった

 

不良は外部から来た一般客で、横須賀が計一週間の奉仕活動をさせて事無きを得た…

 

 

 

 

 

 

 

スパイトがこれだけリチャードの浮気に耐えられているのは、実は自分も一番身近な人に浮気をしているとは、誰も知る由が無い…

 

それはスパイトにとっては絶対隠しておかなければならない感情

 

ウィリアムにも、貴子にも、ジェミニにも、誰にもバレてはいけない

 

ましてや本人には絶対隠しておかなければならない、そんな感情

 

抱いてはいけない相手に、スパイトは抱いてはいけない感情を抱いていた…

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