「死神は何処だ‼︎」
「聞いてどうする‼︎」
「地獄に送ってやるんだ‼︎」
シャークマウスに対して攻撃は弾かれる為、距離を取りながら話を続けていた
「死神は俺の子だ‼︎地獄へ送るとか言ってる奴に教える訳にはいかん‼︎」
「なら貴様から地獄へ落ちろ‼︎」
シャークマウスが砲撃の姿勢に入る
「艦種データ、重巡洋艦へ移行…」
「くたばれ‼︎悪魔ぁ‼︎」
「完了」
「ぐあっ‼︎」
シャークマウスがいきなり吹き飛んだ
頬を殴られ、痛そうな形に頬を歪ませながら、シャークマウスは宙に浮いた
「創造主様‼︎お怪我は⁉︎」
そこにいたのは親潮だった
シャークマウスに対して強烈な右フックを咬まし、吹き飛ばしていた
「障壁はどうした⁉︎」
「創造主様のお手元にある中和装置を真似て、適応変化能力で中和しました」
「なるほどな…」
「ですが、三分間しか障壁は破れません。その間に髪留めの障壁発生装置と主砲を破壊します」
「三分だな⁇」
「創造主様がお煙草を一本お吸いになる時間が約三分間です」
ニヤリと親潮が微笑む
俺がアレンにする”悪い事しようぜ”の合図だ
「了解っ‼︎」
タバコを咥え、オイルライターの蓋を開ける…
オイルライターの火でタバコに点火すると親潮が頷き、シャークマウスの方に顔を向けて腕を構えた
「行くぞ親潮」
「はいっ。創造主様」
今まさに立ち上がろうとしているシャークマウスに向かって、俺達は拳と首を鳴らし、歩み寄る
「くそぅ…負けないっ…負けられないんだよ‼︎」
「動かないで下さい…」
親潮はシャークマウスの髪留めに手を伸ばした
「触るな‼︎悪魔の子め‼︎」
「…」
「ぐぁっ‼︎」
シャークマウスが親潮の手を払った瞬間、親潮は真顔でシャークマウスの顔面にメリ込む位のストレートパンチを当てた
「障壁発生装置確保‼︎」
「主砲も確保だ」
「ぐっ…」
シャークマウスは鼻血を垂らしながらも、未だに敵意を向けている
「…親潮、ありがとう。下がってろ」
「はい」
親潮が引き下がったのを見て、腕を構える
「オーケー…サシで勝負だ」
シャークマウスは一対一の勝負を望んでいる
「うがぁぁぁあ‼︎」
身長差をモノともしないジャンプで、シャークマウスは俺の顔面に拳を振りかざす
「ぬんっ‼︎」
「ぐぁ…っ」
今度は左フックがシャークマウスの右頬に当たる
流石に限界が来たのか、とうとうシャークマウスは倒れた
それと同時に、タバコの灰が落ちた
何とか間に合ったみたいだ…
「観念しろ」
「死にたくなければ手を上げて下さい」
俺は内ポケット
親潮はデータでピストルを出し、シャークマウスに向けた
「何で…」
負けたのを確信したのか、シャークマウスは地面に手を突き、ポロポロと涙を落とし始めた
「何で私だけ助けてくれなかったんだよぉ‼︎」
「やっぱり…」
「みんな助かったのに‼︎私だけ助けてくれなかった‼︎いっぱい助けてって言ったのに‼︎誰も来てくれなかった‼︎」
隊長が睨んだ通り、シャークマウスはあの作戦の生き残り
「死神も悪魔も倒せなかった…あぁ…」
意気消沈したのか、シャークマウスは肩の力を抜いた
「俺達と来い」
「いい…酷い事をしたからな…」
「だったら尚更来て下さい。ここなら貴方を利用する様な真似をする輩はおりません」
「…」
「そして、いつか知って下さい。貴方が悪魔や死神と呼んでいる方が、どれだけ貴方を思って、あの日貴方がたを撃沈したか」
親潮の言葉を聞き、シャークマウスの体がピクリと動いた
「…知れるだろうか」
俺の言葉より、親潮の言葉の方が響いている
「貴方にその気があれば、ですが」
「…」
それでもシャークマウスは躊躇いを見せた
「さっ。行きましょう。まずは貴方を治療します」
「…」
親潮が差し伸べた手を、シャークマウスは無言で握った
「…帰りましょうか、創造主様‼︎」
「んっ」
第2作戦に移行する前に、親潮の機転で事無きを得た
親潮に背負われたシャークマウスは余程疲れていたのか、すぐに眠ってしまった
こう見ると、大人しくてまだまだ幼さが残っている
こんな子を戦いに出していたのか…
「さ…おやすみなさい…」
医務室に着き、シャークマウスをカプセルに入れた後、親潮と俺はようやく一息つけた
「助かったよ…」
「創造主様が無事なら、親潮はそれで満足です‼︎」
「お前も見といてやるよ」
「はいっ」
親潮は本当に良い子だ
ただ、何故だろう…
はっちゃんもゴーヤもそうだが、俺の産み出したAIは何が何でも俺を護ろうとしてくれる
俺がそう指示した覚えは無い
指示したと言えば、自身の保管を最優先に考え、その範疇で誰かに手を差し伸べる事をちょろっと言った位だ
強制もしていない
親潮にもその傾向がある
とても有り難い事なのだが、少し気にもなっている現象でもある
「特に異常は無いな」
「ありがとうございます」
聴診器を外し、タバコに火を点ける
「創造主様はお医者様になるのが夢だとジェミニ様にお聞きしました」
「どうなんだろうな…パイロットでいたい気持ちもあるし、地に降りて医者になるのも悪く無いと思ってる」
「親潮はどちらの創造主様もカッコイイと思います‼︎」
親潮に言われると、ちょっと揺らいでしまう自分がいる
医者、か…
いつか地に足を降ろしたら、それも…
「お医者様は変身して戦うのですよね‼︎親潮、カッコイイと思います‼︎」
あ、これ多分違うな
俺の思ってる医者と、親潮の思ってる医者は多分違う
「…親潮」
「剣を手にして切除手術をされたり、ピストルで撃ってウィルスを消滅させるのですよね‼︎」
「いいか親潮」
親潮の肩を掴み、一旦呼吸を整える
「は、はいっ‼︎」
この瞳…真面目な瞳だ…
「親潮は特撮好きか⁇」
「はいっ‼︎とっても‼︎清霜様といつも見ています‼︎」
「そうかそうか。親潮は多趣味だな」
「沢山覚えて、親潮、沢山楽しいです‼︎」
半笑いの顔を手で抑え、嬉しさ半分、戸惑い半分の気持ちを隠した
親潮の情報は時たまズレている事がある
横須賀の仕業もあれば、俺の所為もある
今も典型的な例だ
一波乱あったが、親潮の素っ頓狂な情報のお陰で気持ちが和んだ
…当の本人は本気だが