「パン、ローストビーフ、草もあるな‼︎」
バランス良く皿に食べ物を盛るネルソン
「いただきます‼︎」
席に座って、ちゃんといただきますをしてから、ネルソンはそれらを食べ始めた
「ネルソンさん」
「ん…」
対面の席に岩井が座る
食べていた物を飲み込み、ネルソンは岩井の方を向いた
「すまない。どうされた⁇」
「明日は何処へ向かわれるので⁇」
「まだ決めていない」
「手当たり次第で向かわれているのですか⁇」
「うぬ。余には時間が有り余っている」
「其れ程までにその二人を⁇」
「会わねばならんのだ…どうしても」
そう言ったネルソンの顔を見て、岩井は何かを悟った
「…そう言えば、ここへはどうやって⁇」
「あれだ」
食堂の窓の向こうには、港にロープで括り付けた手漕ぎボートが見えた
「あ、あれでですか⁉︎」
「余に不可能の文字はないっ‼︎」
ドーンと胸を張るネルソン
その手には豆が沢山出来ていた…
「一体何処から…」
「イギリスからだが⁇」
「イ、イギリス⁉︎」
ネルソンは手漕ぎボート一つで、遠路遥々イギリスからやって来ていた
「うぬ。途中、幾つか補給地点を重ねて此処まで来たんだ。まっ、長年出来ずにいた世界旅行だなっ‼︎」
「…」
手漕ぎボートとネルソンを交互に見ている岩井は、開いた口が塞がらずにいた
「ごちそうさまだ‼︎あの女性に言っておいてくれ、とても美味かったとなっ‼︎」
「ネルソンさん‼︎」
「うん⁇」
岩井は決心した
こんなに綺麗な女性が、ここまでして会いに来るのだ
きっと、悪い様にはしない
「明日の朝、ガンビアで基地を回りましょう」
「良いのか⁇」
「勿論‼︎」
「あぁ、そうだ。この基地は和平派か⁇」
「えぇ。横須賀基地直轄の派遣基地です」
「横須賀…」
「直接お伝え出来ないのは心苦しいですが…我々には、返し切れない恩がその方にはあるのです。どうか、ご了承を…」
「ふふっ‼︎そうかっ‼︎」
探し求めている二人を褒めると、やはりネルソンは喜んだ
本当に悪い人ではなさそうだ
夕御飯を食べ終えた後、ネルソンは用意された部屋の温かいベッドで眠りについた…
次の日…
「この艦はトラック基地を目指し、その後横須賀へ入港します」
「トラックか。トラックも和平派か⁇」
「ふふっ。和平派しか相手しませんよっ」
ネルソンと岩井はガンビア・ベイIIに乗り、トラックを目指していた
「そう言えば、ずっと大事に持っていますね⁇」
岩井が目をやったのは、ネルソンがずっと持っている革の鞄
「あぁ。土産物が入ってるんだ。見るか⁇」
「宜しいんですか⁇」
「見られて恥じる物ではないっ‼︎」
涼月とダイダロスさんが開けずにいた鍵が外され、ネルソンは鞄を開けた
「これは…」
岩井は鞄の中を見て、自分達を恥じた
「何なら全部見てくれて構わない。乗せて貰ってまで、余は無礼を働きたくない」
「いえ…」
「全部出そう‼︎」
ネルソンは机の上に鞄の中身をひっくり返し、鞄の底を叩き、底板を剥がして岩井に見せた
「申し訳ありませんでした‼︎」
何一つ怪しい物は出て来なかった
「疑いを持つのは普通の事だ。余も謝らなければならない。もっと早くに見せるべきだった」
「そんな事はありません。人間誰しも、知られたくない事はございます」
「そう言ってくれると有難い」
岩井は帽子のつばを摘み、ほんの少し頭を下げた
「さっ。もうすぐです」
トラック基地が見えて来た…