艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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221話 お尋ね者は誰ですか⁇(4)

一時間後…

 

「よこしゅかしゃん」

 

「ん〜⁇なぁに⁇」

 

「もうおなまえいってい⁇」

 

「いいわよ〜」

 

ひとみ、いよ、横須賀の前では、子供達と遊ぶネルソンの姿があった

 

「クソゥ…何故負けるのだ‼︎」

 

「たいほうのかち‼︎」

 

「ふふ…早霜の勝ち…」

 

「き〜ちゃんの勝ち‼︎」

 

ネルソンは初対面の子供に懐かれている

 

誰かと一緒だ…

 

「ねうしぉん、えいしゃんしゅき⁇」

 

「ん⁇あぁ。そうだな…あの子からしたら、私は叔母になるからな」

 

「あら。スパイトの姉妹なの⁇」

 

ひとみの言葉を返したネルソンの言葉に、横須賀が反応した

 

「うぬ。余は姫の妹だ。ま…色々あるが、そこには触れないでくれ。その内姫が説明してくれると思う」

 

「分かったわ」

 

ネルソンがぎこちない笑顔を見せた後、執務室の扉がノックされた

 

「俺だ」

 

「私よ」

 

「来たわ。開いてるわ‼︎」

 

「えいしゃんら‼︎」

 

「お父様‼︎」

 

清霜やいよ達が来る人の方を向く

 

「母さんまで呼んでどうかしたのか⁇」

 

「ごきげんよう、ジェミニ‼︎」

 

「ひ、姫‼︎」

 

「あらネルソン‼︎来てくれたの⁉︎」

 

スパイトに気付いたネルソンは、すぐにスパイトの足元に寄り、そこで膝を曲げた

 

「このネルソン、遅ればせながら祝言に参りました」

 

「シューゲン⁇」

 

いつも通りの変わらない笑顔のスパイトだが、執務室には張り詰めた空気で満ちていた

 

子供達も大人も、ただただ二人を見るだけしか出来ないでいた

 

「御子息が産まれた一報を耳に入れました」

 

「ネルソン。立って⁇話しにくいわ⁇ジャーヴィスの事ね‼︎」

 

「ジャーヴィス…なんと良い名前‼︎」

 

スパイトの言葉でネルソンは立ち上がり、革の鞄を開けて何かを取り出した

 

「此方が祝いの品になります」

 

「あら。ありがとう‼︎」

 

ネルソンの鞄の中から出て来たのは、子供服やオモチャが沢山

 

そう、ネルソンは知らない…

 

 

 

 

「ネルソン。ジャーヴィスにも会って頂戴⁇」

 

「はっ」

 

「知り合いか⁇」

 

「えぇ、勿論‼︎私の妹よ‼︎」

 

「余はネルソンだ‼︎」

 

ドーンと胸を張るネルソン

 

これだけ見ると嫌な予感がする…

 

「マーカス・スティングレイだ。宜しくな」

 

「ふふっ‼︎そうか‼︎貴方がマーカスか‼︎」

 

ネルソンは持っていた写真を見せた

 

「おぉ〜‼︎懐かしいな‼︎」

 

ネルソンが持っていたのは、俺が軍の広告塔として利用されたあの写真

 

やっぱりいつみてもイケメンである

 

「行きましょう‼︎リチャードにジャーヴィスを預けてるの‼︎」

 

「子供達は私に任せて頂戴」

 

「頼んだ」

 

母さんの車椅子を押し、ネルソンと共に執務室を出た

 

 

 

「マーカス殿。ヒトミ、イヨはマーカス殿の御子息か⁇」

 

「そっ。俺の娘っ。たいほうは俺の隊長の子。清霜早霜も俺の娘だ」

 

「よく教育されている。立派な子だ」

 

「マーカスは子沢山なのよ⁇ねっ⁇」

 

「少子高齢化の歯止めに貢献してるだけさっ」

 

俺と母さんが笑う中、ネルソンは微笑んでいた

 

「そう言えばネルソン⁇貴方ここまでどうやって来たの⁇」

 

「ガンビア・ベイⅡと言う護衛空母に乗艦させて頂きました」

 

「そう。てっきりまたカヌーで来たかと思ったわ⁇」

 

「いいいいやっ‼︎わわわ私がそんな事をする訳はないっ‼︎」

 

母さんから目を逸らし、身振り手振りが大きくなるネルソン

 

「カヌーで来たのね」

 

「イギリスからカヌーで来たのか⁉︎」

 

「まぁ…長年やりたかった事だからなっ‼︎」

 

良い意味でドン引きしていた

 

言われてみれば、手には綺麗な容姿には似付かないマメが出来ていた

 

「何事も経験だからなっ。余は学ぶ事が好きだ‼︎」

 

少しずつ印象が変わっていく

 

当初は昔の横須賀の再来と思っていたが、どうやら違うみたいだ

 

「さっ、ここよ」

 

いつもの店の暖簾を分ける

 

「タコさん美味しいネ‼︎」

 

「唐揚げもあるぞ‼︎」

 

テーブル席にいた、ジャーヴィスと親父

 

ジャーヴィスは口の周りに米粒を付けて、実に美味しそうにお寿司を食べている

 

「この子がジャーヴィスか‼︎」

 

「ウン‼︎ジャーヴィス‼︎お…」

 

「そうかそうか‼︎ふふふ‼︎」

 

ネルソンはジャーヴィスの横に座り、ジャーヴィスを触りまくる

 

そんな事よりジャーヴィスはお寿司に夢中

 

サイドメニューの唐揚げやら枝豆を口に入れ、ずっとモゴモゴしている

 

「姉さんの小さい頃によく似ておられる」

 

流石に気になったジャーヴィスはネルソンを引き剥がし、ジッ…と目を見つめた

 

「お姉サンだぁれ⁇」

 

「余はネルソンだ‼︎」

 

「久し振りだな‼︎結婚式以来か⁉︎」

 

「リチャード殿‼︎これは久しい‼︎」

 

親父とも知り合いの様子だ

 

母さんの妹と言うのは本当のようだ

 

「アークはどうしたアークは」

 

「アークもいるわ。私達の基地にいるの」

 

「クッコロなんだヨ‼︎」

 

「ふふっ…そうかそうか。ジャーヴィスもアークが好きなのだな⁇」

 

アークの存在も知っている様子

 

ひとみといよが懐く、と言う事は悪い奴ではないと確信出来る

 

だが、この女性

 

何か知っている様な表情を時折俺に向けて来る

 

「この辺りに宿はあるか⁇今日は休もうと思うのだが…」

 

「あぁ…なら、横須賀に手配させるよ」

 

急に話し掛けられ、一瞬言葉に詰まる

 

横須賀に通信を入れると、ネルソンの部屋の手配はすぐに出来た

 

横須賀が、昔長門が使っていた部屋ならすぐに使えるからと言ってくれた

 

「ネルソン、また改めてお話しましょう⁇」

 

「畏まりました」

 

「マーカスはどうするんだ⁇今日はこっちか⁇」

 

「そうだな。たまには子供達の相手をするよ」

 

「ヒトミ、イヨ、てぃーほうは預かるわ」

 

「ダーリンバイバイ‼︎」

 

「気を付けてなっ」

 

母さんとジャーヴィスが帰り、三人が残る

 

「じゃっ、マーカス。ネルソンに手ぇ出すなよ‼︎」

 

「分かってらい‼︎」

 

代金を払い、瑞鶴に投げキッスをした後、親父も寮に戻った

 

「行こうか」

 

「うぬ」

 

ネルソンと共に、戦艦寮へと向かう…

 

 

 

 

「マーカス殿」

 

「何か言いたそうだな」

 

寮に向かう道中、ネルソンが急に足を止めた

 

「ここに来るまでに、アレンと言う男に出会った」

 

「アレンがどうかしたのか⁇」

 

「うぬ…預かり物を持っていてな。それを届けに来たのが、もう一つの理由なんだ」

 

「届けてやろうか⁇」

 

「いい…余は、もう一度アレンと話をしたい」

 

ネルソンから笑顔が消え、悲しい表情になる

 

「アレンに惚れたか⁇」

 

「余はアレンとは恋仲だった」

 

あまりにも突然の告白に息が詰まる

 

しかし、ネルソンの本気の目を見て、あぁ、これは本当なんだと理解した

 

「何故別れを突き付けたか、余は知りたい。そして、何故別れた女に”あんな物”を託したのか…」

 

淡々と話すネルソンを前に、何となくアレンが愛宕を選んだ理由が分かった

 

容姿が若干ネルソンと被っているんだ

 

もしそうならば、アレンはネルソンを忘れていない

 

一時期の俺達のように、知らないフリをしていただけだ

 

「あんな物とは⁇」

 

「マーカス殿であれ、見せる事はできない。すまない」

 

ネルソンは胸を隠した

 

おそらく谷間にでも入っているのだろう

 

「まっ。会わせてやるよ」

 

「本当か⁉︎」

 

「ジャーヴィスの礼だ」

 

「よし、なら頼んだ‼︎今度服を買ってやるからなっ‼︎」

 

そう言って、ネルソンは寮に入った…

 

「アレン…か」

 

俺の知らないアレンが一つ見えた気がする…

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