園崎のボクシングの腕は、横須賀に来てから異常に強くなっていた
理由は明白
周りが強過ぎるのと、教え方が上手い連中が多いからだ
「ハァーイ‼︎ソノザキ‼︎」
「イントレピッドさん」
リングでスパーリングをしていた園崎は、ノールックで右ストレートで相手のノックダウンをとり、リング外のイントレピッドの所へ来た
「つ、強い…」
「ありがとうございました」
「こちらこそ‼︎また頼むよ‼︎」
ここに来てから、園崎は礼儀を重んじるようになった
「貴方、大分強くなったわね⁇」
「皆さんのお陰です」
「じゃあ〜…私とやろっか‼︎」
「女性は殴らない主義です」
「大丈夫大丈夫‼︎私怪我しないから‼︎あっ、そうだ‼︎私に勝てたら〜…好きな事させてあげるっ‼︎」
そこまで言われて、園崎の闘志に火が付いた
「言いましたね…分かりましたっ‼︎」
上着を脱ぎ、上半身スポーツブラの姿になり、グローブを嵌めたイントレピッドがリングに上がる
園崎は礼をした後、グローブを構えた
イントレピッドは礼を返した後、その場で軽く飛び始めた
「あら…」
リチャード達を落とした巨乳がユサユサ揺れるが、園崎はイントレピッドの目を見ている為、悩殺は意味をなさなかった
ゴングが鳴り、園崎がイントレピッドに近付く…
と、同時に園崎はリングの上に膝を落とした
「え…」
イントレピッドの右ストレートが顔面に直撃したのだ
その場にいた全員が一瞬の事過ぎて、何が起こったか分らずにいた
「だぁーっ‼︎イントレピッド‼︎」
「ハァーイ‼︎リチャード‼︎」
頭を抱えたリチャードが入って来た
イントレピッドは健気にリチャードに手を振っている
「ダメだろボクシングしちゃ‼︎」
「むーっ‼︎たまにはいいでしょ⁉︎動かないとデブになるわ⁉︎」
「ソノザキ‼︎大丈夫か⁉︎」
「一体なにが…」
リチャードに抱えられ、園崎は立ち上がった
「イントレピッドは向こうで女子ボクシングのチャンピオンなんだよ‼︎」
「本当ですか⁉︎」
「ふふふふふ…」
いやらしく微笑むイントレピッド
「俺の部下をノビさせるな‼︎」
「ならリチャード相手して頂戴⁇強いのは空とベッドの上だけ⁇」
「うぬぐぐぐ…」
イントレピッドと関係を持っていた事が明らかになった
どうやら、本当に付き合ってはいた様だ
「どうなのリチャード」
「うぬぐぐ…分かった‼︎ちょっと待ってろ‼︎」
リチャードは園崎を立たせた後、一旦リングから降りた
「Sorryソノザキ…つい本気を…」
「いえ…油断大敵と言う言葉を忘れていました…中将とはお付き合いを⁇」
「えぇ。ちょ〜っと根に持ってるの…」
イントレピッドの笑顔が怖く感じた
「おっしゃこーい‼︎」
グローブを着けたリチャードが来た
「Come On‼︎リチャード‼︎」
リチャードがリングに上がり、ゴングが鳴る‼︎
「リチャードっ‼︎どうしてっ‼︎私とっ‼︎別れたのっ⁉︎」
「あいつをっ‼︎守らなくちゃっ‼︎ならんからだっ‼︎」
空前の様な凄まじい攻防がリングで繰り広げられる
「私の事嫌いになった⁉︎」
「嫌いじゃないさ‼︎」
園崎はその二人をずっと眺めていた
自分を一撃で打ち負かした人が目の前に二人もいるのだ
3分後…
「私と別れてどうよリチャード」
「とても残念だと思いましゅ…」
ボッコボコにパンチを入れられ、リング上で正座させられ、シュンとしたリチャードがいる
「言い訳しない⁇」
「しましぇん…」
「まっ‼︎いいわっ‼︎リチャードボッコボコに出来たし‼︎今日は許したげるっ‼︎」
「ありがとうございました…」
「え⁇何て言ったの⁇聞こえないわ⁉︎」
聞こえてるはずなのに、ワザと聞こえないフリをし、グローブを付けたまま耳を傾げるイントレピッド
「あ…あ…アイダホ娘‼︎」
リチャード、最後の反撃
「よしっ‼︎リチャード‼︎今日は貴方をボッコボコにするわ‼︎」
イントレピッドは笑顔でグローブをバンバン鳴らし、リチャードに近付く
「よしっ‼︎ソノザキ‼︎イントレピッドの戦い方を見たな⁉︎」
「…嘘ですよね」
「リチャード⁇部下に振るのは良くないわ⁇」
「私が相手する‼︎」
出入り口から現れたのは…
「キヨシモ‼︎」
「き〜ちゃん強いよ‼︎」
出入り口には、グローブを付け、腕を組んだ清霜がいた
「あはははは‼︎いいわ‼︎かかってきなさい‼︎」
イントレピッドは内心舐めていた
こんな小さな子に私が負けるはずない。と
「止めて下さいよ中将‼︎」
流石の園崎も止めに入る
「キヨシモ。やめるか⁇」
「やるっ‼︎」
しかし清霜のやる気は満々
「清霜ちゃん‼︎ボクシングした事は⁉︎」
「ないっ‼︎でもさっき見たから大体分かった‼︎」
「中将。止めましょう‼︎」
「やってやれキヨシモ‼︎」
カーンとゴングが鳴る
「…仕方ないっ‼︎」
試合中のリングは神聖な場所
自分が入って良い場所ではないが、今は緊急事態だ
園崎はリングの縁に手をかけ、登ろうとした
「おじいさまの言うこと聞かない人は…誰だぁーーーっ‼︎」
園崎が止めに入ろうとした瞬間、リング上に倒れて行くイントレピッド
「カンカンカーン‼︎試合終了ーっ‼︎」
「き〜ちゃんの勝ちっ‼︎」
嬉しそうにガッツポーズをする清霜の傍らで、園崎は腰を抜かしていた
「何て無謀な…」
園崎はしっかり見ていた
清霜は開始直後、イントレピッドの懐に入り、まずはボディに右フック
その後ジャンプし、顔面に左フック
そして最後に掛け声と共に右アッパーを顎に直撃させていた
「流石はリチャードの孫ね…次は本気で行くわ‼︎」
「キヨシモ。どうする⁇」
「やるっ‼︎」
園崎は開いた口が塞がらないまま、何も言えずにいた
自分の拳は、一体なんだったのか…
ゴングが鳴り、再び始まる二人の試合
「えっと…確かイントレピッドさんのやってたのは…」
ボソボソ言う清霜を前に、イントレピッドはどんどん近付いてくる
「よいっ、しょっ‼︎」
再び倒れるイントレピッド
今度は完璧にダウンしている
「き〜ちゃんの勝ちっ‼︎」
清霜は高身長なイントレピッドを前にジャンプして飛び上がり、いつもの笑顔で子供らしい清霜の笑顔が消え、一瞬本気の顔を見せた後、渾身の右ストレートをイントレピッドの顔面に当てた
横で見ていた園崎は、清霜を”カッコイイ”と思い始めていた
自分より遥かに身長が高い強大な相手に少しも臆する事なく、清霜は突っ込んで行き、勝利を掴み取った
自分には無いカッコ良さだ
「はっ…‼︎」
軽く飛んでいた意識から目覚めたイントレピッドの前に、清霜が来た
「楽しかった‼︎ありがとうございますっ‼︎」
「貴方強いのね‼︎気に入ったわ‼︎此方こそありがとう‼︎」
「楽しかった…」
清霜はボクシングを楽しんでいた
園崎は忘れていた…
そっか。少しボクシングを重荷に感じていたんだ、俺…
楽しまなきゃダメだな‼︎
清霜ちゃんみたいに‼︎
リングから清霜を肩車したイントレピッドが降りて来た
「キヨシモ。誰に習ったんだ⁇」
「おじいさまとイントレピッドさんのやり方見てただけ‼︎」
「見てただけ⁉︎」
「うんっ‼︎」
「ふふっ。それは敵わないわねっ…」
清霜の事で笑い合う二人を見て、もしかしたら夫婦になっていたかも知れない二人を少しだけ垣間見た園崎
案外お似合いだったのかと思う傍らで、リチャードはやはり尻に敷かれるタイプなのか…と思っていた
「楽しむ、かっ」
そんな三人を見て、園崎は自分の右手を見て微笑んでいた
その後、園崎がまた少し強くなったのは言うまでもない…
園崎…ボクサーパイロット
サンダース隊三番機、ファイアクラッカー
少し前までヤンキーだったのを、リチャードが引き抜いて来たスポーツ刈りの青年
横須賀に来てから素行が良くなり、パイロット技術も高い
負けの経験を次に活かせる結構凄い奴
現在清霜に弟子入り志願中