貴子さんは作中屈指の良妻
清霜ちゃんにどんな料理を教えるのかな⁇
「お父様起きて‼︎朝ぁぁぁあ‼︎」
「ん…清霜か⁇」
時計を見ると朝7時
ひとみといよは既にいない
ベッドの脇には、エプロンを着けた清霜がいる
「昨日は貴子さんに何教えて貰ったんだ⁇」
「えっとね‼︎お布団の敷き方と、温かい牛乳の作り方‼︎朝はご飯の作り方‼︎今からお洗濯のやり方と干し方‼︎」
「そっかそっか。ちゃんと言う事聞くんだぞ⁇」
「うんっ‼︎き〜ちゃん、お父様の為に朝ご飯作ったんだよ‼︎」
「おっ‼︎マジか‼︎くぁ〜っ…」
「来て‼︎」
アクビをした後、清霜に手を引かれて食堂に来た
「おはようマーカス君‼︎」
キッチンにいる貴子さんの機嫌がいつもより良い
いつも良いのだが、今日はもう一段階良い
「おはようございます。清霜はどうですか⁇」
「ビックリする位飲み込みが早いの。私の言った事全部メモして覚えてるわ⁇」
「誰に似たのかしらね⁇」
朝ご飯を食べていたローマがニヤリと笑う
「ローマまで言うか‼︎」
「マーカス君に似たのよっ‼︎ねっ⁇」
貴子さんがウインクをしてくれた後、清霜を連れて洗濯物を干しに行った
「そりゃあ貴子さんに憧れるわ…」
「まっ。ビビリはヤンキーだかりゃな」
ジャーヴィスにほっぺたを引っ張られながらも、アークは俺の事を言う
「そうね。キヨシモは勤勉な子だわ」
「清霜は⁉︎」
微笑みながら母さんまで向こう側に回る
「まっ。あれ。オトンはオトン。清霜ちゃんとは違う優しさあるよ」
「グラーフ…」
「その分マーカスは子供に好かれてるじゃないか。あの雷電姉妹がお前にだけは懐いてる」
「なるほど…」
隊長とグラーフに言われ、満更でもない気分になる
「あいっ、ろ〜じぉ‼︎」
「き〜しゃんのつくったあしゃおはん‼︎」
ひとみといよが持って来てくれた朝ご飯
目玉焼き
ウインナー
食パン
ホットミルク
そして何故か餃子
清霜でも簡単に作れて、尚且つお腹が膨らむ物が置かれて行くが、餃子が気になる
「頂きます」
ひとみといよは俺が朝ご飯を食べたのを見届けると、器用にキッチンの横の扉を開け、洗濯物を干す場所に行った
10分もすると朝ご飯を食べ終え、お皿を流しにいたはまかぜの所に返しに来た
「ごちそうさん」
「今日は私ではないです」
「あ、そっか」
はまかぜが笑う
「清霜さんは勤勉ですね。マーカスさんに似ています」
「お前は俺の味方かっ」
「いつだって私は味方ですよ」
淡々と話しているようだが、はまかぜは笑っている
「またグラタン作ってくれよ⁇最近寒くて敵わん」
「勿論です」
「あぁ、そうだ。何で餃子があったんだ⁇」
どうしても気になっていた事をはまかぜに聞いた
朝ごはんはパッと済ませたが、餃子は中々美味かった
しかし、何故朝から餃子なのか…
それも3つも
「清霜さんが貴子さんをマネて…」
「…あっ」
そう言えば、貴子さんは握力だけで餃子を作る
皮と餡を手に置き、一気に握り締める
すると、何故か熱々の餃子が出来上がる
しかも味は一級品
ただ、その時の貴子さんの顔がかなり怖いので、隊長でさえ直視出来ない
それを清霜はマネて”出来た”と言う事になる
「既に戦艦並の力はあるのでは…」
「う〜ん…」
はまかぜと同じく、腕組みをしながら顎に手を当てて頭を抱える
「凄い顔でしたよ、清霜さん」
「よし分かった‼︎やめだ‼︎」
「ふふっ。はいっ‼︎」
はまかぜと会話した後、工廠に来た
《創造主様》
「親潮か」
PCの前に座ると、待っていたかの様に親潮から通信が入った
それもテレビ電話だ
「段々様になって来たな⁇」
《ありがとうございます》
親潮はインカムを付けて画面を見ていた
ちょっと若いオペレーターと言っても通用する位に型にハマって来ている
《ジェミニ様からの伝言で、清霜様は如何なさっているのかと》
「ちゃんと貴子さんに着いて行ってるよ。アイツは何してるんだ⁇」
《えと…その…》
横須賀の事を言われ、親潮の目が泳いだ
「…カメラ向けてみ⁇」
《…畏まりました》
親潮が画面から離れ、カメラを動かした
「…」
《…》
《…ごっ》
リクライニングを倒し、イビキをかいている横須賀が映った
「…清霜は凄い真面目だぞ」
《割りますか⁇》
親潮の目の前には、横須賀の鼻ちょうちんがある
「仕事は残ってるのか⁇」
親潮はまたカメラを動かした
《これくらい残ってます》
カメラの先には、結構な量の書類の束が‼︎
「叩き割れ‼︎」
親潮はすぐに早霜辺りが使っている色鉛筆を手にし、横須賀の鼻ちょうちんに向けた
パチ
《寝てないわよ》
「目閉じて気絶は無しだぞ」
《鼻ちょうちん膨らませて遊んでただけよ。清霜はどう⁇》
「貴子さんの言う事聞いて色々してるぞ」
《そっ。ならいいわ。さ、仕事仕事〜》
横須賀はこれ見よがしに書類を手に取り、仕事を再開した
《で、では創造主様‼︎これにて‼︎》
親潮の顔が映り、通信が切れた
清霜は昼からも貴子さんの手伝いをしている
掃除をしたり、お昼ご飯を作ったり、ちょっと休憩をしては何かをする為に動いている
その度に清霜はやった事をメモにしっかりまとめている
たいほうやひとみといよが何度か遊びに誘おうとしているが、アークやローマが代わりに遊んでいる位、大人達にも清霜の真剣さが伝わっている
何が清霜を突き動かしているのか…
そんなに戦艦になりたいのか…
「ごちそうさまでした‼︎」
貴子さんと清霜が焼いてくれた夕ご飯の焼肉が終わり、大人達はコーヒータイム
清霜と貴子さんはお風呂の湯を溜めに行っている
「ありゃあマジだな…」
「貴子が教えてるのは家事だぞ…」
「タカコを信じなさい」
俺達の目線が母さんに行く…
「清霜ちゃん、もう帰るの⁇」
「お母様が今日の夜までって」
「お風呂は⁇」
「向こうで入ります‼︎」
「そっか…」
溜まって行くお湯を見ながら、貴子さんは清霜と話をしていた
貴子さんはちょっと嬉しかった
普段、隊長や俺が子供達から尊敬されているのを、貴子さんはいつも横で見ていたからだ
一度で良いから憧れられてみたい…との気持ちが何処かにあった
「清霜、戦艦になれますか⁇」
「なれるわ、清霜ちゃんなら」
貴子さんは清霜と目線を合わせるように屈み、清霜の手を握った
「戦艦には二つの役目があるの。一つは、持っている”道具”で大切な人を守る事」
「はい」
「もう一つは、大切な人の帰る場所を守り抜く事。今日清霜ちゃんに教えたのは、二つ目の役目よ⁇」
「清霜は横須賀ですか⁇」
「そうね。清霜ちゃんが守り抜くのは、横須賀になるわ。難しく考えないで⁇清霜ちゃんの出来る範囲で良いのよ⁇毎日1つでもいいの。マーカス君が居ない間、横須賀さんや、お姉ちゃん達を守ってくれる⁇」
「やれます‼︎」
「うんっ‼︎大丈夫ね‼︎」
お湯が出ていた蛇口を閉め、清霜と貴子さんが帰って来た
清霜は帰る為の準備をし、リュックを背負った
「ありがとうございました‼︎」
「清霜ちゃん、これあげるわ」
貴子さんが渡したのは、清霜サイズのエプロン
「ありがとうございます‼︎」
「マーカス君、港まで送ってあげてくれる⁇」
「分かった。行こうか、清霜」
「はいっ‼︎」
手を繋いで港まで行く間、清霜は一度だけ振り返り、貴子さんに手を振った…
「さっき貴子さんに何教えて貰ったんだ⁇」
「き〜ちゃんが戦艦になる方法‼︎」
「…そっか」
清霜は頑なに教えてくれない
男と男の秘密があるように、女と女の秘密もあるのだろう
笑顔のまま、清霜は横須賀に帰って行った…
その日以降、何故か清霜が横須賀の家事を手伝う様になったのは言うまでもない