艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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特別編 貴方に恋した一週間(9)

基地に帰り、皆が眠るのを待つ

 

今日に限って、母さんは一番最後まで起きていた

 

「母さん。義足をもう一度見たいんだ。いいか⁇」

 

「えぇ、お願いするわ」

 

母さんを工廠に連れて行き、椅子に座らせて左足の義足を外し、一つのパーツの裏を見た

 

そこにはしっかりと”Gerda”と彫られていた

 

間違いない

 

ゲルダは母さんだった

 

「オーケー。これでいい」

 

また義足を嵌め、軽く動かさせる

 

「ふふっ…」

 

「イダッ‼︎」

 

相変わらず俺の脛を蹴り飛ばす

 

しかし、今度はイタズラに笑う

 

ゲルダらしいと言えば、ゲルダらしいのか…

 

「マーカス。今日は私が寝るまで一緒にいて頂戴⁇」

 

「いいよ」

 

「ジャーヴィスは今日だけアークに預けたの」

 

「寝るまで横にいるさ」

 

母さんがベッドに入り、俺はその横で母さんの目を見る

 

「マーカス…私ね⁇昔約束をしたの」

 

「どんな約束だ⁇」

 

「とても大切な人とお別れして、その人を探しに行く約束よ…」

 

「見付かったのか⁇」

 

「どうかしら…でも、これだけは言えるの」

 

母さんは俺の手を握り、こう言った

 

「あの夏のたった数日間…あれが私の人生の中で一番輝けたわ…」

 

俺の中でも根強く残る、母さんと過ごしたたった数日

 

全てが変わり、全てが始まった

 

俺が出会うはずだった第三の男にもちゃんと出会えた

 

そして、時代も上手く動いている

 

それでも、母さんの中では未だに終わっていない

 

「その内見つかるさっ…大丈夫」

 

「ふふっ…今日も”特別な日”になったわ、マーカス」

 

また少し乙女の顔に戻った母さんの顔を見て、俺も少し笑う

 

「おやすみ、マーカス…」

 

「おやすみ…」

 

母さんの手を離そうとした

 

「なるほどっ…」

 

手には、あの日ゲルダに渡したネックレスが乗っていた

 

何十年の時を越え、今また手元に戻って来た

 

「ちゃんと約束は守れてるよ…おやすみ、ゲルダ…」

 

眠った母さんの額にキスをする

 

「おやすみなさい…リヒターさん…」

 

眠った母さんはあの日の夢を見ているのか、微笑んで寝言を言っていた…

 

 

 

 

 

次の日の朝

 

「う〜んっ‼︎気持ちの良い朝‼︎」

 

昨日の夜、スパイトはとても良い夢を見た

 

あの夏の日に戻り、一番好きな人とまた出逢えた夢を見た

 

あの日始まった長い長い恋愛は、スパイトの中で未だに続いている…

 

 

 

 

 

 

 

ゲルダ…若いスパイト

 

スパイトの絶世期の頃の名前

 

今でこそイタズラ好きで面倒見が良い母親だが、昔は快活で行動的な女の子

 

両足を失った際にカプセルに入った為艦娘化

 

つまり、何が言いたいかと言うと

 

自分の息子が初恋の相手であり、現在進行形で恋する乙女。凄いね

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