艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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231話 疑惑と謎(4)

「お母さん、嫉妬してんじゃねぇの⁇」

 

横須賀の椅子に朝霜が座り、椅子を左右に回し、その足元で照月涼月がお菓子にパクついている

 

「俺にか⁉︎」

 

朝霜は何かに気付いていた

 

「だって鹿島さんのトコだろ⁇さっきお父さん、何て言った⁇」

 

「分からん…」

 

「鹿島さんが危ないって言ったろ⁇あっからお母さん、様子変だろ⁇」

 

「あの横須賀が任務に私情挟むか⁉︎」

 

「女ってのはんなモンさ。自分の目の前で別の女の話されたらたまったモンじゃないさ」

 

「あのっ…‼︎涼月が上手く説明致しますのでっ…‼︎」

 

「気にするな。夫婦喧嘩に首突っ込むとロクな事がない」

 

涼月に心配され、自分を情けなく思う

 

しかし、手持ち無沙汰だ

 

と、思ったのも数十分

 

「ただいま」

 

何故か横須賀が帰って来た

 

「よ、横須賀…その…」

 

朝霜が目で”謝っとけ”と合図する

 

「なぁに⁇ハッキリ言いなさい⁇」

 

「その…悪かったよ」

 

「…何を⁇」

 

横須賀は一切目を合わせてくれない

 

「…鹿島の事をお前の前で言って」

 

「…」

 

目は合わせてくれたが、既にジト目

 

正直怖い…

 

「だがな‼︎任務に私情を…」

 

「アンタに棚町を裁けるの⁇」

 

その名前を聞き、息が詰まる

 

相手は一度殺めかけた相手

 

もう一度手を掛けるとなると、背負う物も大きくなる

 

「…やるさ。もう一度」

 

「やめときなさい」

 

「な、なぁ…その辺でやめとこうぜ…アタイも言い過ぎたから…なっ⁇」

 

「俺がもう一回あいつのケツを蹴り上げりゃ良い話だろ‼︎」

 

「アンタがこれ以上何か背負う背中見たくないのよ‼︎」

 

「人の命が掛かってんだぞ‼︎」

 

「そんな事アンタより分かってるわよ‼︎」

 

「あわわわ‼︎」

 

壮絶な痴話喧嘩が始まるが、お互い至って本気

 

朝霜は止めるに止められず、アタフタしている

 

「アンタ棚町の何を知ってんの⁉︎偽名って事が分かった事も知らない癖に‼︎」

 

「偽名⁇」

 

「そうよ‼︎」

 

机に書類が叩きつけられ、それを手に取った

 

そこに書いてあった名前に、体が震えた

 

「く…”倉田”…」

 

「知らないでしょうね」

 

ヤマシロの元恋人であり、健吾やワンコの学生時代をメチャクチャにした奴だ

 

俺が健吾を救出した際に一回

 

叩き落とした際に一回

 

そして、ヤマシロに聞く限り一回

 

計三回死んでいるが、これで辻褄が合った

 

奴は深海棲艦だ

 

恐らく、今まで普通なら即死の大打撃を受けた際、大怪我で済ませていたのだろう

 

「知ってるさ」

 

「え…」

 

「尚更行く理由が出来た」

 

書類を机に置き、入口のドアに足を向かわせる

 

「あ、ちょっと‼︎も、もぅ…‼︎使いたくなかったけど…」

 

俺がドアに手を掛けようとした瞬間…

 

「れ、レイく〜ん‼︎」

 

横須賀に呼ばれ、体が言う事を聞かなくなる

 

忘れた頃に放られる、サラが施した最悪の際に使う硬直コール

 

「…チクショウ」

 

ドアノブから手が離れない

 

「奥の手を使わせて貰ったわ。レイ君⁇お姉ちゃんの言う事聞く⁇」

 

「聞くから治してくれ‼︎」

 

「事が収まるまで、ここでお姉ちゃんとお座りしてる⁇」

 

「してるから‼︎」

 

「じゃあ、良い事教えたげる‼︎」

 

しかし硬直は治さない

 

横須賀はイタズラに俺に顔を近付け、耳元で囁いた

 

「彼は味方よ…」

 

「なんだと⁉︎」

 

「だから会議が早く終わったのよ。長波は特殊な子なのよ。元から深海の素質があるの」

 

「あの電話の内容は…」

 

「長波は自分から進んで深海の艤装かどうかチェックしてくれてるのよ。それに、倉田は深海について調べていた人よ⁇長波が危険ならすぐに止めさせるわ⁇だから、心配しないで。ねっ⁇」

 

「…信じていいのか⁇」

 

「お姉ちゃんを信じないなら、硬直は解かないわ⁇」

 

「分かった‼︎信じるから‼︎」

 

「そっ⁇じゃ、解いたげる‼︎レイッ‼︎」

 

「くはっ‼︎」

 

横須賀からレイと呼ばれ、ようやく硬直が解けた

 

「私ずっと言ってるわよね⁇罪を償うチャンスはあげるって」

 

「まぁ…」

 

「倉田も同じよ。棚町として、第二の人せ…第三…いえ…第よ…あぁもう‼︎とにかく反省してんのよ‼︎」

 

「そこは第二にしてやれよ…」

 

「あのっ…‼︎」

 

横須賀の引き出しの前で床に座り込んでいた涼月が立ち上がった

 

「ご迷惑をおかけして…」

 

「気にしないで‼︎棚町もいつかは言わないといけないって言ってたから、ちょうど良い機会だったのよ⁇」

 

涼月は申し訳なさそうな顔をしつつも、お菓子のカスを頬に付けているのを見て、まだ子供なんだと実感するが、涼月は涼月なりに気にしていたみたいだ

 

 

 

しばらくすると、本日数度目のノックがされ、横須賀がドアに向かった

 

「さっ、涼月ちゃん。お迎えが来たわ‼︎また遊びにいらっしゃい⁇」

 

「この度は大変ご迷惑を…」

 

「しばらく顔向け出来ないよ…」

 

「本当に申し訳ありませんでした…」

 

「申し訳ありませんでしたっ…」

 

岩井さん、ボス、ダイダロスさん、そして涼月が申し訳なさそうに頭を下げた

 

「棚町は良い提督よ⁇これを機に話す機会を増やしたらどうかしら⁇」

 

「ダイダロスさんは爆破するとしてっ…涼月はそうしますっ…‼︎」

 

「勿論です‼︎」

 

「とにかく、すぐに帰って頭を下げるよ」

 

「終わった…」

 

ダイダロスさんだけが膝から崩れ落ちた

 

「お父さん、お母さん、先に待っていて下さいっ…‼︎涼月はダイダロスさんに用事がありますのでっ…‼︎」

 

「爆破したらダメだぞ⁉︎」

 

「…」

 

「涼月、ダメだよ⁇」

 

「…」

 

涼月はただただ目を見返すだけ

 

「マーカスさんもっ…横須賀さんもっ…涼月に少し時間を下さいっ…‼︎」

 

「わ、分かった…」

 

「い、いいわよ…」

 

涼月とダイダロスさんをその場に置き、岩井とボスの見送りに行った

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