「っ︎」
怒りがこみ上げる
蹴り飛ばしてやろうと、一瞬頭をよぎった
「…」
だが、こいつを痛めつけても変わりはない
それに、手負いの奴を痛めつけるのは、私の掟に反する
今はこいつを…
”連れて来たで︎消し炭にしたる︎”
「…入渠させろ」
”へ⁇”
「効果があるかは分からんが、この機体を入渠させろ。これは命令だ」
”鹵獲せぇってか…”
「痛手の奴をどうこうする趣味は無い」
”分かった︎提督に従う︎”
妖精からロープを貰い、黒い機体に巻き付けた
「せーの︎」
ゆっくりだが、基地に向かって運び始めた
空が白み始めた頃、ようやく入渠ドッグに放り込めた
「よし…後は…任せろ…」
”だ、大丈夫か⁇”
「あぁ…迷惑…かけたな…」
”ワシらは大丈夫や。ちょっと休むんやで⁇”
「あぁ…」
妖精が去った後、私は浴場で横たわった
久し振りだな、動いて汗を流したのは…
さて、ドッグに入れたのはいいが、後俺に出来る事は…
しっかし、よくまぁこんなにやられたもんだ
予想した通り、コックピットは割れている
機体の至る所に銃弾の傷がある
この機体が生物なのかは分からないが、時々どこからか空気の通る音がしている
「仕方無い…」
私は一旦浴場を出た
浴場に金属音が響き渡る
時折金属音が止めば、しばらくは強い発光が浴場を眩く照らす
「…」
やられた部位をバーナーで炙りながら、それを塞いで行く
「ふぅ…」
一旦バーナーを切った時、機体が少し動いた
「目が覚めたか⁇」
《…》
「じっとしてろ」
そう言って、再びバーナーで傷口を塞いで行く
《…ワタシハ…テキ…》
「喋れるのか⁇」
《…》
「気にするな。ここは敵も味方も無い。みんな平等だ」
《モウイイ…》
そう言って、機体を少し傾けた
私はそれを止め、元の位置に戻した
「ダメだ。コックピットも直さないと」
《ワタシハ…テキ…アナタノナカマ…オトシタ》
やっぱりこいつが…
私は一瞬だけ下唇を噛み締めた
「…知ってるよ。君は随分と熟練されたパイロットだな」
《ユルサレナイ…タイセツナヒト…コロシタ》
「俺の教えが足りなかった…それだけだ」
《…》
「ま、君が話の分かる奴で良かったよ」
《…ゴメンナサイ》
「謝る元気があるなら、じっとしてろ」
《…ウン》
しばらくした後、機体の傷は塞ぐ事は出来た
後はコックピットだな…
《スゴイ…カラダガカルイ…》
「当たり前だ。私が整備したんだからな。後はコックピットだな…」
《ダイジョウブ…アトハニュウキョデナオル》
「そう…ゆっくりしろよ」
《ナマエ…オシエテ⁇》
「みんなからはパパと呼ばれてる」
《パパ…⁇》
「そうだ」
《パパ…アリガトウ》
「どう致しまして。ちょっと煙草吸ってくるな」
《ウン》
浴場を出て、ようやく一息つけた
身体中油とススで塗れてるな
私も入渠が必要かな⁇
しかし驚いた
話の分かる奴が居るなんて…
しかし、謎は多いな…
”どや⁇”
「あぁ、目は覚ました。後は入渠で治るらしい」
”提督は大丈夫かいな”
「私か⁇私は大丈夫さ」
”ほな一安心やな。後はこれ食べさしたり。提督はこっちや”
数人の妖精が持って来たのは、ボーキサイトと、笹の葉に置かれた、数貫のお寿司
確かに戦闘機はジュラルミンだが…
「分かった。ほんと、君達は良く出来るな」
”せやで。もっと褒め”
「また後でな」
再び浴場に戻ると、意識もしっかり回復して来たのか、瞳のような物が此方を向いた
「飯食うか」
お寿司を頬張りながら、黒い機体の口にボーキサイトを放り込んだ
《アリガトウ…ソレハ…オスシ⁇》
「知ってるのか⁇」
《ウン…ズイブンムカシニタベタヨ⁇》
「え…」
お寿司を食べる手が止まった
「何…だって…⁇」
《コノカラダニナルマエ二、タベタコトアル》
「お前まさか…はは、でもそんなハズ…」
そして、彼はとんでもない事を言った
《ボクハモトモト、パイロットダッタンダ》
「…」
なんて事だ…
元パイロットだと⁇
《ナイショニシテネ⁇》
「あ、あぁ。もちろんだ。そうだお前、名前はあるのか⁇」
《ボクノナマエハ”フィリップ”》
「フィリップか…良い名だ」
艦載戦闘機”フィリップ”が、艦隊の指揮下に入ります︎
フィリップ…楽園に不時着した正義心を持った深海凄艦の艦載機
何処かの艦娘に撃たれて不時着した深海凄艦の艦載機
不時着した所をパパ提督に助けられて以降、たいほうの艦載機として彼女や基地の周辺の警備にあたってくれている
装備は照明弾とロケット弾2発とパパ提督と連絡が取れる無線機