艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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241話 私の秘蔵っ子(2)

「ぐへぇ…」

 

きそと貴子さんが横須賀に着く少し前、レイの試験が終わり、香取先生の前で机に突っ伏していた

 

「マーカス君」

 

「大尉じゃねぇのかよ…」

 

「大尉じゃないわ。中佐よ」

 

「は⁉︎」

 

中佐と聞いて一気に起き上がる

 

「あ〜大変大変‼︎間違えて中佐の試験を出してしまいました‼︎」

 

香取先生は半笑いのオホホ笑い

 

「こんのババア…やりやがったな⁉︎」

 

「先生も胸を張れます。私のアカデミーからこれだけ高官が出れば」

 

「まっ、確かに張ってるな。態度もデカけりゃ胸もデカイ、正にババアだ‼︎」

 

チェーンで括り付けられているので、身振り手振りと表情で香取先生をおちょくる

 

「言わせておけばマーカス君…少しお仕置きが必要です…ねっ‼︎」

 

渾身のチョークショットがレイの眉間を狙う‼︎

 

「よっと‼︎」

 

それを毎度毎度最も簡単に右手の人差し指と中指で挟んで止めるレイ

 

「返品だっ‼︎」

 

いつもと同じく、香取先生の髪が揺れる位のスピードで黒板にチョークを返した

 

それでも香取先生は真っ直ぐな視線をレイから外さない

 

「眉間から12cmズレてますよ⁇」

 

「ワザと外したんだよ。昼飯食ってくるから、後で一応結果だけ教えてくれ」

 

いつの間にかチェーンを外したレイが立ち上がった

 

「あらっ⁉︎ちょっと‼︎どうやってチェーン外したの⁉︎」

 

「んなもん朝飯前だ。何なら試験前に外せた」

 

「…なら次はもっと強力な奴を準備しないといけませんね…」

 

口元に手を当てて目線を外した香取先生は、次はマーカスをどう括り付けようかと悩む…

 

「物騒な事言うな‼︎」

 

「冗談ですよ。先生も一緒して良いかしら⁇」

 

「行こう」

 

 

 

 

香取先生と表に来た

 

「何で腕組むんだよ…」

 

表に出てすぐ、香取先生が腕を絡めて来た

 

「たまにはいいでしょ⁇」

 

「オジンが好みじゃなかったのか⁇」

 

「そうね。最低でもウィリアムやエドガー位は欲しいわ…それでも、たまには人肌恋しい時もあります」

 

「…パスタでいいか⁇」

 

「えぇ」

 

腕を組まれたまま、リベッチオパスタに入る

 

サンダーバードの二人は、香取先生と食事となると何故か香取先生に麺系を食わせる

 

隊長はちゃんぽん

 

マーカスはパスタだ

 

「あ‼︎レイ‼︎」

 

「マーカス君‼︎」

 

リベッチオパスタにはきそと貴子さんが居た

 

香取先生と共に二人の横の席に腰を降ろしながら話を続ける

 

「昼食べに来たのか⁇」

 

「そんな所っ‼︎ねっ⁇きそちゃん⁇」

 

「うんっ‼︎」

 

きそはミートスパゲティを口の周りにいっぱい付けて美味そうに食べている

 

貴子さんは貴子さんで、既に周りに数枚の空皿が重ねられている

 

「マーカス君は試験どうだった⁇」

 

「ダメダメのダメ‼︎そらもうからっきし‼︎」

 

昇級する気などサラサラ無い

 

今のポジションが一番しっくり来るのだが、上からの重圧(横須賀、香取先生、総司令)が凄く、嫌々受けに行った結果グルグル巻き試験が始まり、余計に昇級する気がなくなっている

 

「中佐に昇進ですね、マーカス君⁇」

 

「あらっ‼︎やったわね‼︎」

 

「ははは。俺が中佐なんてないない‼︎ミートソース1つ‼︎」

 

「私にも下さい‼︎」

 

奥からリットリオの「は〜い」が聞こえて来たので、注文は出来た

 

「レイが中佐ね〜、僕も階級欲しいなぁ〜」

 

駄々をこねながらもパスタを食べるきそ

 

貴子さんは机に肘を置きながら嬉しそうにそれを眺めている…

 

「あ‼︎そうそう、マーカス君‼︎グリフォン、乗り心地良かったわ⁇」

 

「へぇ⁇珍しいな⁇何処行ってたんだ⁇」

 

「アレン君の所っ‼︎」

 

「アレンさんの所‼︎」

 

「アレンが貴子さんを呼ぶだと⁉︎きそは分かるが…」

 

きそがアレンに呼ばれるのは普通に分かる

 

訓練の相手、AIの改修、装備の相談…

 

ただ、貴子さんが呼ばれる理由がいまいち分からなかった

 

ありえるとしたら、アイちゃんか日進に料理を教えに行った…位とは思うが

 

「アレン君とネルソンさんに子供が出来たのよっ」

 

全く違う答えが飛んで来た‼︎

 

ネルソンの妊娠の検査なら貴子さんが行ったのは納得すると

 

「三人目か‼︎良かった良かった‼︎ありがとう、貴子さん。助かりました」

 

「ねっ⁇」

 

「ふふっ、ホントねっ‼︎」

 

「何だよ、二人して笑って」

 

「レイは三人目って言うかなぁ〜って」

 

「日進、アイちゃん、んで今の子だろ⁇」

 

「あ、そっか。日進ちゃんが長女なんだよね」

 

「ネルソンのネックレスにずっと居たからな」

 

「レイも覚えてたんだね、ダッキ時代の日進」

 

「分かりやすく言うとな、俺がアイリス、アレンがダッキだ」

 

「分かりやすいわ‼︎お互いの初めてのAIなのね⁇」

 

「そっ。それにダッキは高性能だ。ダッキが居なきゃ、親潮の適応変化機能は無い。ありがとう」

 

「美味しそうね」

 

空気を読み、何も言わずに笑顔だけのリベッチオがミートソースパスタを持って来てくれた

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