貴子さんが何らかの理由で武蔵に戻る中、ヒュプノスはマーカスの横に座ります
お祭り会場〜半壊〜
「マズイ‼︎貴子達が潰す前に食うぞ‼︎」
私達が来た時点で、屋台はほぼ壊滅
残っているのは浦風の屋台位しかない‼︎
「たこあきくらしゃい‼︎」
「ひおしまあきもくらしゃい‼︎」
「焼きそば三つだ‼︎」
「任しちょき‼︎」
私達の両肩に乗ったひとみといよは、浦風が焼き上げて行くたこ焼きや広島焼きを眺めてヨダレを垂らす
「あかしちぉき‼︎」
「ひおしまあき、じぅあ〜ってちてう‼︎」
いざ浦風が注文品をパックに詰めてくれた時、背後に誰かが立った
「たか…」
「振り返るな…」
「ぱくってさえう⁇」
「丸呑みだ…」
背後に立ったのは、腹を空かせて殺気立った貴子
「ウィリアム」
「うぃいあむって」
「あせだあだあ」
いよが言う通り、背後に立つ貴子の殺気で冷や汗が出ている
振り返らずに、背中越しに貴子に返事を返す
「な、なんだ貴子…」
「そこを退いて。私、それ食べたいの」
今の時間は貴子達のターン
貴子からすれば、私がここにいる事自体がおかしい
「す、すぐ退きます‼︎」
「ひ〜っ‼︎」
「こあい〜っ‼︎」
「出来たよ〜。はいっ‼︎たんとおあがり〜‼︎」
「ありがとう‼︎じゃあな‼︎」
「さいなあ〜‼︎」
「またくうお〜‼︎」
浦風から三つの袋を貰い、それぞれが一つずつ持って、その場から全速力で走り去った
「貴子さん‼︎どないしようかのう‼︎」
「全部頂ける⁇」
「ちょっち待っててぇな〜」
有無を言わさず、貴子さんは浦風の屋台から全ての商品を購入
数十分後、貴子さんの手には大量の袋が下げられていたが、勿論数分で消えた…
盆踊り会場〜本部横ベンチ〜
「お父様」
ベンチに置いてあったタオルで汗を拭いた瞬間、ヒュプノスが来た
「おっ‼︎ヒュプノス‼︎楽しんだか⁉︎」
「えぇ、雷電姉妹とも、大佐二人とも楽しめたわ」
会ってすぐに目が行ったのは、谷間に挿してある二本のイチゴ飴
「イチゴ飴買ったのか⁇」
「えぇ。取って下さる⁇」
胸の下で腕を組み、持ち上げて見せながら悪そうに微笑むヒュプノス
午前中におっぱいの話をしたからイタズラ心が刺激されたのだろう
「ありがとなっ」
いつもの横須賀で慣れているので、何のためらいもなくイチゴ飴を取り、ヒュプノスと一緒にベンチに座った
「案外普通に取るのね⁇」
「ふっふっふ…横須賀で慣れてるからな‼︎」
「次は別の方法でやる事にするわ」
「娘にそんな感情は抱かないさっ」
イチゴ飴を咥えながら、未だ余韻が残る盆踊り会場を眺める
「あら。私がそうだと言っても⁇」
「ヒュプノス⁇」
ヒュプノスもイチゴ飴を咥えながら、太ももに肘を置いて手を顎に置き、イタズラな目で俺を見ている
「ふふふ…じゃなきゃ誘惑しないわ⁇」
「…ありがとう」
「い〜え、どう致しまして」
数秒の間が空き、二人とも口の中でイチゴ飴を転がす
「アイリスに手出しちゃやぁよ⁇」
「どうしたっ⁇嫉妬を覚えたかっ⁇」
ベンチに手を置きながら、返事を返すも互いに視線は前を向いている
「あの子、お父様の好みに合わせてボディーを造ったのよ」
「ははっ‼︎人の事言えるのか⁇」
ヒュプノスは視線を落とした
「あら。言えなかったわ」
「心配するな、みんな好きさ」
ヒュプノスは無言のまま、ズリズリと横に寄って来た
「…お父様に恋するのはおかしいかしら⁇」
「恋愛は自由だ。愛に国境は無い」
「まるで自分が浮気でもしてるみたいな言い草ね」
「今してるだろ⁇」
「ふふっ…イケナイ関係も悪くないわ」
ヒュプノスはイチゴ飴の割り箸を指で弾いてゴミ箱に入れ、立ち上がる
「またデートして頂戴⁇」
「いつでもっ」
ヒュプノスは最後もイタズラに微笑みながら、屋台の方に歩いて行った…
「レイ‼︎」
次は横須賀が来た
「ひとみちゃんといよちゃんは隊長と食べに行ったわ⁇」
「おたしゅけ〜‼︎」
「ひぃ〜‼︎」
「助けてくれ‼︎」
言ったしりから肩にひとみといよを乗せた隊長が走って来て、俺の肩を掴んだ
「たっ、たかっ、貴子‼︎貴子が‼︎」
「ウィリアム」
貴子さんが来た
目が光っている所を見ると、食関連で怒らせたのだろう
「はわわ…」
隊長は見た事ないスピードで俺の背中に隠れた
「何したんだよ…」
「貴子のたこ焼き一個食べただけだ‼︎」
照月と貴子さんの食を少しでも邪魔する事は、死を意味する
「隊長…重罪ですよ…」
「みんなで食べてたから良いかなって思ったら、貴子も食べようとしてたらしいんだ‼︎」
「マーカス君」
ザッ‼︎と音を出し、貴子さんが目の前で止まった
「は、はひぃ…」
「死にたくないなら屈むんだなぁ‼︎」
「ひぃ‼︎」
む、武蔵に戻ってるじゃねぇか‼︎
「た、貴子しゃん…」
「よっこら」
貴子さんは何のためらいも無く隊長を肩に乗せた
「あー‼︎助けて‼︎嫌だ‼︎俺にはまだ夢があるんだー‼︎」
「ははは‼︎少し借りて行くぞ‼︎」
「は、はい…」
「楽しんで下さいねー‼︎」
貴子さんに肩に抱えられてジタバタする隊長を見送る…
「ぱぱしゃんど〜なうの⁇」
「てんぷあにさえう⁇」
横須賀の足にしがみ付いて、ガクブル状態のひとみといよ
基地で悪い事やイタズラをすると、貴子さんに天ぷらが唐揚げにされるかの二択を迫られる
勿論貴子さんがそんな事するはずはないが、今は武蔵だ
隊長は多分天ぷらになるだろう
「みて‼︎」
「たかこしゃん‼︎」
屋台の方にいた武蔵は貴子さんに戻り、隊長と腕を組んで屋台を回っていた
前回、居住区では出来なかった事を、貴子さんは本当はしたかったのだろう
放っておいた方が良さそうだ
「ひとみちゃん」
「うんっ‼︎」
「俺達も何か余りもん食べに行くか‼︎」
「今なら安いわよ‼︎」
「あ〜、ねむたい〜」
「くうくうちてちんろい〜」
数秒前までピンピンしていたひとみといよが急にジェスチャー込みで疲れをアピールし始めた
「沢山踊ったものね‼︎」
「…」
「ひとみといよちゃんあ、おしゃきにしつえ〜ちますえ」
「さいなあちま〜す」
「二人で戻れる…」
「横須賀っ」
二人を心配した横須賀を止める
俺の声に反応して振り向いた横須賀が、再びひとみといよの方を向くと、一目散に走り去るひとみといよが見えた
貴子さんと隊長を見て、二人なりに気を使ってくれたのだ
「…行きましょうか‼︎」
「行こう‼︎」
俺と横須賀の夏祭りは、こうして流れて行った…
「がんび〜しゃんたこあき‼︎」
「いんとえぴおこのみあき、おいち〜‼︎」
「いっぱい、食べてね‼︎」
「沢山あるわよ‼︎」
走り去ったひとみといよの行き先はパイロット寮
夏祭りの余韻を楽しむ為、ガンビアとイントレピッドがたこ焼きとお好み焼きを焼いていたのを二人は知っていた
リチャードとヴィンセント、ジョンストンとサム達と一緒にそれらを食べながら、二人の夏祭りも流れて行った…