艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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252話 博士の愛した”もの”(2)

「そう言ってくれるお父様だからこそ、みんなお父様を護ってくれるのよ」

 

「あ〜参っちゃったな〜。大淀さん、降参しよっかな〜ヒュプノスちゃんが来たら無理だよ〜」

 

わざとらしい行動を見せるオーヨド博士

 

あれは諦めていない目だが、次の行動が読めない

 

「ならそれを寄越しなさい」

 

ヒュプノスはタブレットに手を伸ばす

 

残り三分…

 

オーヨド博士から奪えるのか⁇

 

「でも…諦めるのはまだ早いかなっ‼︎」

 

オーヨド博士の手には別の拳銃が握られている

 

「ヒュプノス‼︎下がれ‼︎」

 

「おっ‼︎さっすがレイ君‼︎自分が造った武器は覚えてるねぇ‼︎」

 

「撃ちなさいな」

 

「ほうほう。どうしてもレイ君を護るかね⁇」

 

「えぇ。愛されてると分かった以上、それを返さない人はバカよ」

 

「興味深いねぇ。今後の研究課題にさせて貰おっかなぁ⁇」

 

「好きになさい。撃つなら早くしなさい。トロいのは好みじゃないの」

 

「じゃっ、お言葉に甘えてさようならぁ〜」

 

何の躊躇もなく、オーヨド博士はヒュプノスに向かって引き金を引いた

 

今度は体が動いた

 

ヒュプノスを抱き寄せて背後に隠し、左手を前に出す

 

「あははははは‼︎思った通りだよ‼︎レイ君‼︎」

 

「何だ…⁇」

 

オーヨド博士は確かに引き金を引いた

 

だが、銃口から出たのは紐で繋がった万国旗とクラッカー

 

「ふふっ…やっぱり」

 

抱えていたヒュプノスがクスクスと笑う

 

「お父様は絶対に私を護ってくれる。それを大淀は見たかったのよ」

 

「いやぁ〜、これでレイ君が艦娘に懐かれる理由がようやく分かったよ‼︎」

 

「騙したのか⁇」

 

「そういう事になるかね⁇」

 

「騙したのは悪かったわ。ほら、お父様の好きなお胸、触らせてあげるから」

 

「大淀さんのパンツをもう一回見せよう‼︎」

 

「その前に赤城を消すな‼︎それを寄越せ‼︎」

 

「あぁ、これ⁇」

 

オーヨド博士の手の中にあるタブレットに表示されているストップウォッチの時間は、後三秒

 

「やめろ‼︎何考えて」

 

ストップウォッチが0を示すほんの少し前、オーヨド博士とヒュプノスはある方向を向く

 

チーンと音がしたのは電子レンジ

 

「さー‼︎出来た出来たー‼︎」

 

「それは何て言うの⁇」

 

オーヨド博士とヒュプノスは、まるで親子の様に電子レンジの前に立ち、中から何かを取り出す

 

「これは焼き芋‼︎レイ君の娘がいっぱい作れるから、今度はもっと美味しいのを食べるといいよ⁇」

 

「あら。ありがと」

 

「焼き芋のタイマーだと…」

 

「ふふふ…さ、赤城、起きて‼︎」

 

オーヨド博士の一言で、赤城は体を起こした

 

「これ…」

 

赤城が気になるのは焼き芋

 

指を揺らしながら、何度も焼き芋を指差しながら、俺の方を見る

 

「これは焼き芋だ。赤城も食べような⁇」

 

「やきーも」

 

赤城は物欲しそうにオーヨド博士の持つ焼き芋に手を伸ばす

 

「あげる代わりに、大淀さんからの最後の命…いや、お願いだ」

 

「おねがい」

 

「これからあのお兄さんが赤城を護ってくれる」

 

「おとうさん」

 

「マジかねレイ君」

 

「もう懐かれたの⁇」

 

「赤城。その人は大淀さんだ」

 

「これ」

 

赤城が欲しそうにしているのは、オーヨド博士が掛けている眼鏡

 

「これは眼鏡だ」

 

「めがね、おーよど」

 

「私はヒュプノス。お父様の長女よ」

 

「ひゅぷのす」

 

赤城はオーヨド博士もヒュプノスもしっかり認識し、また一つ物事を覚える

 

「めがね、ひゅぷのす」

 

「う〜む…やはり大淀さんはメガネかね…」

 

オーヨド博士は、子供達からメガネと覚えられる事が多い

 

ひとみといよもメガネと覚えている

 

「やきーも」

 

「あぁ、そうだったね‼︎ほいっ、どうぞ‼︎」

 

ようやく赤城は焼き芋にありつけた

 

だが、食べ方が分からず、俺をジーッと見ている

 

「私スプーン使うわ」

 

「すーぷん」

 

昼間に覚えたスプーンと言う単語

 

ぎこちなさは残るが、それが何かは伝わる

 

「赤城。ヒュプノスにスプーン下さいって言ってごらん⁇」

 

「すーぷん、ください」

 

「はいっ、どうぞ」

 

「赤城。何かをして貰ったら、ありがとうって言ってごらん⁇」

 

「ひゅぷのす、ありがと」

 

「ふふ。これ位いつでもっ」

 

ヒュプノスからスプーンを受け取り、赤城はそのままヒュプノスの横に着いた

 

「さ〜‼︎食べよ〜食べよ〜‼︎」

 

オーヨド博士が工廠の床にマットを敷いて、四人がそこに座り、焼き芋を食べ始める

 

「こうやって皮を剥くの」

 

「かわ、むく」

 

ヒュプノスと同じ様に、赤城も焼き芋の皮を剥いていく

 

「そうしたら、中の黄色いのをこうして…食べるの」

 

「いただきます」

 

「あら、そうね⁇いただきます」

 

ヒュプノスは普段プールの先生をしているので、誰かに何かを教えるのが上手い

 

それに、今目の前で俺の代わりに赤城に教えているヒュプノスのその姿は、俺の視線を一点に集中させ、今しばらく見せていなかった笑顔をようやく出す事が出来た

 

「中々イケるわね⁇」

 

「最近冷え込んで来たからな…ヒュプノスは大丈夫か⁇」

 

「えぇ。この水着もそうだけど、私自体プールに入りまくってるせいか、あまり寒さを感じないの」

 

「さむさ」

 

ヒュプノスと同じ様にスプーンで焼き芋を食べている赤城は、単語単語に反応を示した

 

「ぶるぶる〜ってする事だ。今度、ヒュプノスとアイス食べに行こうな⁇」

 

「あいす」

 

「ふふっ…楽しみにしてなさい⁇」

 

その場にいた四人で作る”IFの家族の形”が、そこにあった…

 

その瞬間に”あぁ…これが家族の形…”と、気付いていたのは、たった一人…

 

 

 

 

「私はこれで帰るわ⁇お父様、おやすみなさい」

 

「ありがとうな、ヒュプノス」

 

ヒュプノスはここ最近見せ始めてくれた優しい笑顔を俺に見せた後、オーヨド博士の方を向いた

 

「おやすみなさい、メガネさん」

 

「うぬぐぐぐ…レイく〜ん‼︎ヒュプノスちゃんがイジってくるぅ〜‼︎」

 

「はいはい。博士も寝ろよ⁇」

 

「う〜…あ、ヒュプノスちゃん。大淀さん、ちょっとレイ君に用があるんだ」

 

「そっ。なら私はっ…先に休ませて貰うわ⁇」

 

事が終わったヒュプノスは話している最中に伸びをし、宿舎へと戻って行った

 

ヒュプノスを見送った後、オーヨド博士は踵を返し、俺の方を向いた

 

「レイ君」

 

「何だ⁇」

 

「さっきの質問の続きをしたんだけど」

 

「質問は三つだろ⁇」

 

「そう言わないでよ〜。すぐ終わるからさ‼︎ねっ⁉︎お胸揉ませてあげるから〜‼︎」

 

「貧乳に興味は無いっ‼︎」

 

「う〜わ〜…そこまで言うかね⁉︎すんごい顔だよ⁉︎」

 

どうやら俺は途轍もなくヤバイ顔をしていたらしい

 

オーヨド博士は好きだが、貧乳に興味は無い

 

「…簡単なのだけだぞ⁇」

 

「オッケーオッケー‼︎と〜っても簡単‼︎すぐ答えれるよ‼︎」

 

「何だ⁇」

 

オーヨド博士は一呼吸置いた後、俺の愛した大淀の顔へと戻っていた

 

「私にも…まだチャンスはありますか⁇」

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