艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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たまには休憩しようと思います

恐らく、こんな文を書くからR-15になっちゃうんだと思います、えぇ

すぐに分かるとは思いますが、一人の艦娘のお話です


番外短編 二本の吸殻

月に一度、月の最後の日

 

此処に帰れる日が来る

 

暖簾を捲り、一番右の角のカウンター席に腰を下ろし、煙草に火を点ける

 

薄暗い店内では、只々紫煙が踊るだけ

 

「あら、帰っていらっしゃったのね…」

 

厨房の奥から、髪を背後で捲った女中が現れる

 

紫煙の匂いに誘われたのだろうか、頬を淡く紅に染めた女中は妙に艶かしいく、男の眠った本能を掻き立てる

 

いつもの、と、置かれた熱燗

 

無言で置かれた、味の濃い出し巻き卵

 

熱燗を一口呑み、卵を咀嚼する

 

煙草を灰皿の窪みに置き、夢中でそれらを貪る

 

香の代わりとなった紫煙が、女中の前を踊る

 

霞んで見える…

 

女中を見ていると、肢体が火照る

 

それを燗の所為にし、その柔肌を抱き締める

 

「あら…今日は如何されました⁇」

 

朝に鳴く小鳥の囀りの様な、甘い甘い女の声が、より一層欲望を走らせる

 

「ん…」

 

何度か目の口付けを交わす

 

それはまだ浅はかな経験すら無い様な、純情無垢

 

その上下に付いた赤い果実を、汚す

 

無骨な手が、橙色の花弁を少し、また少しと毟っていく

 

女中はゆっくり女の瞳になる

 

その月を映した瞳を見て、もう一度紫煙を炊く

 

背徳的な光景の中、女は自身を汚した腕を抱き留める

 

煙草を灰皿に潰し、暖簾に手をかける

 

「また、いらっしゃって⁇」

 

振り返る首が、暫く止まる

 

拠所に戻った女中を見て、暖簾を捲る

 

薄暗い店内に残されたのは、空の熱燗、そして皿

 

「また…」

 

そして残る、二本の吸殻

 

女中は愛おしそうに吸殻に触れ、一粒の泪を落とした

 

 

 

 

 

ここは、空の勇士の拠所

 

ここは、空の勇士の道標

 

ここは、空の勇士の墓場

 

 

 

女中の名は”鳳翔”

 

猛々しく、儚い空の勇士の母の胸

 

居酒屋”鳳翔”は、今日も一人の銀翼が、空に還るのを見届ける…

 

 

 

 

 

 

鳳翔…居酒屋”鳳翔”の女中

 

女将じゃなくて女中

 

閉店した後も店を開け、空で散ったパイロットが最後に一杯呑みに来るのを待っている

 

時々手を出されるが、みんな何故か寸前で止めるので、ちょっと欲求不満気味

 

大体の人に出すのが、店で人気の品である熱燗と出し巻き卵。

 

鳳翔が心配で時々同じ人が還って来るが、皆鳳翔とは話せない

 

 

 

パイロット…彷徨い人

 

空で散った人。最後には大体の人が居酒屋”鳳翔”に訪れる

 

彼女の世話になったパイロットは多く、最後の別れと礼を兼ねて熱燗を呑みに来る

 

彼女に惚れたパイロットは、色んな意味で撃墜された

 

 

 

熱燗…普通の熱燗だが、何故か下戸でも呑める。酒類の注文で一番人気

 

 

 

出し巻き卵…出汁の良く効いた、熱燗にとても合う。ツマミ代わりに注文する人が多い

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