「博士。聞きたい事が一つあるんだ」
「大淀」
「あ、大淀…」
二人きりの時は大淀と呼ぶ約束だったな…
「なんだいレイ君」
「赤城の記録には、自壊とあったんだ」
「あまり大きく動くと心配かい⁇」
「まぁな…」
俺がそう言うと、大淀博士は優しく笑う
「その心配は無いよ。赤城の骨格には、マークと一緒に造ったアーマーと同じ素材を使ったんだ。あれなら、赤城が自壊する心配は無いよ」
「ありがとう」
「新しい人生を歩もうとしてる赤城にプレゼントさ‼︎あ、レイ君、そうなると新しい人生を歩もうとしてる大淀さんにもプレゼントあげないとねぇ‼︎」
「何がいい⁇」
「そうだねぇ…頬の裏側の細胞か、髪の毛数本…いや、ここは遺伝子情報が多いせい…」
「だ、ダメだダメだ‼︎な、何するんだ‼︎」
大淀博士は俺のDNAを取ろうとしている‼︎
「冗談冗談‼︎プレゼントも嘘嘘‼︎」
「おっかねぇ…」
「そうだ‼︎なら、一つヒントが欲しいね」
「答えられる範囲なら」
そう返すと、大淀博士は真面目な顔に変わる
「“あの薬”…三本ある内の一本が無くなってた」
「すまん。どうしても救わなきゃいけない人に使わせて貰った」
「そっか。レイ君が使ったのなら良かった」
「すまん」
「い〜のい〜の‼︎悪用されてたらどうしようと思っただけさ‼︎」
大淀博士は、とある薬の存在を知っている
この世に三本しかなく、それは“人を完璧な深海棲艦に出来る”薬だ
深海になれば、死ぬ以外の傷は一瞬で治せる
今でさえカプセルがあるが、その人はカプセルでは生命の維持が難しい状態にあった
俺は体を強化する為に、その内の一本を使った
どうしてもその人だけは救わなければならないと感じたからだ
「誰に使ったかは聞かないでおくよ」
「すまん」
「ヤバッ。大淀さん、地雷踏んだ⁉︎」
先程から「すまん」しか言っていない為か、大淀博士は口元に手を当てた
「そんな事は無いさ」
「…優しいねぇ、レイ君は」
大淀博士は優しく微笑む
そんな大淀博士の顔を見て、俺も微笑み返す
「あーっとぉ‼︎大淀さんはこれを試しに来たんだったぁー‼︎」
大淀博士の足元にジュラルミンケースがあるのに気付いた
「なんだそれ⁇」
「これかい⁇これはね…」
大淀博士はジュラルミンケースを開け、中にある物を取り出した
「ジャーン‼︎大淀さん特製の‼︎運搬補助ガントレットー‼︎」
「おぉ‼︎」
大淀博士の手にあるのは、恐らくアビサルケープで作り上げた左手専用のガントレット
大淀博士は性能もそうだが、外見に凝る
近未来的で、中々カッコイイデザインだ
「プロトタイプだよレイ君‼︎ロマンだよね‼︎プロトタイプって響き‼︎」
「それを試すのか⁇」
ゴト…
カチャカチャ…
「ジェミニちゃんは横須賀でも試していいって言ってくれたんだけど」
カチャカチャ…
「どうせ試すなら、ここならこの子もちょっとは活躍出来るかな、ってね‼︎」
カチャン
「どうだい‼︎」
「おぉ〜‼︎」
滑らかに動くガントレットを見て声を出す
こんなに出来の良いガントレットは初めて見た‼︎
「これで赤城にちょっとは近付けるかね‼︎」
「一つだけ聞いていいか⁇」
「ん⁇なんだい⁇」
「物凄い自然に俺に着けたな⁉︎」
そう。着けたのは俺
最初の方のゴト…は、倉田甲冑“山城”を外して、ジュラルミンケースの中に置いた音だ
「しっかしまぁ…これっ…重いねぇ…」
大淀博士は人の話を聞いていない
ジュラルミンケースに倉田甲冑“山城”をしまった大淀博士だが、持ち上がらないでいた
「仮にも深海の艤装だからな⁇」
「ちょ、ちょっと待って…レイ君、四六時中こんなの着けてたのかい⁉︎」
「まぁな。そいつがあれば、子供達を傷付ける心配は無いからな」
「どこまで優しいんだレイ君は…でだ、レイ君。着け心地はどうだい⁇」
「凄い滑らかに動く‼︎」
重い倉田甲冑を外したのもあるが、ガントレットは本当に滑らかに動いてくれている
「それには電極が組み込まれているんだ」
「電気で動くのか⁇」
「レイ君の体温で勝手に充電してくれるよ‼︎凄いでしょ⁉︎それでね、左腕に痛みが出たら、微弱な電気が発生して、痛みを緩和してくれるの‼︎」
「すご…」
凄いと言おうとして、大淀博士の顔を見た
そこに居たのは、大淀博士ではなく大淀
その顔を見て、このガントレットは俺の為に作ってくれたと理解した
「…ありがとう‼︎」
「こっちはどうしよっか⁇」
ジュラルミンケースの中に入れられた倉田甲冑“山城”
「それも大切な物だ。横須賀で保か…」
「言うと思ったよ。てな訳でレイ君、これはジェミニちゃんに渡しておくよ‼︎」
「ありがとう」
「いえいえ〜、じゃあレイ君。ちょっと試してみよっか‼︎」
「よしっ‼︎」
大淀博士と共に、涼平達がいる場所へと向かう…