今回のお話は一話しかありませんが、ローマの心情が語られます
誰にも悟られてはならない感情を抱いているローマ
唯一分かってやれるのは、身近に居た彼でした
蒸し暑くなって来たある日の深夜の基地…
「あっちぃ…」
暑くて目が覚め、誰もいない食堂に来た
「アイスコーヒーでも作るか…」
冷蔵庫を開けようとノブに手を掛けた時、誰かが俺の腕を全力で握って来た
「ひぎぃ‼︎」
飛び上がる位にビビる
忘れた頃にやって来るオバケの恐怖
「あたしが淹れてあげるわ」
腕を掴んで来たのはローマ
何故かローマは俺がコーヒーを淹れようとすると全力で止める
「アンタがコーヒー淹れるとロクな事が無いのよ」
「確かにそうかもしれんな」
言われてみればロクな事がない
大体不味いし苦いし、その後大体凄い問題が起こる
ここはローマに任せよう
ソファーに座ってテレビを付け、ローマのアイスコーヒーを待つ
「最近どうなの⁇」
「この間かなり動いてから、それからはまたいつもの日常さっ。哨戒に飛んだり、学校の見回りに行ったり、診察したり」
「頼りにされてるのよ、それだけ。艦娘にはアンタが必要だわ」
「そう言ってくれるとありがたいね」
「さ、出来たわ」
ローマがアイスコーヒーを持って来てくれた
「あたしも飲むわ。いいわね⁇」
「どうぞっ」
ローマは俺の横に座り、アイスコーヒーを飲む
「…アンタが羨ましいわ」
アイスコーヒーを半分程一気に飲み干したローマは、ため息混じりで話し始めた
「どうしてだ⁇」
「兄さんに振り向いて貰えるからよ」
ローマはずっとずっと複雑な感情を抱いている
それは、表には出せない愛情
だが、俺は何となく…
本当に何となく…
ローマの気持ちを分かってやれる気がしている
だけどそれは、俺にとっても表には出せない愛情
二人しか知り得ない、永遠の秘密だ
互いに抱える事柄は違えど、問題は同じに思えた
「兄さんは時々、リベッチオと遊んでくれてるらしいの」
「きっと気付いちゃいけないんだろうな…」
「だからこそ、見て見ぬ振りをしてるわ」
この間たいほう達とピザを食べに行った様な事を、本当はローマもしたいのだろう
「アンタなら、何となく分かってくれてるでしょ⁇」
「何となく、な⁇」
そう返すと、ローマはうっすら微笑む
そして、俺の左肩に頭を置く…
「しばらくこうさせて。いいわね⁇」
俺は何も言わずにアイスコーヒーを口にする
「アトランタはようやくアンタに懐いて来たわね⁇」
肩に頭を乗せたまま、ローマは話す
「隊長曰く、隊長に似てないらしいな⁇」
「タカコに似たのよ、きっと…」
「お⁇」
ふと、足元に違和感を感じる
ズボンの裾を誰かが引っ張っているような感覚だ
こんな時間に起きて来るのは、ひとみといよだろうと、足元を覗き込んだ
「アトランタ‼︎」
いつの間にか、寝起きで目付きの悪いアトランタが起きて来ていた
「どうやって来たんだ⁉︎」
みんなの部屋に続く食堂の出入り口を見ると、ローマが開けっ放しにしたのか、ドアが開いていた
アトランタも暑くて目が覚め、食堂に行けば誰かがいると思い起きて来たのだろう
アトランタは俺の飲んでいるアイスコーヒーを目付きの悪いまま指差している
「ちょっと見て来るわ。アトランタをお願い」
「すまん」
左肩から頭を離したローマは、再びキッチンに立った
「よいしょっ…」
アトランタを抱き上げて隣に座らせると、まだ眠いのか、俺にもたれて来た
「アトランタも暑かったか⁇」
アトランタは俺にスリスリする
一見否定に見えるが、これは肯定っぽいな
「出来たわ。アトランタ、グレープジュースよ」
氷をいくつか入れた、ストロー付きのコップをローマが持って来てくれた
中にはグレープジュースが入っており、ローマもアトランタの横に座りながらそれを渡す
アトランタはそれに気付き、早速手を伸ばしてストローを口に含む
「あ」
よっぽど喉が渇いていたのか、アトランタはグレープジュースを飲み、小さく声を出した
「そうかそうか‼︎美味しいか‼︎」
「全部飲んでいいわ⁇」
俺とローマの間に座ったアトランタは、チゥチゥ音を立てながらグレープジュースを飲む
アトランタがグレープジュースを口にするのを見るローマは、いつものツンツンした彼女と違い、あぁ、母親なんだな…と思わせる優しい顔になっていた
「ちゃんと飲めたわね」
「喉乾いてたんだろうな」
アトランタは飲んだ後のコップをローマに渡し、いつものようにお腹の前で手を合わせる
「ごちそうさま、ね⁇」
ローマがコップを流しに置きに行ってくれた直後、アトランタは俺の太ももに頭を置いて仰向けになったので、近くにあったタオルをアトランタに掛けた
「どうした⁇」
アトランタは俺の左手を掴み、自身の胸に置く
「眠たくなったんだな。よしよし…」
一瞬急に胸に置かれて驚いたが、ポンポンしてくれの合図だった
アトランタをポンポンしながら、俺は肘掛けに置いた右手で簡易の枕を作る
「あら、寝ちゃった⁇」
戻って来たローマに、アトランタは一瞬目を開ける
が、ローマと分かってすぐ、また眠りに入る
「どうしたらそんなに懐くのよ…」
「倒される事だな。顔面にパースィーが来たり、線路になったり、だな⁇」
「ふふっ。何かアンタらしいわね…」
「そりゃどうもっ」
ローマと話しつつも、アトランタへのポンポンは止めない
そんな時、アトランタが急に目を覚まし、再び俺の腕を掴む
「悪い悪い」
ポンポンの位置がズレて来たので、胸の位置に直す
どうやら、ここをポンポンされると心地良いらしい
「ローマは寝…」
アトランタの胸をポンポンする横で、先程と同じく俺の方に頭を置いて、ローマは眠りについていた
こうなるともう動けない
…どの道、アトランタが手を掴んでいて離してくれないからな
この状況に身を任せて、俺も目を閉じる…
朝…
「アトランタ‼︎」
寝室にアトランタがいないと気付いた貴子さんが飛び起きて来た
しかし、俺達三人は寝息を立てている
「あぁ…良かった…マーカス君の所にいたのね…」
アトランタの胸に手を置いたまま、眠りについた俺
「ありがとね、マーカス君…」
寝ている俺にお礼を言いながら、貴子さんはアトランタを剥がそうとする
「…あらっ⁇んっ⁇」
しかし、アトランタは剥がれない
俺の手をガッチリ掴んだまま、アトランタは心地良さそうに寝ている
「…ごめんなさいマーカス君…美味しい朝ごはん作るから、もうちょっとこのままでお願い…」
貴子さんは俺の頭を撫でた後、ローマの寝顔も見て同じ事をした後、台所に立った…
マーカスがコーヒーを淹れさせて貰えないのは、淹れたら本当にロクな事が起きないからです 笑