彼女を見た正義の拳を持つ男性は、ダンスのお誘いをします
沢山の思いを乗せ、チクタク回る時計
伝えられない思いを交差させ、クルクル回る二人組
それを羨ましそうに眺める、時の傍観者が一人
眺めているのかいないのか
ボーッとしながら、皆を眺める
「早霜も…いつか踊れますか…⁇」
「おっと。では、少しだけ自分と踊りましょう」
早霜の近くにいたのは、園崎らしき男性扮する“パンチアウター”
顔面フルフェイスマスクだが、筋肉が隆々なのですぐに園崎と分かる
筋肉隆々なのは、園崎扮するパンチアウター…
もしくは少し遠くで“ドラゴンマスク(緑)”に振り回されている“スイーツボンバー”しかいない
「お願い…します…」
「此方こそっ」
早霜は天婦羅美人と料理を作っていた為、マスクの類を着けていない
なので、早霜だけは早霜で良い
パンチアウターの手を取り、早霜は雰囲気だけでも味わう事にした
「お。早霜だぜ‼︎」
「なんで割烹着を着ている」
早霜はドレスさえ着ていない
あの日、マーカスとギザギザ丸と出会った百貨店の食堂と同じ割烹着を着て、早霜は踊る
「すみっこで申し訳ありませんね…」
「いえ…」
身長差のある二人
早霜がパンチアウターを見ると、どう足掻いても上目遣いになる
「あの…」
「どうしました⁇」
「やまし…ティーチャーマスクとは…」
「今だけはやめましょう⁇」
「そうね…」
早霜は大人びた返事を返す
時々見かける山城先生
自分達の姉が通っている学校の先生が、何故彼を好きになったのか
子供ながらにそれを察していた
人生をやり直すと決めた女
その拳を正義の為に使うと誓った男
互いに何かに惹かれ合う
その間柄は、決して誰にも邪魔をされない、してはいけないという事を…
それでも優しいパンチアウター
小さいながらも、早霜とクルクル踊る
その二人の姿は、いつの日か早霜が絵本で見たシンデレラの物語に近い物があった…
「ありがとう…ございます…」
「此方こそ。貴女の料理、美味しく頂きましたよ⁇」
「あっ…その…」
最後まで紳士的かつ、どこか子供扱いを残したパンチアウター
その対応は、ダンスが終わった後でさえ早霜を緊張させた
早霜は彼を好きになった訳では無い
早霜が一番好きなのは自分の父親。それに、山城との間には入れない事を理解していた
ただ、背中を見送る時、彼に対して感謝の気持ちを送っていた…
「上手だったぜ‼︎」
「うむ‼︎い〜ちゃんマスクもしっかり見たぞ‼︎」
「ありがとうございます…朝霜姉さん…磯風姉さん…」
そう言って、早霜は会場から出て行った…
「割烹着で踊るってのも映えるものだな‼︎い〜ちゃんマスクも次は割烹着で来よう‼︎」
「まぁなんだ…男からすっと、グッと来るモンがあんだろうな⁇」
「おや。随分な美人さんだ。私と踊ってくれるかい⁇」
「はいっ…橘花☆マン…‼︎」
二人の横で、誰かが橘花☆マンに誘いを受ける
「貴女の名前は⁇」
「ミス・ハヤシライス…です…」
「行きましょう‼︎」
早霜に良く似た少女“ミス・ハヤシライス”が黒のドレスを身に纏い、会場へと駆けて行く
「あ、あれ…さっき居たよな⁇いつの間に着替えたんだ⁇」
「あれだ、モーニングマスク。親潮の服のデータをだな」
「あり得る…か⁇んまぁ良いさ‼︎食おうぜ‼︎」
二人は一瞬気に掛けたが、今日はそんな野暮な考えはしない事に決めた…
「ふふっ…朝霜姉さん…やっぱり、勘の良いお方っ…」
誰も居ない港で、時の傍観者はひっそりと消えた…
時の傍観者…時々出て来るあの子。早霜に非常に良く似ている
パンチアウター…園崎っぽい人