艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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283話 あたしのチャンピオン(2)

次の日…

 

「そっか…精神的なイビリか…」

 

「あたしは大丈夫‼︎どうせ一人だ‼︎失うもんはないからな‼︎へへっ‼︎」

 

横須賀と間宮で朝食を食べながら、ありさは過去を話す

 

遠回しに出て行けと言われたり、ご飯が自分の分だけなかったり

 

典型的なイジメだ

 

「好きな事は何かある⁇」

 

「ボクシングの試合見る事‼︎」

 

ありさは即答で答えた

 

「そうだ‼︎ここにはボクシングジムがあるの‼︎ちょっと行ってみましょう‼︎」

 

「行きたい‼︎」

 

朝食を食べ終え、横須賀とありさは早速ボクシングジムに向かう

 

 

 

 

「ここがボクシングジムよ」

 

「おぉー‼︎」

 

中ではリチャードやその他パイロットが体力作りの為にトレーニングをしている

 

「元帥‼︎お疲れ様です‼︎」

 

ランニングを終えた園崎が戻って来た

 

「お疲れ様‼︎今からトレーニング⁇」

 

「はいっ‼︎後小一時間程サンドバッグをして、山城さんと散歩に参ります‼︎」

 

「あ…あ…」

 

「その子は⁇」

 

ありさの様子がおかしい

 

園崎もそれに気付くが、どうして良いか分からないでいる

 

「園崎さんですよね⁉︎」

 

「そうです、私が園崎です」

 

「うわぁ〜…‼︎」

 

ありさの目が輝く

 

「あ、あの‼︎試合中継全部見ました‼︎」

 

「おっと…ファンか…久々に会った気がするよ…」

 

「21戦21勝全K.O.勝ち‼︎」

 

「そこまで見てくれていたんですか…」

 

園崎は久々にファンに出会って嬉しいのか、膝を折ってありさと話し始めた

 

「2014年の5.12の試合‼︎マルセラ・マッソ戦が一番好きです‼︎」

 

「あの試合は5Rかかりましたからね…」

 

「私よく分からないわ…」

 

「園崎さんは無敗のボクサーなんだ‼︎」

 

ありさの一言で横須賀は全て理解する

 

「いつでも覗きに来てください。強い自分を見れる訳ではありませんが…」

 

園崎は立ち上がり、ジムへと入って行った

 

「あたし、艦娘になる‼︎園崎さんみたいに強くなりたい‼︎」

 

ありさが艦娘になりたい理由はよく分かった

 

だが、何故そこまで彼女の心を動かすのだろうか…

 

その答えはすぐに出る事になる

 

 

 

 

その日の夜…

 

「横須賀」

 

「レイ。お疲れ様」

 

俺は診察結果とありさの過去のデータを持って来た

 

当のありさや子供達は既に寝ており、執務室にいるのは俺と横須賀だけ

 

「彼女の言っている事は本当だ。両親は東京で死亡、その後、親戚の家を転々としていたのも本当だ」

 

「親戚に返した方が良いかしら…」

 

「ここにいた方が良い。虐待を受けていたのも本当だ」

 

「そう…」

 

俺は無言で診察結果を横須賀の前に置いた

 

「これ、本当なの⁇」

 

「本当だ。本人には隠したい事もあるだろう…か、お前が聞いていないだけかもな⁇」

 

「聞いてないかも…」

 

「明日の朝、聞いてみよう。艦娘にはなれなくても、治療位は俺に任せてくれ」

 

この後、俺は少しだけ鳳翔で飲んだ後、自室で明日に備える事にした

 

 

 

次の日の朝…

 

「おはようございます‼︎」

 

「おはよう‼︎今日は診察結果ね‼︎」

 

「きっと大丈夫‼︎」

 

この日も横須賀はありさを連れ、工廠へと向かう

 

いつも俺が治療に使っている区画に二人が来た

 

「おっ‼︎来たか‼︎そこに座ってくれ‼︎」

 

横須賀はありさを座らせた後、そっとその場から離れた

 

“後は任せたわ”のアイコンタクトを読み取り、結果を伝える

 

「君の言っている事に嘘偽りはなかった」

 

「ん…」

 

彼女の話を聞く顔は真剣そのもの

 

「ボクシングが好きらしいな⁇」

 

「凄くカッコいいんだ‼︎スマートで、力強くて‼︎見ていてスカッとする‼︎」

 

「園崎は強いのか⁇」

 

「21戦21勝全K.O.勝ちなんだ‼︎」

 

「そんなに強かったのか…どの試合が一番好きだ⁇」

 

「2014年の5.12の試合‼︎マルセラ・マッソ戦‼︎」

 

「その試合、何処で見たんだ⁇」

 

この後の答えを知りたい

 

そして、思惑通りの答えがありさの口から出る

 

「病院のテレビ‼︎」

 

「…そっか‼︎」

 

何の躊躇いもなく話すと言う事は、横須賀は聞いていないのだろう

 

「あたし、病気なんだ」

 

「言わなくていい。一時間後には治るからな‼︎そこにカプセルがあるだろ⁇きそに服貰って、入ってくれ」

 

「…うんっ‼︎」

 

ありさは一瞬口を開けて驚いていたがすぐに理解し、きそに着替えを貰いに行ったのを見て、俺はバインダーを机に放り投げた

 

そこには彼女の診察結果が書かれていた

 

“骨肉腫”

 

小児がんの一つだ

 

親戚が遠回しに追い出したのは、恐らく医療費の為

 

病院で園崎の試合を見たのは、その日入院していた為

 

彼女は最初から何ら嘘を吐いていなかった…

 

「じゃあ、一時間後にね⁇」

 

「きそさん、でいいのか⁇」

 

「どうしたの⁇何か心配⁇」

 

「いや…ありがとう‼︎」

 

「それは終わってから言おうよぉ…」

 

「へへ…そうだな‼︎」

 

ありさは笑顔でカプセルに入った…

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