艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

997 / 1101
さて、290話が終わりました

今回のお話は特別編になります

毎話題名が変わりますが、お話は続いています

とある島で平和に暮らす一人の少年

彼は海から来た美しい女性と出会い、少しずつ思いが変わります…


特別編1話 和平があった、その島に

第三居住区の再建もかなり進んで来た

 

横須賀をモデルにした繁華街が完成し、居住区画もそれなりに建ち始めた

 

「ココカラヤリナオスンダネ、リョーチャン」

 

「うんっ。あの日みたいにね…」

 

シュリさんと涼平は、出来て行く街を見ながら手を握り合う…

 

 

 

十数年前…

 

三重県志摩市にある、とある離島

 

昔は女性が多く滞在していた島だが、少しずつ観光名所になりつつあったこの島で、涼平は生まれ育った

 

島民は少ないし、設備もそれほど無い

 

それでも涼平は幸せだった

 

「行って来まーす‼︎」

 

島にあった家で、いつもの様に学校に向かう涼平

 

この頃涼平は高校生であり、卒業と同時に島で漁師か養殖でもしようと考えていた

 

毎日連絡船で学校に通い、帰って来ては漁師の手伝いをして小遣いを稼いでいた

 

そんな彼に異変が訪れたのは夏休みに差し掛かる頃…

 

ニュースで海に現れた何らかの生命体…それも、人間の女性に近い者に対して大規模な反攻作戦が行われ、自衛隊が大敗を喫した事が報じられた

 

島民は皆言う

 

「こんなちっぽけな島、襲うはずがないだろう」と

 

涼平は念頭に置きつつも、いつもの日常を送る

 

そして、涼平は出会う…

 

自転車で買い物に向かう、いつもの道中

 

「えっ…」

 

海岸で見た事の無い人影が何人も立っていたのが見えた

 

この島に観光に来る人は連絡船に乗って来るはず

 

それに、一人は倒れている様に見えた

 

涼平は自転車を降り、人影に近寄る

 

「どうしました⁉︎」

 

「コノコ、ケガシテル…」

 

そこに居たのは数人の女性

 

一人が倒れているのが涼平の目に見えた

 

「分かりました‼︎病院に案内します‼︎」

 

近くにあったリヤカーを持って来て、怪我をした人をそこに乗せ、島に一つしかない病院へと向かう

 

「おぉ涼ちゃん。どうしたんだ」

 

年老いた男性だが、腕利きの医者がそこにいた

 

「急患なんです‼︎お願い出来ますか⁉︎」

 

「おぉ、分かった‼︎」

 

彼はすぐにリヤカーに乗せて来た人の診察に入る

 

涼平はリヤカーを戻す為、海岸に戻って来た

 

「ボクチャン、アリガトウ」

 

「オネエサンタチ、タスカッタワ」

 

「あ…いえ、自分は…」

 

髪の長い女性二人にお礼を言われ、涼平は顔を赤くする

 

「ボクチャンノトシジャナインジャナイ⁇」

 

そんな中、一人の女性が涼平の前に来た

 

比較的涼平と歳が近そうな白髪の女性であり、左手を腰に当てながら涼平の前に来た彼女は、俗な言葉で言うなら“ギャル”が似合う

 

「キミ、ナマエハ⁇」

 

「綾辻涼平と言います」

 

「ソッ。ジャア“リョーチャン”ネ」

 

これが涼平と深海との出会い

 

「皆さんの名前は⁇」

 

「ワタシタチ、ナマエハナイノ」

 

「イツカダレカガヨンデクレルノヲマッテルノ」

 

「そう、ですか…」

 

涼平はギャルの様な彼女を見る

 

「ワタシモナイ。ヨバレルツモリモナイ」

 

名前も無い、ただ呼ぶならば一番最初に頭によぎった“ギャル”としか呼ぶしかない彼女は、冷たく涼平をあしらう

 

「えと…雨風凌げる場所がいりますよね⁇」

 

「アルトイイノダケド…」

 

比較的話の分かる黒髪の女性二人

 

後はギャルと、今病院に運ばれて行った女性

 

「あ、そうだ‼︎少し待ってて下さい‼︎」

 

涼平は自転車に乗り、何処かへと行ってしまう

 

「ショセン、ニンゲンナンテソンナモノヨ…ドウセニゲタンデショ」

 

「ソンナコトイワナイノ。タスケテクレタンダカラ」

 

ギャルは岩に腰掛けて足を組み、ツンとした顔で海を見続ける…

 

 

 

「よいしょっ…」

 

「涼平。バイトか⁇」

 

「あ‼︎マサ兄‼︎」

 

自転車を降りた涼平に声を掛けたのは、頭にタオルを巻いた、涼平より歳が少し上の男性

 

マサ兄と呼ばれた彼は涼平の幼馴染でもあり、この島で数少ない若い男性の漁師

 

涼平の良き相談相手でもある

 

「それで、空き家になった旅館を使いたいと」

 

「ダメ、かな⁇」

 

涼平の前には、随分前に廃業になった旅館があった

 

「集会所の横にプレハブの休憩所があるだろ⁇あそこはどうだ⁇ここは埃っぽい」

 

「大丈夫かな…ちょっと事情がありそうなんだ。大人が反対しそうで…」

 

「一旦は大人には説明しとく。早く案内してやれ」

 

「分かった‼︎」

 

涼平は元来た道を戻る

 

 

 

 

海岸に着くと、皆そこで涼平を待っていた

 

「キタワ」

 

「…」

 

話の分かる黒髪の女性に事情を話す涼平

 

「ソウ…アリガトウ。ニドモスクワレタワ⁇」

 

「気にしないで下さい。ここはただでさえ島民が少ないんです。昔はその休憩所も使われていたんですが、今はめっきり…時々誰かが掃除をしに行く位です」

 

「イコウ」

 

「…ウン」

 

ギャルは最後まで渋る様子を見せたが、黒髪の女性に言われ、後ろを着いて来た

 

「ここです」

 

涼平に案内され、プレハブの前に来た

 

中は思っているより広く、真ん中にストーブ、入口右側に台所、外にはシャワールームが一つある

 

「冷えてますよね。ちょっと温めましょうか。灯油は確か…」

 

「ほらっ」

 

「マサ兄‼︎」

 

先程涼平と話していたマサ兄が、灯油が入ったポリタンクを持って来てくれた

 

「何か腹に入れておかなきゃな…涼平、外で貝と魚焼こうか」

 

「うんっ‼︎」

 

マサ兄は知ってか知らずか、魚介類を持って来てくれていた

 

プレハブの近くには倉庫があり、そこから網を持って来て、コンクリートのブロックで簡易のコンロを作り、そこでサザエや魚を焼き始めた

 

「確かに訳ありだな」

 

「うん…マサ兄は何処から来たと思う⁇」

 

「涼平は気付いてるだろ⁇」

 

「…ニュースでやってた、深海って人なのかな⁇」

 

「俺もそう思う」

 

マサ兄はタバコに火を点けながらそれらを焼いて行く

 

「だけど、何にもしないまま見過ごしたくなかったんだ」

 

「そうだな。それに、見た限り敵意は無いみたいだしな」

 

匂いに釣られたのか、黒髪の女性の片方がプレハブから出て来た

 

「休んでいて下さい‼︎」

 

「もうすぐ出来る」

 

「コレハ、ドウヤッテスルノ⁇」

 

涼平より先にマサ兄が驚いた顔を見せた

 

「これはだな…」

 

マサ兄はタバコの火を消し、黒髪の女性に焼き方を教え始める

 

サザエは少し待ってポコポコして来たら良いだとか、他の貝は開いてしばらくしたら醤油を垂らして食べるだとか

 

すぐにもう一人の黒髪の女性もプレハブから出て来て、貝を焼き始める

 

プレハブの中には、ギャルが一人だけ

 

「もう一人はどうした」

 

「アノコ、ヒトガアマリスキジャナイノ…」

 

「そうか、詮索はしない。すまない」

 

マサ兄は何も聞かなかった

 

彼は元来そういう性格なのか、あまり人に踏み込もうとしない

 

「ンーン。タスケテモラッタノニ、アイソガナクテ、ゴメンナサイ…」

 

「…さ、これなんか食べ頃だ。熱いから気を付けてな⁇」

 

「アリガトウ」

 

「イタダキマス」

 

黒髪の女性は出来上がった魚介類を手掴かみで行こうとした

 

「熱いぞ。これを、こうして使うんだ」

 

マサ兄は片方の黒髪の女性にお箸の使い方を教え、涼平はもう片方に教える

 

この時点で二人共、彼女達が特殊な存在だと気付いた

 

「コウ⁇」

 

「そう。こうやって食べた方が美味しい」

 

「コウ⁇」

 

「そうです。これでヤケドしませんよ」

 

それでも何の躊躇いもなく、二人はお箸の使い方を教え、粗方覚えた所でそっと黒髪の女性からほんの少し距離を置いた

 

黒髪の女性二人を見ながら、マサ兄は離れた場所に座り、タバコに火を点ける

 

涼平は紙皿に乗せた貝と魚を持ち、プレハブに入る

 

「焼き立てで美味しいですよ‼︎」

 

「…アリガト」

 

助けて貰った礼なのか、ギャルは涼平の手から紙皿とお箸を取った

 

そして、ギャルは貝にお箸を刺して口に運ぶ

 

「これはこうやって使うんですよ」

 

「…」

 

眉間にシワを寄せながらも、ギャルはお箸の持ち方を覚える

 

「モチニクイ…」

 

「ヤケドしませんよ」

 

「…ン」

 

お箸の持ち方を覚え、ギャルは美味しく貝や魚を頂く

 

 

 

皆が食べ終えた頃合いに、黒髪の女性が口を開く

 

「ナニカオレイヲシタイ」

 

「気にしなくていい。帰る場所はあるか⁇」

 

「ソノ…」

 

黒髪の女性に帰る場所を聞いた途端、返答に渋ったのを見て、涼平もマサ兄も理解する

 

遭難じゃない。何処からか逃げて来たのだ、と

 

「分かった。なら、しばらくここで暮らせばいい。ここはどうせほとんど使ってないしな」

 

「ナニカデキルコトハ⁇」

 

「今は体を休めて下さい」

 

「もしその気なら、また話を付ける」

 

その日はそれで、彼女達と別れた

 

 

 

帰り道、涼平とマサ兄は歩きながら話す

 

「あの人達、栄養取ってないんじゃないかな⁇」

 

「あぁ…灰色と、真っ白な肌だったな」

 

プレハブに来た女性は皆、見た事のない肌の色をしており、それを二人共、単に栄養不足と捉えていた

 

「あ、そうだ。病院に行かなきゃ‼︎」

 

「薬でも貰うのか⁇」

 

「一人病院にいるんだ‼︎」

 

「…急ごう」

 

病院に急ぐ二人

 

何か嫌な予感が頭を過ったからだ

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。