倉橋さんかわいい
ジリジリジリジリ。
蝉の声が、校庭と、山から響いてくる。もう九月になって、暦の上では秋だけれど、まだまだ暑さもうるささも、みんなの生活リズムも夏休みだ。今日は始業式の次の日。他のところでは初めの日ぐらいは、すぐに授業が終わったりするのかもしれないけど、うちの学校は違う。流石は進学校といったところか、夏休みでだらけきった僕たちにお構いなく初日からいつもと同じく六時間授業だ。
そして、夏休みでだらけきったのは僕たち生徒だけではない。
・・・・・・先生も同じだ。
「・・・いやぁまだまだ暑い日が続きますねぇ」
その言葉とともにマッハで殺せんせーが教室に入ってきた。ちなみに、今は九時過ぎ。明らかに遅刻である。表向きの担任である烏間先生は今は出張でいない。ビッチ先生は・・・うん、矢田さんたちと遊んでいる。少なくとも、「授業」とかからは程遠い。律はスリープモード中だ。
殺せんせーの声に一斉に振り向いた。訪れる静寂。
・・・・・・。
「・・・・・・みなさん、夏休み気分はもう抜けましたか?」
何ごともなかったかのようにHRもはじめる殺せんせー。
「せんせーが一番夏休み気分だよ!」
全員一致の答え。殺せんせーの格好はといえば、アロハシャツに短パン、手にはトロピカルドリンクを持っている。授業の格好じゃない。
「ち、違います!せんせーだけじゃありません!まだ業君も来ていません!」
<弱点メモ27 悪いことをするとすぐに仲間を作りたがる。>
慌てふためきながら答えるが誰も聞く耳を持たない。
「そーよそ-よ、先生としての自覚は無いの!」「いや、それはビッチ先生もそうだから」
矢田さんの冷静な突っ込み。
「・・・ま、少し遅れましたが授業を始めましょう。さ、皆さん、教科書の139ページを開いてください。業君は・・・ま、後からくるでしょう」
「何一人何事も無かったかのようにはじめてるんだよ!」
またもや一斉にブーイング。
「にゅ、にゅや!そこまでいうと宿題の量を二倍に増やしますよ!」
「ちっせー!」
一応授業は始まった。
あくまでも一応。
二時間後
この教室はとにかく蒸す。夏場は湿度も上がってほんとうに灼熱地獄だ。
「あついよぉ~ころせんせー・・・」
真っ先に音を上げたのは倉橋さんだった。時間がたつにつれ、気温も蝉の鳴き声もヒートアップしている。この調子だと、まだまだ暑い日が続きそうだ。
「ええ・・・しかし暑さはせんせーでもどうにもなりません。せんせー授業が終わったら素直にシベリアに逃げます」
「それは素直なのか!?」
「おっはよ~」
軽快な声が教室内に響いた。
「カルマ君!」
「初日から遅刻とはいけませんねぇ」
─お前が言うな夏休みボケタコ!
「いや、初日ぐらい休んだって別にいっかな~って思ったんだけどやっぱ暑くて。ここきたら涼しいかと思ったけど………全然そんなことはなさそうだね」
「あったりめーよ!本校舎とは違うんだ!」
「いや、てっきり律がクーラーがわりになるかと思ったんだけど」
─その手があったか!
「律さん律さん!起きてください!」
「はい、殺せんせー」
「クーラーがわりになりませんか?いえ、なってください!」
「………消費電力を気にしなければ冷却装置でなんとかできそうですね」
すぐさま律から冷たい風が流れ出る。
「お~快適快適~!」
中村さんが扇子がわりにしていた下敷きを机に置く。
「あれ?みんな気づいてなかったの?やっぱり殺せんせーってバカ?」
「………人間というのは一度固定観念がつくと抜け出せなくなるものです」
─カッコよく言ってるけどただの負け惜しみだ!
「ま………これで本校舎に負ける要因は無くなりましたね。さー今学期こそA組に勝ちましょう!」
「はい!」
よくも悪くもこうして僕たちの二学期は幕を開けた。暗殺期限まであと七ヶ月!