暗殺教室~狂気の惨殺劇~   作:秋実 怜土

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七月に三つとかうそついてごめんなさい。
イカのゲームにはまりすぎました


目標の時間

目が覚めた。

長く寝たかと思ったけれど、時計は30分しか進んでいない。どうやら、僕自身が寝ることを許さなかったようだ。

少し頭がすっきりした。これなら、さっきよりは良い考えが浮かびそうだ。

 

…………まだ声が聞こえる…………?嘘でしょ…………30分もずっと……扉が開くのを待って………………?

急いで扉にかけより、鍵をあける。

「倉橋さん!」

扉の前で、うずくまって。ただひたすらに助けを求め、謝り続けて。精神が疲れきった倉橋さんの姿がそこにあった。

倉橋さんがゆっくりと顔を上げる。その目を見たとき僕は思った。

──人間って死ななくても死ぬことがあるんだな、と。

生きた人間の目じゃない。見たことはないけど、死体とか屍とかに見つめられている感じ。

「なぎ…………さ…………」

精神も声も枯れてガラガラして、それでも尚助けを求めてきた。それを見て、少しだけ安堵する。

──なんだ、やっぱり生きたいんじゃないか。元の生活に戻りたいんじゃないか。

倉橋さんは死を受け入れてなんかいなかった。元の生活に戻りたいと強く願いすぎて────ちょっと道が逸れていただけなんだ。

安堵しちゃいけないけど、何だか嬉しい。そう感じる僕も少しおかしくなっているのだろう。

「…………本当に戻りたいんだね」

「……も゛うぬけだしだい…………もどにもとりたい゛……」

充分だ。その言葉だけで、僕が救われた。

──進んできた方向は間違っていなかった。たとえ過程が歪んでいたとしても。

倉橋さんに意志があるならば、僕はそれに答えなくてはいけない。理由なんてなんだっていい。それが僕のためであろうと、倉橋さんのためであろうと関係ない。結果として、倉橋さんが助かればそれで十分だ。

「ごめんね、倉橋さん。わかってあげられなくて。でも、一緒に考えるよ、倉橋さんが元に戻る方法を。」

僕は倉橋さんに手を伸ばす。

倉橋さんは少し迷ってから、恐る恐る僕の手を掴んだ。

 

 

 

少し立つと、倉橋さんも落ち着きを取り戻してきた。さっきので疲弊していても、まだ頑張ろうとするその強い意思には感服させられる。

「もう一度聞くけど、戻りたいんだよね?」

「うん…………元に戻るのは無理だと思うけど、私が普通に生活できる位には戻りたい」

やはりそうなのか。出来れば、倉橋さんの親含めて元に戻す、そんな解決を見いだしたかった。でも、どこかでそれは無理だっていう思いもあった。倉橋さんはそこに関してはすでに決断がついているらしい。

 

 

そんなことあるもんか。どんなに嫌っていようが親は親だ。そう簡単に踏ん切りがつくものじゃない。

「でも、出来ることなら親ももどって欲しいんでしょ?」

だから、僕はそこに目標を設定する。

「う…………ん…………………でも…………」

「?」

「もし親を諦めて私が元に戻れるなら、迷わず親と一緒に暮らすことを諦める」

その顔は決意に満ちていて、僕が変えようとしたって変えられそうもない。倉橋さんが言っているのは、元に戻るためならば親を排除することさえ辞さない、つまりはたとえ親が死ぬことになっても────。

「…………わかったよ」

それは明らかに危険な思想だ。親を殺せば直ぐにたどり着け、親を殺さなければ時間が掛かるといった場合、倉橋さんは親を殺してしまうかもしれない。そんなことは絶対にさせない。させてはいけない。仮に殺すことになったとしたら、止めを刺すのは倉橋出はなく別の人がやらなければならない。

「…………最初から方法なんてわかってるよ。渚でも、殺せんせーでもなく、私が行かなきゃいけないってことも。」

本当にそれしかないってことを、やっぱり倉橋さんもわかってたんだ。

「でも…………死ぬのは嫌だよ」

「死ぬって…………」

「今家に帰ったら間違いなく殺される。もう、親子の関係と言うよりも…………敵対関係だね~」

半分は冗談だろうが、半分は事実だろう。

「もう……ね、私が手を出さないのをいいことに……サンドバッグみたいな、そんな扱いだよ。人って落ちるところまで落ちるとああなるんだな、って思った。最底辺というより、もう私はアレを人だと思わない」

はっきりとした拒絶。僕は…………倉橋さんの背中を押して良いのだろうか。今は心が壊れて空ろな感じだけれど、それが戻ってきた時に──────絶対に後悔するはずだ。

「倉橋さん………………本当に、親を憎んでるの…………?」

「当たり前だよ、私がこうなったのも、受けた痛みも全部親が原因なんだから!」

確かに、倉橋さんの親がああならなければ倉橋さんが生物を惨殺することもなかっただろうし、今ここにいるなんてこともないだろう。

でも──────だからって…………やっぱりそれは間違ってるよ。

「絶対後悔するよ」

「何が?」

「倉橋さんが親を拒絶したら。間違いなく、今以上に自分を憎むことになると思うよ」

「…………そのまま死ぬんだったらそれでも…………ううん、良くないけど……でも、候補の一つには入ったまま。でも、死ぬのは…………」

今倉橋さん自身も自分が死にたいのか死にたくないのかわからなくなってる。死にたくないはずなのに、「死ぬ」ことが候補に入ってしまっている。そんなの僕が認めない。

「倉橋さん」

立ち上がって、倉橋さんの手をとって言う。

「え、え?」

「絶対に死なないで」

倉橋さんの全ては理解出来ない。だから、状況なんて分からない。それだったら自分の気持ち押し付けるしかないだろう。ここだけは譲れないってところを。

「…………じゃあさ、渚も支えてね、私のことを。私が死のうとしないように。私が道を間違えないように」

これが────今至った僕達の結論だ。きっとこの言葉は倉橋さんがずっと言いたくて言えなかった言葉。

「……最初からこうしてれば良かったのに…………」

出来ることなら、もっと早くにこうするべきだった。

倉橋さんが僕の胸に顔を埋める。

「ごめんなさい…………ありがとう……」

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