尚、S+にあがれていないイカの模様
ジリリリリリ
目覚まし時計の音で目を覚ます。時刻を確認すると8時過ぎ。
これは…………………遅刻だ…………。あれ…………確か7時半にセットして…………五分おきに30分間鳴ってたのに起きなかったか……。
まぁ、昨日…………いや、今日寝たのが凄い遅かったし、仕方ないといえば仕方ない。きっと殺せんせーも見逃してくれると思う。
目覚まし時計を止めて横を見ると倉橋さんはまだ気持ち良さそうに寝ている。
─あれ、これ客観的に見たら結構とんでもないことなんじゃないか!?
いわゆる添い寝って奴だよね、これ。
そう、正直に言えばこれがなかなか僕が寝られなかった原因の一つ。
流石に……………こんな経験したことないからさ…………。
異性と同じ部屋で、しかも隣で、さらに手を握られながら寝るなんて、そう直ぐに寝られるわけがない。
横を向けばすぐ目の前に倉橋さんの寝顔がある。ちょっと…………やばいよね……。
やはり原因は昨日……いや、今日にある。
結局寝たのが4時過ぎてもう空が明るくなろうとしてからだった。
僕がお休みなさい、と言って二階に上がろうとしたところで倉橋さんが呼び止める。
「ねえ、一緒に寝てもいい?」
そこでよくわからずうんって頷いたら、二階の僕の布団の中に倉橋さんが入ってきた。もうどおにでもなあれって思いそのまま僕も寝ようとした。やっぱり予想以上に難易度高かった。
…………………まぁ、倉橋さんがゆっくり寝られたならそれでいいか。
倉橋さん自身が言っていたようにやっぱり最近あんまり寝れていないんだと思う。だから、
─もうちょっと…………寝てていいからね─────。
倉橋さんに布団をかけ直すと、僕は静かに部屋を出た。
午前八時半、僕は二人分の朝食の支度を終える。それでも倉橋さんはまだ起きてこなかったから、起こしに行くことにした。
「ほら倉橋さん~もうそろそろ起きて~!」
軽く叩いたぐらいじゃ起きなかったので、を右に左に大きく揺らしたところ、ようやく起きた。
「ん……………………渚………………あ、朝か…………………」
そしてそのまま布団に倒れ込む。
「いやもう一回寝ようとしないで!」
さらに大きく揺らしたところでようやく倉橋さんは頭を上げた。
「あー…………………………」
こりゃまだ頭が起きてないや。
「ほらもう朝だよ!」
寝ぼけ眼の倉橋さんを無理やりリビングまで引っ張っていく。
もうテーブルには朝食を並べ終えている。
─ま、ここまで来れば流石に起き…………あれ?
見ると倉橋さんはテーブルを見つめたまま固まっている。
「ん?どしたの?」
「渚………がこれ全部作ったんだよね…………………」
「うんそうだけど?」
「いや………………うん、まぁ渚なら有り得るのか………?」
別にそんな大した物じゃないと思うけど。いわゆる普通の朝食だ。(と思う。)
「ただ…………女性としての私の立場が……まぁ渚なら…………」
なんだかまだごちゃごちゃ言ってるよ。
「ほら、早く食べないと…………別に急がなくてもいいのか」
僕と倉橋さんは向かい合って席につく。
「頂きます」
二人きりの朝食が始まる。
「なんか最後の晩餐みたいだね~」
いや、それ結構シャレにならないよ?
「倉橋さん、今日はちゃんと家に帰るんだよね」
「…………うん、ここで逃げてても切りがないし。それに…………もう皆に迷惑かけたくない。元の生活に戻りたいから。」
倉橋さんは自分に言い聞かせるように言った。
ただ──────すっごい震えてるよ、倉橋さん。
「本当に…………気を付けて…………いざとなったらすぐメール送って…………」
「大丈夫…………」
その姿からは不安しか感じられない。但し、僕に出来ることはやりつくしたはすだ。今までの不安とは少し違う。もう状況には悲観しない。成功させるしかない。
「それじゃ、行って来るね」
「…………気をつけて」
「遅刻ですねぇ」
「あー……寝坊しました…………」
「へーぇ、渚君が遅刻なんて珍しいね。なんかあったの」
なんかあったの、出はなく何があったの、と聞いているように見える。しかし、今話すわけにはいかない。全部話すのは────僕ではなく倉橋さんでなければならない。
「うん…………なかなか寝られなくって」
「ふーん」
納得はしていないだろう。それでも引き下がったのはカルマ君も理解しているということか。
「にゃ!カルマ君!今はテスト中のはずですよ!」
「あ、終わったから。満点のはずだよ」
「ぐにゅぬ……」
おそらくマッハで採点したのだろう。そして全部合っていた模様。
「ま、今のところは順調そうだね」
そうかもね、今のところは。
正直僕も倉橋さんの説得がうまくいくとは思っていない。それでうまくいくならとっくに良くなってる。それでも────。
──うん、順調だよ────
そう答えるしかない。
「ま、それならいいけど」
カルマ君の言及はそこで終わった。ごめんね、全部終わってから話すから────