3年後
とても広い空間の中に打撃音が鳴り響き、常人には見ることはおろか、どこで音が発せられているかさえ分からない格闘戦を繰り広げているのは少年から青年に成長を遂げた男の子。
そして相手は3年前から余り変化が見られないアルシェイラだった。
「まさか3年で追い付かれるなんてね ~」
呑気に呟いてはいるが、今は二人とも本気の打ち合いの最中である。
「まだまだ甘いですよ。
俺の目標はアルシェ…シェイラを護れるようになることが最終的な目標なんですから。」
今の会話の中で、なぜ彼が呼び方を訂正したのかと言えば無言でアルシェイラの攻撃は続行していたのは変わりなかったが鋭さと殺気が織り交ぜられたからである。
「いい加減クロウディアは私の呼び方、慣れたらどうなのかな?」
「そう言うシェイラも、俺の二人で決めた名前呼ばないじゃないですか。」
「ゴメンね?クロ」
この少年、今は青年…クロウディアだが彼は以前の名を捨てた。
理由はひどく簡単だった。
「アルシェイラさんにつけてもらった名前でこれからの人生を生きていきたいんです。」
この台詞を子犬のような瞳で、期待でキラキラ輝いた状態で上目使いをされたアルシェイラはあえなく撃沈した。
1週間丸々、天剣全員を呼びつけ考え抜いた結果、クロウディア・アルモニスいう武芸者が生まれた。
そこから天剣全員に教えを請い、驚くべき才能で自らの中へと昇華していった。
あらゆる意味でオールマイティーになったクロウディアは自分の中で絶対的強者であるアルシェイラに頼み、訓練をしていた。
「…いつ見ても凄まじいものだな。」
ポツリと呟くように言ったクロウディアをつれてくるときに一緒にいた男性…リンテンスは二人から隠れる様に見ている。(二人とも気付いてはいるが)
余談ではあるが、クロウディアつれてきた時から一緒にいたリンテンスはクロウディアを年の離れた弟のように接していた。
「そうですねぇ~」
返ってくるはずのない返答の声に嫌々ながらその方向をみる。
そこには銀髪の長身の男性がいた。
「何故お前が此処にいる。サヴァリス」
ニコニコと後ろにいる銀髪の男、サヴァリス・クォルラフィン・ルッケンスは問いに直ぐには応えず、リンテンスの近く、かつぶつからない場所にて観察を始めた。(何度も言うがこの時点でばれている)
「何故って弟の様にかまっているのは貴方だけではないのですよ。リンテンスさん」
サヴァリスのその言葉に苦い表情をわずかに浮かべるリンテンスは気にすることを止めたのか、観ることを再開した。
「それに陛下が戦われている所などそうそう見られるものではないですからね。」
その言葉に少しは同意したリンテンス。
アルシェイラが一人をのぞいて本気を出すなどあり得ないことなのだ。
そしてその日、訓練は日が沈んでも続いたが、流石 に覗いていた二人は途中で帰っていった。
とある晴れた日、コロシアムのような形状の建物の中に人は熱中し、歓声を上げていた。
「決まるかな…?」
アルシェイラの近くにいるクロウディアがボソッと呟いた。
「決まってくれたら嬉しいわね。」
アルシェイラはクロウディアの独り言を聞き取り、クロウディアの方向を向き、自らの思いの望みを返した。
今は12人目の天剣授受者を決める試合 の最中だ。
クロウディアと同じ10歳になるかならないかくらいの少年と男性が戦っている。
一見不利に見えるその試合は観客の予想を大きく裏切り、少年の方へと勝利は傾いていた。
「まさか俺と同い年の子がね。」
そう、クロウディアはどう見ても青年ほどの成長をしているが未だ10歳だ。
武芸者が必ず持つ剄を特殊に使い、身体の成長を促し、アルシェイラと釣り合うような外見までになった。
余談ではあるが自他共に認めるバカップ ルであり、お互いがお互いの為に生きているような状態になっている。
しかし、どちらもいきすぎているため、すれ違い、王宮を壊すほどの大喧嘩になったりと、周りを困らせた。
しかし、最終的にはクロウディアが男を見せ、アル シェイラが感動し仲直りした。
それ以降は喧嘩もなく、二人の仲は深まっていった。
「クロだってなろうと思えば今にでもなれるじゃない。」
「まあ、天剣授受者になっても天剣が使えないけどね。」
「あ、そういえばそうね」
クロウディアは武芸者として覚醒した 時、自分の中にある膨大な力を極限まで一点に集めたらどうなるのだろうと思いアルシェイラ監視の元、実行をしてみた。
その結果、武芸者が扱う特殊な武器、
驚くことはこれだけに留まらず、 天剣以外の
この天剣は「13本目の天剣」と呼ばれるようになったがこれがまた厄介だった。
他の天剣授受者が扱おうとしても弾かれてクロウディアの元へと戻ってくる。
更にクロウディアが練習として扱おうとしていた
意味が分からず今度は
躍起になって同じ種類の全ての
天剣ならもしかしたらとアルシェイラに言ってみたが頭を叩かれてこれも諦めた。
以降、クロウディアがこの天剣擬き以外を使おうとした事はなく、天剣授受者になろうともしなかった。
「ま、俺はシェイラと一緒に居られればそれで良いし、天剣なんていらないさ。 」
試合を見ながら笑顔で言うクロウディアを見た後、アルシェイラは下を向き呟いた。
「…そうはさせないんだけどね。」
あまりにも小さかったアルシェイラの呟きは突如上がった歓声にかき消された。
玉座の間に居るのはアルシェイラ、クロウディア、そして試合を勝ち抜き、新しく天剣授受者となるレイフォン・アルセイフだ。
「お前にはこれから天剣授受者としてこの街のために戦ってもらう。」
「はい。」
「そしてクロウディア。」
厳粛な空気で進められていた天剣の授受はアルシェイラの言葉で違う方向へと向かっていく。
「ん?」
当然こんな段取りはクロウディアが知るわけもなくクロウディアは疑問で返すこととなった。
「お前にはこれから私の婚約者、ひいては夫としてこれからを過ごしてもらう。 」
「…は?」
突如として始まったアルシェイラの爆弾発言にレイフォンもクロウディアもついて行くことができなかった。
「…嫌か?」
クロウディアの反応が芳しくなく、不安げに聞いたアルシェイラは断られるのではという恐怖に涙目になり不安で前傾姿勢になった。
アルシェイラは涙目の上目遣いでクロウディアを見た。
「…いや、このタイミングで言われる かと驚いていただけだよ。
勿論、受けさせていただくよ。
シェイラ。」
漸く話に着いてくることができたレイ フォンはクロウディアのその言葉を聞いたときに拍手をしていた。
「まあ、取り敢えずレイフォンの天剣授受者の式典を締めくくろうか。」
「あ、はい。」
パチパチとレイフォンの拍手が聞こえて、さっきまで堂々としていたが急に恥ずかしくなったアルシェイラは顔を真っ赤に染め、下を向いていた。
クロウディアは段取りを頭に入れていたためレイフォンをテラスに行かせ、天剣の勇姿を民衆へと見させるよう指示をした。
「シェイラ。」
クロウディアの呼びかけにビクッと肩を震わせたアルシェイラはおずおずと顔を上げた。
真っ赤な顔で。
あまりの可愛さにクロウディアは抱きつきそうになったが何とか押さえ込み、アルシェイラへと話しかけた。
「シェイラ。
君には先を越されっぱなしだ。
俺が言おうと思っていた告白も君に言われてしまった。
せめてと思っていたプロポーズさえもとられてしまった。
だから、アルシェイラ。
今更と思うかもしれない。
それでも俺はきちんと君に言いたい。
だから聞いてくれ。」
其処までクロウディアは一気に言い、アルシェイラへと問いかけるような眼差しで見た。
アルシェイラはその言葉を受け取り、既に眼から涙がこぼれそうなくらいにいっぱいに溜め、嬉しさのあまり真っ赤になった顔で頷いた。
「アルシェイラ・アルモニスさん。
僕が18歳になったとき。
結婚をしていただけませんか?」
「…はい。」
ポロポロとアルシェイラは頬を涙で濡らしながらアルシェイラはこれまでの中で一番の笑顔でクロウディアに答えた。