デート・ア・ライブ 凜祢アナザーリバーション 作:でぃすぺあー
なんか病気と称してデート・ア・ライブで好き勝手やってる人がいるらしいので、まねしてみました。
SSは初心者なので、よろしくおねがいしますー
物語の始まりは劇的でなければならない。
導入部において、読者は物語の登場人物のことなど何も知り得ない。
作者がどれだけ苦心して考えた要素や過去を纏った者なのか、あるいは適当に配置しただけの張り子なのか、そんなことは知ったことではないのが読者だ。
それは、他所の既出の人物と同じ姿で同じ名前を名乗らせたところで同じこと。
借り物だろうが特定の誰か一人の思惑で動かした時点で誰も知らない“新キャラ”も同然なのだ。
何も知らない―――いわば赤の他人。
それが何かしているというだけの話が果たして興味を惹くか否か。
肯定するなら、それは余程書き手の技量が高いか、何か別の要素が後押しをしているかだ。
否定するなら、そんな前提は崩さなければならない。
具体的には、登場人物がどんな人間かを素早く端的に示し、読者にとって何らかの共感や好奇を引き起こすこと。
赤の他人ではなくすること。
それには、なるだけ奇抜な出来事に彼ないし彼女を直面させるのが手軽かつ有効な手段の一つ。
非現実であれば非現実であるほど、その対応によって人物の性質は見えるし、立ち向かう姿そのものが共感を呼ぶこともあろう。
故に、物語の始まりは劇的でなければならない。
そう――――だから俗に神様転生と呼ばれる事象も、理に叶っている、のかもしれない。
自分がいきなり死ぬという最大級の不幸、神話の時代から妄想されてやまない超越存在に見初められ加護を与えられる優越、好きな特典をなどという善悪丸ごと包括した“欲望”を試される故に。
これに直面する以上に登場人物の個性を開幕早々アピール出来る展開もなかなか無いのではなかろうか。
「そういうことで五河士道くん、いっぺん死んで生まれ変わってみようか?」
「いやどういうことだよ」
そんな前提に従って、第一声でこの物語の主人公である士道にそんな非常識なことを言ってのけたのは、普通の学生程度に恐喝される威厳の無い胡散臭い爺ではなく、編まれた色素の薄い髪型が愛らしい優しげな少女だった。
耳を擽る甘い声が、それだけに内容の突飛さを酷いことにしている。
ついでに言えば、二人を取り巻くシチュエーションとしては特に非現実的なことはなく、ごく普通の建材で設計されたモダンな公共施設の中だった。
高層建造物の中らしく、朝焼けに照らされた士道の馴染みの街の風景が広々とした部屋に大きく開いた展望ガラスで一望している。
そう、非現実的なことなどどこにもない。
“早朝の”“誰もいない”“埃一つの汚れもない”フロアでたった二人、どこにでもありそうな学生服のブレザー姿で相手と向かい合う今の士道にとっては、違和感を覚えることは“まだ”ない。
スカートとスラックスの差以外は士道のそれと同じ制服姿で華奢な肢体を包む少女は、甘いかんばせを慈しみに綻ばせてそんな彼を暖かく見つめる。
その視線に込められた情念に居心地の悪さを覚えた士道は無意識に身動ぎした。
少女の彼に向けている想い…………それは信頼というには無条件の肯定が深過ぎ、親愛というには見返りを求めない献身が混ざり過ぎている。
敢えて語彙に当てはめるなら、“母性”とでも呼べばいいのだろうか。
もし第三者が二人を見て、縁戚なのだと説明されれば何の疑いも抱かないであろう――――微笑んでみせれば相手を安心させるような、という点で面立ちが似通っていること以上に、少女が士道を大切に想っていることがあまりに簡単に察せられるから。
それが精神的にくすぐったく仮に沈黙の中で視線に晒され続ければいずれ穴でも掘って隠れたくなると分かっている士道は、話で間を繋ごうとする。
“いつものように”。
「それで、本当にどういうことだよ?生まれ変わるって」
「うーん、説明は難しいかな。取り敢えず確認ってことで、ちょっとクイズに答えてもらっていい?」
「…………なんだよ」
なんだか要領を得ない会話に不審がりながら、士道は少女を促す。
そうして出題されたのは、今まで以上に意図に要領を得ないものだった。
「もんだーい。
――――『さて、私は誰でしょう』?」
「…………は?え、いや、誰、って?」
「あ、深読みとかはいいから。ぱぱっと答えちゃって?」
笑顔のまま可愛らしく首を横にこてんと傾ける少女。
釈然としないながらも、士道は“自分の知識”から端的に回答を出し返した。
「園神凜祢(そのがみ・りんね)、俺の幼馴染みだろ?」
「…………くすっ」
凜祢、と呼ばれた少女の笑みの性質が僅かに変化する。
苦笑いだ、と士道は察した。
その理由は、やはり分かる訳がなかったが。
「…………なんだよ。違うのか?」
「ふふっ……ううん、ぜんぜん違わない。確かに間違いじゃないんだけど――――、」
――――間違ってないから正解だなんて、そんなの真理でもなんでもない。
――――士道、あなたはそれを知っている筈。
「この場では、『間違っていないということそのものが間違い』なんだよ?」
「あーもう、本当になんなんだ」
“今日は”不思議なことしか言わない幼馴染みに、なんだか投げ遣りになりそうになる気分をなんとか立て直す。
そんな士道を、凜祢はやはりただただ慈しむ様に見つめていた。
ただし。
その慈愛が、士道を望み通りに甘やかすものだとは限らない訳で。
「まあ、“今の”士道にはいくら言っても理解は出来ないことだよ。
…………別に士道の頭が悪いとかそういうことじゃなくてね?」
「じゃあ………」
「実際に体験しないとどうにもならない、って類のものだから。
――――そういう訳で、さっさと始めよっか」
「っ!?」
凜祢が右手を軽く上げるジェスチャーをしたその瞬間、背筋が内側から撫でられたような嫌な予感が襲う。
それに従い、士道の足が勝手に動いて反射的にその場を飛び退こうとしたが――――遅かった。
飛び退くも何も、蹴る床そのものがいきなり消失したのだから。
その結果として、街を一望出来る様な高さの部屋にいた士道の位置エネルギーの、運動エネルギーへの変換が始まる。
つまりは、落下する。
いわゆる『ぼっしゅーと』というやつであった。
「なんかこれが様式美、なんだって。よく分からないけど」
「だから本当になんなんだよおおああああぁぁぁぁぁぁ―――――――――」
すぐ下の階の床に叩きつけられる、ということもなく、士道を中心に円形にくり貫かれた穴がひたすら暗闇の中を続いている。
落下加速度への抵抗なのか、次第にドップラー効果で低くなっていく叫び声だけが残響していた。
そんな穴の中を覗きながら、凜祢は微笑みつつ手を振る。
「それじゃ、頑張ってね士道。
…………いや、頑張らなくてもいいのか。ただ幸せになってくれれば、それでいい」
重力のままに落ち続ける士道には、そのどこか儚い祈りは届かない。
「さあ、デートを始めましょう。…………私でない誰かの、ね」
これが――――繰り返しの■■■■のハジマリだった。
…………。
士道のその日の落下距離―――数十センチ。
実にベッドと床の段差分だった。
「痛って……なんか変な夢見たし………ふぁ」
受け身も取らないままの落下で痛む背中を擦りながら、士道はその日自室の床で目を覚ました。
“ベッドに”ではなく“ベッドから”ダイブしたという間抜けな体勢から、のろのろと胡座座りへと移行する。
そんなところに、浴びせられる声があった。
士道同様起き抜けらしく、少し呂律が鈍いが耳障りの無い心地よいアルトの声だ。
「どんな夢よ。乗ってる船でも沈没した?」
「海に飛び込んだ覚えはない…………ていうか、あれ?もう思い出せない」
「そういうの偶にあるわよね。ま、夢なんてそんなもんでしょ」
「そうだけど………ああなんか微妙に気持ち悪い」
「………そっちを気にできる程度には、強くぶつけた訳でもないみたいね」
会話もそこそこに寝癖を掻きながら振り返ると、起きる直前まで士道がいた寝床にもう一人、布団にくるまったまま上体を起こした少女がいた。
実年齢の割に幼い外見と体格、加えて強調するような気だるく不健康そうな挙動、伸ばし放題の癖毛…………その中から覗くエメラルドの瞳が僅かに揺れている。
その揺れが士道の怪我の心配、また自分が壁際側で寝ていたせいで追い落としたかもという負い目だと分かる程度には、付き合いも深く長い関係だ。
覚醒してきた思考でまずするのは、それらを払拭する為の行動。
今回のような気にし過ぎなことなど珍しくないくらい悲観癖で不安がりな彼女に対しては、五河士道の中でもはや習性となっている癖。
前髪を手の甲で払い、優しく額を撫でながら微笑む。
士道からの『だいじょうぶ』の合図。
それは、二人の間だけで通じるサイン。
それで、それだけで。
「おはよう、七罪」
「うん………。おはよ、士道」
士道の“たった一人の幼馴染み”、七罪は甘えるように士道の掌に摺り寄りながら、強ばりの解けた優しい笑顔と挨拶を返してくれたのだった。
これ、神様転生の警告タグとか要るんだろうか?
神様転生を面白く書いてみようなんて無茶ぶりに挑戦して日和った結果だけども。