第1話
「はぁっ!」
キリトは狩りをしていた。一層の森の中、レベル6亜人型モンスター《ルインコボルド・トルーパー》を倒していた。
「おにい、もう飽きた」
そう言うのは黒髪でロングの少女だ。
「もう少し頑張れ。死ぬぞ」
「もう眠い……」
「いやいやいや!ていうかやめて!俺も死ぬから!お前この量を一人でも捌けっていうか⁉︎」
「おやすみ……」
「オイィィィィッッッ‼︎‼︎‼︎待って待って!本当に寝るな……!」
「死にたくなければ……全員倒しなさい」
「お前ムカつく!どこまで態度でかい妹⁉︎」
だが、キリトの妹……ユウは本当に寝た。それに心底イライラしつつ、キリトは言った。
「あー上等だよやったろうじゃねぇかァーッ‼︎お前はそこで寝てやがれ!お兄ちゃんが全部片付けてやるよ!」
そのままムキになってキリトは暴れまわり、なんとか全員撃退した。が、思わず倒れ込み、フィールドで大の字に寝そべった。
「あー……づかれたぁ〜……」
隣では妹が寝息を立てている。その様子を見て、キリトはようやく生きている、と実感出来るのだ。
「ふぅ………」
少し前に始まったデスゲーム。死んだら本当にあの世行きのゲームが始まった。正直、キリト自身は恐れた。恐怖した。今までのゲームではパターンを掴むため平気で死んではリスポーンを繰り返していたが、それがこのゲームでは出来ない。そんな恐るべきゲームを妹が聞いて、最初に放った言葉がこれだった。
『なにこれ…超、神ゲー……』
その時、正直キリトはゲームよりも妹の方が恐ろしかった。しかし、そんな妹の支えもあってか、二人はおそらくトッププレイヤーとなっている。
「はぁ〜…かといって、呑気すぎるのもアレだよなぁ……」
背中に背負って森を出ようとしていた。背中では寝息を立てている。その時だ、近くで戦闘中の音が聞こえた。
「誰か、いるのか?」
とりあえず近くに見に行ってみることにした。そこにいたのは、フードのレイピア使いだった。そのレイピア使いは次々に敵を倒して行く。が、キリトには少し気になることがあった。指摘しようかしまいか迷っていたら、
「ウジウジするな」
「ユウ⁉︎お前起きて……」
「れっつごー」
背中を跳び蹴りされ、キリトはフードのプレイヤーの前に突き出された。
「ッッ⁉︎」
驚いて、剣をキリトに向けるフードのプレイヤー。それにビビって、手を両手にあげて
「怪しい者じゃない!」
と、弁明するキリト。
「…………じゃあ、何の用?」
「少し、さっきの狩りで言いたいことがあって……」
で、再び口籠るキリト。そのキリトの頭の上にヒョコッとユウは乗っかった。
「おにい、言いたいことははっきり言う。キョドッてるおにい、キモい」
「わ、わかってるよ!」
キリトはこほんと咳払いすると、「お、女の子……?」と、リアクションするフードのプレイヤーを無視して言った。
「………さっきのは、オーバーキルすぎるよ」
そのまま沈黙。すると、フードの女性はこう返した。
「オーバーキルで、何か、問題があるの?」
「システム的なデメリットはないけど、効率が悪いよ。連発しすぎると、消耗が早くなる。帰り道だってあるんだし……」
「…………帰り道?」
「ああ。このあたりからダンジョンに出るだけでも一時間近くかかるし、そこから最寄りの街までは急いでも30分だろ?疲れ切ってるとミスも増える」
「それなら、問題ないわ。わたし、帰らないから」
「は?……か、帰らないって、街に?」
「……朝帰り?」
「ユウ、どこで覚えたんだそんな言葉」
「ネトゲの人。他にも挟んで擦るとか……」
「もう黙ってろ。で、その、帰らないっていうのは?」
心に今日は説教すると固く誓ってフードのプレイヤーに聞き返した。
「言葉のまんま」
「や、だからポーションの補給とか……睡眠とか……」
「受けなければポーションはいらないし、剣は同じの5本買ってある。休憩は近くの安全エリアで取ってるわ」
「………何時間、続けてるんだ?」
「もう、5日か4日……」
「ナイスガッツ」
言いながらユウが親指を立てる。
「や、そういう問題じゃなくてだな……」
「じゃあ、私もう行くから。あなた、ちゃんとその子教育なさいよ」
「は、はぁ……」
それが、フードのプレイヤーとの出会いだった。